小学校の教科担任制【教育用語】

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みんなの教育用語【毎週月曜10時更新】
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教育分野で度々耳にするようになった新しい用語を、深く掘り下げて解説します。今回は「小学校の教科担任制」を取りあげます。

執筆/茨城大学教授・加藤崇英
監修/筑波大学教授・浜田博文

みんなの教育用語

小学校は、担任を受け持つ学級のすべての教科の授業を行う「学級担任制」を基本としています。これに対して、中学校や高等学校で一般的に採られている「教科担任制」は、主に教師自身の専門とする教科の授業だけを担当します。しかし近年、特に小学校高学年で「教科担任制」の実践例が増えています。 

教科担任制のメリットとは

2019年12月、中教審初等中等教育分科会の「新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ」で「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について」が取り上げられ、小学校における教科担任制のメリットが指摘されました。

例えば、教科指導の専門性が高まることで教材研究が深まったり、授業準備が効率化されたりすることで授業の質の向上と教師の負担軽減が図られるというメリットです。加えて、複数の教師による多面的な児童理解が促進されることで「児童の心の安定」が図られることが期待されることが挙げられました。

また、「小学校高学年の児童の発達の段階」への対応や配慮、外国語教育などの教育内容の専門性の向上などが期待されています。

小学校での教科担任制の現状

従来から、小学校で学級担任以外の教員が授業を担当する教科もありました。音楽、図画工作、家庭、体育等の技能教科で、これらの授業を学級担任に代わって行うことは「専科担任制」と呼ばれています。しかし今日では、主要教科である理科や算数などを学級担任以外の教員が担当する場合も少なくありません。

文部科学省の2018年度の調査によれば、理科については第3学年ですでに21.6%が、そして第5学年、第6学年ではそれぞれ45.1%、47.8%が、「学級担任以外で、教科等(複数教科を担当することも含む)を主指導する教師」による授業の実施となっています。

なお、この調査では、「複数の教師が協力して行う指導(TT)で実施する場合」、「教員の得意分野を生かして実施するもの」、「中学校・高等学校の教員が兼務して実施するもの」など、多様な形態があることが補足されています。中・高の教員が実施している例としては、「中学校の外国語の教員が、第6学年の外国語の時間のみ当該小学校において外国語活動の授業を行う場合」が挙げられています。

小学校でも専門性重視へ

法令によって、中学校や高等学校の免許状を持っていれば、それぞれの免許状教科に相当する教科等(外国語活動、総合的な学習の時間、道徳、クラブ活動など)で、小学校の教諭や講師となることができるとされています(教育職員免許法第16条の5第1項)。

一方、教員を採用する側の教育委員会では、小学校の教員採用試験において、特に高学年の「教科担任制」を念頭に、教科に関する専門性を重視した採用枠を設けている例も増えています。例えば、東京都の小学校教員採用では、「理科コース」「英語コース」を設けています。

「学級担任制」「教科担任制」どう組み合わせるか

小学校では、児童の基本的生活習慣や集団生活における基礎的な社会性を養ううえで、低学年から中学年にかけては「学級担任制」を基本とすることは変わらないと思われます。他方で、高学年を中心にこれからの時代を見すえた学習内容の高度化と、子どもたちの心身の発達段階の進展に合わせて、いかに「学級担任制」と「教科担任制」を組み合わせていくかが課題であるといえます。

反面、「教科担任制」を取り入れていくことで児童の見取りについて不安を感じる教師も出てくるでしょう。よって教師の立場からは、児童の日常のようすについて共通理解を進め、カリキュラム・マネジメントにおける教科横断的な課題について共通認識を図るなど、教師どうしの協働やコミュニケーションを促進していく必要があります。

実践例として、小学校5年と6年で「教科担任制」と「少人数指導」を組み合わせた「兵庫型教科担任制」などが紹介され、小学校の教科担任制の機運は高まっています。

いずれにしても、政策・制度の動向を捉えつつ、「小学校の教科担任制」をいかに運用するか、学校現場ではいっそう重要な課題になると思われます。

▼参考文献
中央教育審議会初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ」2019年 12 月
東京都「令和2年度東京都公立学校教員採用候補者選考(3年度採用)実施要綱
文部科学省「平成30年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査
「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第2回)」教育課程部会(第111回)・教員養成部会(第107回)合同会議資料

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