分散登校時の家庭学習にも!「漢字探し」で心の距離を縮めるアイデア

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兵庫県公立小学校校長

俵原正仁

緊急事態宣言が解除され、まずは分散登校という形で学校が再開した地域も多いのではないでしょうか。学校が再開しても、文科省が「学校の新しい生活様式」で通知したように従来の学校生活は行えない中、子供との関係づくりには、より一層の工夫が求められています。兵庫県公立小学校校長の俵原正仁先生が、そんな今だからこそ実践したいアイデアを紹介してくれました。

執筆/兵庫県公立小学校校長・俵原正仁

撮影/金川秀人

「with コロナ」時代は先行実践を活用

これからは、授業をするにしても、1mを目安に間隔をあけて座った席での学習が中心になってきます。当然、工夫のない一斉授業では、子供たちの集中力は続きません。教材研究をしっかり行い、「with コロナ」時代に通用する新しい実践を創造しなければいけません。

とは言っても、私が勤務している芦屋市のように学校再開に向けて動いている地域でも、既に再開されている地域でも、新しい生活様式を学校生活の中にどう落とし込んでいくか等、考える事や、やるべき事が山積みで、新しい実践を創造するための時間の余裕はほとんどないと思います。

では、どうすればいいか?
先人から学べばいいのです。

今のこの時期に使える先行実践をどんどん追実践させていただきましょう。今回は、向山洋一先生から学んだ漢字探し2種を、今、この時期だからこそ意識しなければいけない実践のポイントを付け加えて紹介させていただきます。

1.「口」に2画つけ足した漢字探し

「口」という漢字に2画つけ足して漢字をつくります。

これだけでは、わからない子がいるかもしれません。もう少し話を続けます。

例えば、口の中に、縦に1画、横に1画書くと、田んぼの「田」という漢字になりますよね。このようにして漢字を探してください。

教師が板書をしながら説明していきます。

他にもたくさんあるけれど、見つけることができた人はいませんか?

このような問題が得意な子の手がさっと上がるはずです。

「目」です。

そうですね。口の中に二つ横線を入れると「目」になりますね。すばらしい。堀くんに拍手!

名前を呼んでほめる事で、心理的な距離を縮めていきます。この後、2~3名指名して答えてもらいます。実際に例示することで、子供たちはやり方を理解します。

では、今から一人ひとり考えて、ノートに書いていきます。10個見つけることができれば優秀です。堀くんや清井さんや春名さんの答えた漢字を書いてもかまいません。これですでに3個クリアです。

今のご時世、物理的な距離を縮めることはなかなかできませんが、心理的な距離なら縮めることができます。フリーな状態で隣の友達と相談することはできなくても、教師の話の端々にクラスの友達の名前を出すことで、一人で勉強しているのではないという意識を持たせていくのです。

ちなみに、次のような漢字を子供たちは見つけます。

「口」に2画付け足した漢字の例
「口」に2画つけ足した漢字の例
クリックすると別ウィンドウが開きます

名前を呼んでほめる。

話の端々に、クラスの友達の名前を出す。

2. 図から漢字探し

図から漢字探し

この中にいろいろな漢字が隠れています。わかりますか?

 勢いよく子供たちの手が上がります。

はい、たんぼの「田」です!

根岸くん、正解! よくわかったね。

簡単、簡単。まだあるよ。
⋯では、どうぞ!

