• 勉強マーク小学館ロゴ
  • facebookアイコン
  • twitterアイコン

教師としての無力感に心を壊されないようにケアを【新型コロナ対策】

2020/4/24

不自由を強いられる生活の中、子どもたちのためにがんばっている先生の心が、壊れてしまわないように。追手門学院小学校講師・多賀一郎先生が、ご自身の阪神淡路大震災の体験から、先生自身のメンタルケアの必要性を解説してくださいました。

執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎

ストレスにつぶされない教師のメンタルケア方法【新型コロナ対策】
写真AC

知らないうちに心がむしばまれていく

僕は今の状況が、阪神淡路大震災の時とよく似ていると感じています。

突然、子どもたちとの時間がなくなって、不自由な生活が続いています。一教師としての無力感に襲われます。

子どもたちのためにいろいろとしてあげたいのにできないというジレンマを、まじめな教師たちは感じていることでしょう。テレビでは一日中、感染者と死者の数字があげられて、外に出ることへの恐怖感と自粛に対するプレッシャーが充満しています。

でも、今は乗り切るしかないのです。

阪神淡路大震災の時も同じでした。

教師としての無力感を感じる中、余震で震え、毎日死亡者のカウントを見ては心を痛めながら、水もガスもない不便な生活の中でしのがなければならなかったのです。

学校が再開したら、子どもたちのために全力を尽くそうとがんばりました。しかし、最初のうちは再開の喜びに満ちていたクラスも、しだいに子どもたちのストレスが表に出てきました。数か月間、生活のリズムが崩れてしまっていたた子どもたちは荒れ始め、学級の崩壊も各地でたくさん起こりました。

今回も、学校が再開すれば阪神淡路大震災の時と同じような状況になり、やがて先生たちがしんどくなってしまうだろうと予測しています。

自分や家族の感染の恐れもあり、不安な中で先生たちはがんばり続けていることでしょう。それだけがんばっているのに、保護者からはクレームもたくさん来ることでしょう。学校に子どもを行かせることで助かる方もいれば、学校へ行かせることが不安な方もいるのですから。

また、朝令暮改のような形で、ころころと方針が変わります。仕方ないのです、それは。誰の責任でもありません。

でも、何かの準備をしていたことについて、突然中止や延期をされることは、やはり苦痛です。小さなストレスを感じ続けながら、徐々に心はしんどくなっていきます。

些細なことに腹が立つ、笑えないようになる

そうやってがんばり続けて、どうなるのかというと・・・。

まず、僕自身の体験から言うと、突然、自分の心がおかしくなってくるのです。イライラすることが増えて、些細なことに腹が立ったり、笑って済ませるようなことが笑えなくなったりしてくるのです。

そのときは自分では気づけません。

後から振り返ってみたら、「あれはPTSD(心的外傷後ストレス障害)だったのかもしれない」と、思います。

心は常にすーすーと風が通っているような感覚でした。常に不安があって、落ち着いてゆったりすることができなくなっていました。

人によって出方は違うでしょうが、震災から数か月経った時に、多くの看護師さんたちがPTSDになったと言われます。心だけではなく、体に症状が表れることもあります。突然、仕事に行けなくなってしまうこともあるのです。

だから今、意識的にセルフ・ケアを

まず今、自分の心がそういう状態にあるということを自覚してください。

ですから、日々、自分の心を癒したり、違う方向へ心を転じたり、意識的にしていかなければなりません。小さなダメージが積み重なると、ふっと緊張が解けたときに、どっと「しんどさ」がやってきます。仕事から離れたところで、何か、気分をリフレッシュできる楽しみをもちましょう。

