「聞く子ども」を育てる3つの視点

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追手門学院小学校講師

多賀一郎

全国の学校を回って、コロナ禍で悩む若手教員から相談を受けている多賀一郎先生。とりわけ一番多い悩みは、子どもの「聞く力」をどう育てたらよいかだといいます。これを読んでいる先生方も、同じように感じているのではないでしょうか? この記事では、「聞く子ども」を育てる3つの視点をお伝えします。

執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎

「聞く子ども」を育てるために教師が心がけるべきコトのイメージ画像
写真AC

1. まずは、第一声が大切

最初に発する言葉が大切です。ここを工夫しないと、よほどの信頼関係が築けていない限り、聞いてくれませんよ。授業につながるような第一声ならいいですが、若い先生にはそれも大変でしょう。

だったら、何か子どもの気を引くようなことを言えばいいのです。

教科なんて関係なく、子どもたちが興味を引くような話題をたくさん用意しておきましょう。何もなければ新聞でもネットでも、探して真似すればいいのです。例えば、僕なら、こんな感じで話をしています。

低学年の場合

「今日、先生のうちにね、ツバメが入ってきそうになってね。 ツバメが家の中に入って巣を作ってしまったら、大変なことになるでしょ。だから、かわいそうだけど追い出してね。玄関を開けっぱなしにしないようにしているんだ」

中学年の場合

「長崎県では、大雨になっていたそうですね。ニュース、見ましたか? 線状降水帯っていうんだけど、知ってるかな? 低気圧が何重にも重なったら、激しい雨が一か所に集中して降るんだって。怖いよね」

高学年の場合

「今日は説明文の『構成』についての授業です。 『コウセイ』と読める漢字をどれくらい知ってるかな? 『後世』『更生』『公正』『校正』『恒星』このうち、どれくらい知ってるかな?」

2. テンポと緊張感を保つ

若い先生方は大概テンポが悪いのです。丁寧で優しい指導をするからです。子どものことを思う大切な資質ですが、一斉授業で頻繁に間をとっていると子どもたちは集中できなくなっていきます。

テンポよく進めて、ついてこられない子どもたちには個別にアプローチするという考え方がよいでしょう。

子どもたちのほとんどが真剣に課題に取り組んでいる時は、十分に間をとって考える時間を確保します。でも、なんでもかんでも間をとっていると、子どもたちはだらけてくるということです。

「授業のテンポ」とは?

では、テンポってなんでしょうか?

授業のテンポって説明が難しいですが、僕は「同じ調子でぽんぽんと進めていくこと」が基本だと思っています。全員をきちんと聞かせられればよいのですが、そのために、一人一人の子どもが、理解するまでとか、書き終わるまでとか、待ってしまいます。

ところが、その間に早くできた子どもたちがだらけてしまいます。残念ながら、一斉授業をしながら全員に同じようにしていくことは、特に経験の浅い若手教師には、難しいと思います。だから、テンポを優先しましょう。個々への対応は、後からでいいのです。まずは、テンポを優先です。

テンポの良い授業とは、余計な間を入れない授業のことです。

ある時、僕が見た若手教師の教室で、こんなことがありました。授業中、その先生は子供たちに「宿題を忘れてきた人は、立ちなさい」と、問いかけました。5人の子どもたちが立ちました。

それから、少しの間、お説教の時間になりました。 僕は、授業が終わった後で、その先生に問いかけました。

「いつから、子どもたちが授業を聞かなくなったのか、わかりますか?」

その先生は、しばらく考えた後、「うーん。宿題の話をした時からですかね」というので、「そうです。37人の子どもたちがいて、立ったのは5人だけでした。残りの32人の子どもたちは宿題をしてきているのだから、そこからの説教は、聞かなくてもいいんですよね。だから、みんな別のことをし始めました。その後でいくらがんばっても、もう多くの子どもたちは聞く体勢にはなれなかったんですよ」

聞くためには、全員が聞ける話をしていかねばなりません。

手を挙げていない子にも指名する

「手を挙げなければ指名はされない」
「順番に行くとAさんの番だから僕は当たらない」

などと思うと、集中は途切れます。従って、順番に当てていきながら突然、油断していた子どもに当てるとか手を挙げてなくても指名するというようなことをします。

すると、 「この先生は、いつ自分を指名してくるかわからないぞ」 という緊張感が生まれます。

3. 全員に聞かせようとするのは諦める

しかし、こんな悩みも聞きます。

「作業の説明を聞いていない子がいて、その子は何をすればよいかわからない、わからないので遊んでいる。結局、僕がやることをその子にもう一度説明するか、近くの優しい子が教えてあげています。教えてあげる子には、教えてあげた優しさを認めつつ、それが実は友達の聞く勉強の機会をなくしてしまっているのだという話をしたりします。ですが、やはり聞かない子は、自分が聞けていないことになかなか危機感を感じてくれないのです…」

聞かないことは学ぶチャンスを失うこと

僕は、聞かないことは学ぶチャンスを失うことだと、繰り返しいろいろなたとえを用いて話しています。でも、それすら聞いていない子どもはどうするのか…と考えだしたらキリがありません。

我々は全知全能の神様ではありません。全員に聞かせるということは無理なのです。 精いっぱい努力も重ね、手立ても打って、それでも聞かない子どもに対しては、「まあ、こういう子どももいるよね」で、いいのではないでしょうか。

他のことでの付き合いを大切にして、その子を全否定しないことと、自分の努力がこれでいいのかという問いかけは常に必要ですが、それ以上は無理なことだと思います。

これは、その子を見捨てているのではありません。ある程度の年齢になった時には、自助努力というものが必要だということなのです。本人にも責任はあります。

教師が全ての責任を背負い込んでしまうことはないと思います。 僕もあらゆる手立てを講じて「聞く子ども」を育ててきました。それについては、かなり成果があったと自負しています。 でも、「全員が聞く子供になったのか?」と問われたら、NOと言わざるをえません。


いかがでしたか?
聞く指導のプロフェッショナル・多賀先生もこうおっしゃっています。気持ちを楽にして、自分に今できることから、一つ一つ取り組んでいきたいですね。

多賀一郎

多賀一郎(たが・いちろう)●追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に40年勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。

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