休校明けの授業、学力差の開いた子供たちに教師ができることは?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校で、子供たちの学びの保障が課題になっています。既存のルールに捉われず、子供たちのやる気を伸ばす授業を展開する「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生が「休校中に学力差が開いている中、休校明けの授業でどこに気をつけたらよいでしょうか?」という若手教師からの質問に答えます。
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休校明け、学習面ではさらに個人差が顕著に
学校の状況にもよるけど、休校中は、プリントなど在宅でできる課題を出していた学校が多いんじゃないかな。
でも、自分一人では課題が進められない子もいると思うし、一方でオンライン授業をする塾に通っていたり、オンラインで家庭教師をつけて学習を進めている子もいると思う。
だから、学習面でいうと、休校期間中に、かなり大きな差が出てきてしまっていることは間違いない。
自治体によっては、5月以降、学校を再開したり、プリント等の課題に加え、同時双方向型のオンライン指導を始めている学校もある。
いずれにしても、授業を再開した際には、学習面では大きな差が出ていることを前提に、自宅で自習ができずに遅れてしまっている子を救いながら、すでに塾などで学習を進めていた子供が飽きないような授業を考える必要があると思うよ。
個人差が出ない授業の展開案
学校が再開した時に、ボクが考えている一つの工夫として、「論理的思考って何?」「優しさって何?」など、答えが一つではない、深く考えさせるような内容を題材にした課題を授業に取り入れること。こうした学習なら、学力の差に関係なく進められるし、子供たちの学びに向かう姿勢も前向きにしていけると思うからね。
「分からない」と言いやすい環境をつくる
とはいえ、学習面で差がある状態で、限られた時間の中、未履修の学習をどう進めるのか不安に感じている先生も多いよね。
ボクは、一番大切なのは、分からない時に「分からない」と言いやすい環境をつくることだと思うんだ。
学習の内容を理解できている子は、手を挙げるから分かりやすいし、たとえ発言をしなくても大きな問題にはならない。
でも、理解できていない子供を先生が探るのはすごく大変だよね。
一番手っ取り早いのは、授業中にその場で「分からない」と言ってくれること。
テストをして初めて「あの子は全然理解できていなかったのか」と気付いても、もう一度基礎に戻るような時間はない。それを考えると、やはりその場で子供たちが「分からない!」と言いやすい環境をどうつくるのかが大事になってくると思う。
そして、実はボクが心配しているのは、来年のこと。
今年は学習指導要領の範囲にどこまで追いつけるかという話になるだろうし、なんとかなるかもしれない。でも、来年になってから、テストをしてみると散々な結果で、昨年度の学習内容がまったく定着していなかったということに気付く先生がいっぱいいるんじゃないか
正直、全員が今年度履修すべき学習を100%身に付けて次の学年に上がるということは難しいことかもしれない。でも、もし授業中に「分からない」と堂々と手を挙げられるという環境ができれば、知識があやふやなまま先に進んでしまう状況を少しでも救えるかもしれないよね。
未履修の学習を駆け足で進めなければならない状況があっても、子供たちが何につまずいているのか、何が分かっていないのかということを、できるだけ早めに見つけ、その場で解決すること。それがとっても重要になると思う。
だからこそ、休校明けに、「授業中にちょっとでも理解できない点があったときには、『分からない』と言ってね。『分からない』と言うことは、決して恥ずかしいことではないよ」と子供たちにちゃんと伝えたいと思っているよ。
行事の延期は、ポジティブに捉えよう
宿泊行事や運動会なども、どうなるのか不安に思うことも多いよね。
でも、初任の先生や今年異動になった先生にとっては、よい面もあるんじゃないかな。
4月に新しい環境に移って担任をもち、すぐに5月に運動会や宿泊行事というのは実はかなりハードなはず。
もし、秋以降に延期ということであれば、それだけ準備期間が増えたということ。
休校中に先輩教師や同僚に、オンラインやメールなどを使って、昨年の様子を聞いてみたり、準備しておくとよいことを質問するのもいいと思うよ。
まったく経験したことがない状況下だけれど、前向きに、子供たちの学習や学校活動を深めるためにできることを考えていこう!
取材・文/出浦文絵