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元教師のカウンセラーが伝授!非常時対応で疲れた先生の心のケア方法

2020/4/20

新型コロナ感染防止のためには、これまで学校で当たり前にやっていたことができません。一つひとつの判断に責任がのしかかる先生たちの心理的負担の重さは、相当なものがあるでしょう。ここでは、教師の経験を持つ心理カウンセラー前田泰章さんに、非常事態におけるストレスとの向き合い方についてお話をうかがいました。

非常時対応で疲れた先生に伝えたい心のケア方法
写真AC

ストレス発散法を習慣化する

人は「想定外」のことが起きると、誰でもストレスを感じます。

今回の新型コロナウイルス感染症に関連したこの非常事態は、まさに想定外のことです。「ストレスはたまるもの」という前提で、そのストレスとどう付き合っていったらいいかを考えましょう。

ストレスに押しつぶされないように精神のバランスを保つためには、仕事以外の何かに意識を向ける必要があります。

そして、自分にとってのストレスが発散される何らかの行動を、習慣にします。「毎日できること」、「週1回できればOKなこと」などを決めるとよいでしょう。

たとえば、

  • 毎日:寝る前のストレッチ
  • 週1回:ジョギング

とか、

  • 毎日:デスクの整理
  • 週1回:家族で鍋パーティー

というように。

頻度は生活スタイルに合わせて決めれば大丈夫です。毎日が難しければ2日に1回でもいいし、週1回が多いようなら隔週でもいいのです。

そしていざ決めたら、スケジュールに記録しておくか、身近な人に公言してしまいましょう。ちょっとした強制力になり、持続できる可能性がアップします。

こういった自分なりの「バランスをとる方法」を決めておくと、気持ちが安定します。

問題をはっきりさせる

私のカウンセリングを受けるクライエント(相談者)に、「今解決したい自分の問題」を書き出してもらうことがあるのですが、案外、すぐに書けない人が多くいます。心の不調を自覚していても、改めて「自分の問題とは何か?」と問われると、すぐに出てこないものなのです。

そこでまずは、心配に思っていることや悩みなどを全て、書き出してみます。

そして、それらは「自分でコントロールできる問題なのか、できない問題なのか」を問います。

例えば、外出自粛要請。これは自分ではどうしようもできない問題です。国会議員にでもならない限りどうしようもできません。けれど、外出を自粛するかどうかという行動を決めるのは、自分の問題です。

人は、自分ではコントロールできない問題をコントロールしようとすると、苦しくなります。自分の問題と他者の問題(自分の力ではどうしようもできない問題なども含む)を線引きしておくことは、心を安定させるコツです。

いい意味で「開き直る」

高齢者と同居しているなど、ナーバスになっている保護者から「殺す気ですか!」というような極端なクレームを受けることも考えられます。理不尽なクレームを受けたら、誰だってショックを受けます。

今回のことに限らず、非常識な要求を言ってくるような人は、必ずいるものです。ここは、「そんな人もいる」「そんなこともある」という心持ちで接してみてはどうでしょうか。

考えてみてください。保護者からクレームを受けたからといって、教師を辞めさせられるわけではない、給料が極端に減るわけでもない。

こんなふうに、ある意味で「開き直る」ことも、時には必要かもしれません。

そして、あなたが教師になった原点に立ち戻ってほしいと思います。「子どもたちにこんなことを伝えたい!」「こんなことを教えたい!」という気持ちがあったはずです。

そんなあなたが潰れてしまうのは、社会的な損失ではないでしょうか?