僕の経験からは、次のようなことがおすすめです。

  • 散歩しましょう。汗が出るほど長めの散歩です。スマホも持たずに、ただ歩くのです。途中で立ち止まってストレッチするのもいいですね。
  • 本に熱中できる方は、読書しましょう。教育書ではなくて、浸れるような小説がよいでしょう。その間は教育から頭を離しましょう。
  • 料理をしましょう。上手じゃなくてもいいのです。料理は集中しないとできません。体も動かすし、作品としての料理を賞味することもできます。
  • 日記を書きましょう。手書きの日記の方がよいと思いますが、ワープロ打ちの方が得意なら、その方がストレスがなくてよいかもしれません。書くことは、その行為そのものが癒す効果もあるものです。自分の中にある不安を形にしてみることで、落ち着いて考える時間もできます。漠然とした不安ではなく、はっきりとした思考になるとストレスになりにくいと思います。

【関連記事】今自分でできるメンタルケアについてもっと知りたい方は、こちらの記事もお読みください→元教師のカウンセラーが伝授!非常時対応で疲れた先生に伝えたい心のケア方法


子どもたちのためにがんばっている先生、どうかご自身の心のケアも意識して、この大変な時期を乗り越えていきましょう。

多賀一郎
多賀一郎先生

●多賀一郎(たが・いちろう)。追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。

★小学館『みんなの教育技術』Webサイトでは小学校の先生に役立つ情報を毎日発信中★ぜひお気に入り登録して最新記事をチェックしてください!
↓↓↓
『みんなの教育技術』トップへ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

関連する記事

『働き方の知恵』の記事一覧

「学び合い、高め合う」新学習指導要領時代の校内研修

新学習指導要領の理念を実現し、学校力をさらに高めていくためには、一人ひとりの教員の力量を高めていくことが必要不可欠です。互いに学び合い、高め合っていける教師集団…

オンライン授業を少人数のプロジェクト制で機動的に進めている学校事例

多くの自治体、小学校が、オンライン授業に踏み切るのは難しいと答える状況が続く中、今年度初めてオンライン授業導入に踏み切り、PDCAを回しながら改善を続けていると…

「子供のために」が子供のためにならない?教師の価値観を疑え!

学校の先生をしていると「子どものために」という考え方に頻繁に出会います。子どものために残業をして教材研究、子どものために週末も勉強会に参加、子どものために、子ど…

【新型コロナ緊急アンケート結果】今教師が抱えている不安と困惑の本音

「新型コロナウイルス感染拡大についての緊急アンケート」(4月21日から5月6日まで)へのご協力、誠にありがとうございました。
休校中の学びの保障はどうしている…

教師としての無力感に心を壊されないようにケアを【新型コロナ対策】

不自由を強いられる生活の中、子どもたちのためにがんばっている先生の心が、壊れてしまわないように。追手門学院小学校講師・多賀一郎先生が、ご自身の阪神淡路大震災の体…

元教師のカウンセラーが伝授!非常時対応で疲れた先生の心のケア方法

新型コロナ感染防止のためには、これまで学校で当たり前にやっていたことができません。一つひとつの判断に責任がのしかかる先生たちの心理的負担の重さは、相当なものがあ…

【教師の休職対策】誰がサポートに入っても困らないシステム作りを

過労が原因で心を病み、休職をすることとなった公立小学校教師の体験談。いつだれに起こるかわからない「もしも」に備えて、すべての先生がやっておきたい工夫を紹介します…

休校中の教師の働き方!今やっておくべきことは?【♯三行教育技術】

休校中の先生は、この時期をどのように過ごしていますか? このような時期だからこそ、新しい働き方について考える機会にしたいですね。この時期だからこそしておきたいこ…

心の病で休職を経験した教員が伝えたい「定時で帰るためにできる工夫」

過労により「心の病」を患ってしまった公立小学校教師のリアルな体験談。休職を余儀なくされた松原教諭は、「定時に帰る」ことの重要性を強く訴えます。何をどうしたら定時…

仕事が大好きな教師がうつ病で休職し回復するまでの体験から学んだこと

「心の病」が原因で休職を経験した公立小学校教員から、あなたに届けたいメッセージがあります。充実した教員生活を送っていた松原教諭が、なぜ「心の病」を患い休職するこ…

もっと見る