【分散登校】現場教師から見たメリット・デメリット
新型コロナ対策で休校措置が取られていた学校では、現在、完全再開に向けた感染防止対策として学級や学年の子供をグループに分散して登校させる「分散登校」を行っているところも多いことでしょう。教員SNSなどでも話題になっている分散登校のメリット・デメリット、そして、少人数学級への期待について、松原夢人先生からの提言です。
執筆/東京都公立小学校教諭・松原夢人

目次
感染防止対策の実施で分かったこと
私が勤務する学校では、完全再開を目指して学級をAグループとBグループに2分割し、それぞれのグループが1日おきに登校する対応をとっています。1週間続けてきた結果、分散登校のメリットとデメリットが分かってきました。
分散登校のメリット
①きめ細かな指導ができる
学級の児童数を半分にしたことで、児童一人ひとりに目が行き届き、授業中に個別指導の時間を多く確保することができるようになりました。学習のつまずきがある児童に対して、既習事項を確認しながら計算の仕方や図形のかき方を助言したり、学習の進度が速い児童には発展的な問題を提示したりと、余裕をもって柔軟に対応することができています。
また、これまでは「先生、来てください。」と呼ばれてから児童のところに行くまでの間、どうしても待たせてしまう傾向がありましたが、大幅に改善されました。
②児童が発言する機会が増える
45分間の授業の中で、より多くの児童が発言するには限界がありました。しかし、児童数が減ったことにより、発言する機会が増えて、積極的に学習に参加しようとする意識が高まりました。
子供たちに聞いたところ、「人数が少ないと、自分が何か言わないといけないような感じがする」と適度な緊張感と集中力が高まっているようです。授業の展開によっては、児童全員が自分の考えを説明したり、友達の話を聞いて質問したりすることが実現できています。
③採点がすぐにできる
ワークテストの枚数や、ノートやプリントを集めた量が半分になったことで、短時間で採点することができ、当日に返却することができるようになりました。ワークテストに関しては、児童がどんな問題を解いたのか覚えているうちに返却して修正させることが望まれますので、極めて有効です。採点が早く終われば、その分だけ児童に直接関わる時間に充てることができます。
④いじめ防止対策になる
児童数が半分なので、目が行き届きやすく、声が鮮明に聞こえてきます。休み時間は外遊びができないため、丸付けをしながら児童たちと教室で過ごしていたところ、友達にあだ名を付けてからかっていた場面に遭遇しました。誰が教室のどこから発した言葉なのか的確に把握することができ、すぐにその場で指導することができました。
普段の児童数が多い中では、姿や声がかき消されてしまっていたかもしれません。児童の言動が察知しやすい環境になっていることから、いじめを未然に防止することができます。
⑤ソーシャル・ディスタンスの確保や密集・密接の回避ができる
これまで私が学級担任を経験する中で、インフルエンザが流行した際に学級・学年閉鎖になってしまうことがありました。マスクの着用や教室の換気の徹底をしていましたが、それでも感染拡大を食い止めることができませんでした。
けれども、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、感染症の予防対策が分かってきた今、学級・学年閉鎖になってしまった理由が明確に分かりました。それは1〜2mのソーシャル・ディスタンスが確保できず、教室が「密」の状態になっていたからです。
分散登校により、教室内にいる児童数が半分になったことで、机と机の間隔を1〜2m空けることができるようになりました。また、教室の中も密の状態ではなくなり、児童一人ひとりのスペースが十分にとれるようになりました。