芦屋川の「川」です。

そうですね。
他の人にも答えてもらいましょう。彩木さん。

一・二・三・四・五の「五」です。

子供たちが発表した漢字を板書した後、軽く挑発をかけます。

まだありそうですね。
では、今から一人ひとり考えて、ノートに書いていきます。もちろん、根岸くん、彩木さんの答えた漢字を書いてもかまいません。
ちなみに、前に担任していた1年生は三学期だったけど、30個見つけた子が何人かいました。でも、初めての場合、ちょっと難しいかもね。時間は5分です。

子供たちは、真剣な表情でノートに向かいます。この実践も原実践は向山洋一先生です。ただし、「五」のような漢字も正解になるように、図の一部を変えています。そこのところは、俵原のオリジナルです。

この漢字探しは、隠れている漢字の数がメチャクチャ多いのが特徴です。だから、1年生でも多い子なら30個ほど見つけることができるのです。

1回目は、まだ時間が欲しいという声が上がっても、5分でいったんストップして、子供たちに発表させていきます。6年生でも1回目から30個書ける子はほとんどいないと思います。

30個いきませんでしたね。でも、実は1年生も1回目から30個書けた子は一人もいませんから、自信を無くさなくていいですよ。1回目でこれだけ書ければ立派です!

ねぎらいの言葉をかけながら、次の日も行うことを予告しておきます。

今度の国語の時間にも行います。お家で考えてきても、もちろんオッケーです。

多くの子供がはりきって、家でも漢字探しを行ってくるはずです。そして、予告通り次の国語の時間に、この漢字探しを行います。 

昨日よりも漢字をたくさん見つけることができた人?

子供たちの記録は間違いなく伸びているはずです。30個超えている子も何人か出てきます。当然30個以上書けたことはほめるべきことなのですが、「30個以上見つけた人?」というように個数を尋ねてそれだけで終わってはいけません。

必ず「昨日よりも漢字をたくさん見つけることができた人?」というように伸びも尋ねてください。30個はいかなくても、全て(ほとんど)の子の記録は伸びているはずです。

つまり、伸びを尋ねることで、全ての子をほめることができるのです。全ての子と心理的な距離を縮めることができるということにつながります。

すばらしい!
さすが6年3組です。
学級開きでも話をしましたが、先生は「伸びたか・伸びていないか」を一番大切にしています。漢字だけでなくいろいろな場面でも、これからの君たちの「伸び」に期待できますね。第3回目もまた行います。

また、このような「伸びを大切にしている」という日々の具体的な実践を積み重ねていくことで、学級開きで子どもたちに伝えた教師の思いが単なる打ち上げ花火に終わらず、少しずつ子供たちの中に浸透していきます。

漢字テストが90点だった子が60点の子に対して、「5年生の時はほとんど30点ぐらいだったのに、今年になって漢字をめっちゃがんばっていてえらい。逆に、自分は最近、少し悪くなっている。がんばらないといけない」と本気で思うようになってきます。

グループ活動などが制限されて個人の学習活動が多くなり、友達との物理的な距離が離れた学習が多くなればなるほど、友達のがんばりは、今まで以上に目に見えにくくなり、「できた・できていない」の結果に目が行きやすくなります。その結果、心理的な距離も離れていきます。

だからこそ、そうならないように、教師は友達のがんばりを伝えることができるような手立てを今まで以上に意識して行っていく必要があるのです。

見つけた個数より、「伸び」に焦点を当ててほめる。

クラスでは、友達の「がんばり」が伝わる工夫を。

次の登校日までの家庭学習にも

隔日での分散登校がしばらく続く地域では、家庭学習の一つとして提示するのにもよい教材です。その場合の1回目の締めの言葉は次のようになります。

続きは、お家で挑戦してください。みんななら30個以上絶対クリアできるはずです。がんばってください。次の登校日に発表してもらいます。期待していますよ!

このように少し挑発しておきながら、次の登校日には「その子がどれだけ伸びたか」というところに着目して励ますようにしましょう。

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俵原正仁先生
俵原正仁先生

俵原正仁(たわらはら・まさひと)●兵庫県公立小学校校長。座右の銘は、「ゴールはハッピーエンドに決まっている」。著書に『プロ教師のクラスがうまくいく「叱らない」指導術 』(学陽書房)、『なぜかクラスがうまくいく教師のちょっとした習慣』(学陽書房)、『スペシャリスト直伝! 全員をひきつける「話し方」の極意 』(明治図書出版)他多数。

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