もちろん、保護者の意見には真摯に耳を傾ける必要はあります。しかし、それがただのヒステリーなのか、それとも何か大切なことを訴えているのか、難しいかもしれませんが、聞き分ける必要はあります。

よいイメージを上書き

何度言ってもマスクを外してしまったり、不謹慎なイタズラをくり返すなど、言うことを聞かない子どもも多くいることでしょう。

思い通りにいかない毎日に、子どもたちへの接し方が攻撃的になってしまうのをわかっているのに止められない…なんて先生もいるかもしれません。自分自身をコントロールできなくなってしまっているのですね。

そんなときに有効な方法があります。

それは、「(その行動をとった時の)先を想像して、その際の感情を疑似体験してみる」こと。

例えば、「言うことをきかない子どもに攻撃的な態度をとってしまったら、最悪どうなるか」を、想像してみます。

体罰とみなされ謹慎を受ける。今の学校には居づらくなる。噂があっと言う間に広まる。どんなに今まで「いい先生」だと思われていても、全てを失うことになる…。

そんな最悪の状態には誰もが耐えられないでしょう。そこにはとてつもない苦しみや恐怖があります。

その、想像したつらい感情が、行動の抑止力になるのです。

最悪のパターンをいくつかイメージしたら、今度は、子どもに穏やかな態度で接している良いイメージを想像します。録画を上書きするような感じ。

人間の心理は、後に感じた気分の方を強く記憶する特徴があるので、この方法は、最悪のイメージ⇒良いイメージの順番で行うことがポイントです。

これはひとつの手法です。ここではご紹介しきれませんが、いろいろ試してみて(拙著『なんとなく生きづらい」がフッとなくなるノート』をぜひご参考ください)、どうしても気分が晴れないようであれば、自分のためにも、子どもたちのためにも、休養が必要です。専門家のカウンセリングを受けることも検討しましょう。

人は弱くなるときがあるのが普通

今回の非常事態への対応ではこれまでのやり方が通用せず、自信をなくし、そんな自分を認めたくない…といった先生もいるかもしれません。

しかし、人は、常に「強くなければならない」のでしょうか?

「物事は矛盾・対立しつつ進んでいく」弁証法という法則があります。全ての物事は矛盾や対立を含んでいます。それらがなければ、私たちは物を認識することも、生きることもできません。

健康体でも風邪を引く。恋人ができてもふられる。ジャイアンツは勝ったら負ける。就職できてもリストラされる。日経平均は上がったと思ったら下がる。

しかし、こうも言えます。

風邪を引いても回復する。ふられてもまた恋人ができる。ジャイアンツは負けてもまた勝つ。失業しても再就職できる。日経平均はどん底まで下がればいつかは上がる。

このように、良いことと悪いことは必ずセットになっています。どれが正しい状態だとか、本当の姿はこれだなどということは言えないのです。

「うまくいかないことは、次にくる良いことのしるし」。

否定されることによって、新しい側面が発見できます。対立があるからこそ、変化がある。矛盾があるからこそ、前に進める。

つまり、強くいられるときがあってもいいし、弱くなるときがあってもいいのです。

不安をなくす方法

なぜ不安になってしまうのか。それは、思考が「今」にないからです。

お茶を飲んで休憩しているのに、「この先(未来)どうなるのか?」と考えてしまう。テレビを見ていたら、ふいに昔言われたひどいこと(過去)を思い出してしまう。

人は今を生きているのに、思考は今にないことが多いものです。希望の見えない未来のことを考えれば不安になり、つらかった過去を思い出せば苦しくなる。

ならば、思考を「今」に戻せば、不安や苦しみは減ることになります。

ただ、「思考を今に戻す」というのは言葉では簡単に言えるけれど、なかなかできないことなのです。

思考を今に戻すためには、行動と連動させる必要があります。不安になるたびに「今できることは何だ?」と自問し、そして今できることを行動に移していきます。

今できることをやり続け、思考を今にとどめておけば、やがて不安も軽減されていきます。

今現在、以前と比べると苦しいかもしれないけれど、未来が今以上に苦しくなるとは誰もわからないのです。

また、こんな方法もあります。

陸上の高橋尚子さんや有森裕子さんなどを育てた名伯楽、小出義雄さんは、思い通りにならないとき、「せっかく」という言葉を使っていたそうです。

仏教の教えとのことですが、「せっかく風邪をひかせてくれた」「せっかくお腹が痛くなった」「せっかく食中毒になった」「せっかくこうしてくれた、感謝、感謝」といったように。

心の底ではそう思えないとしても、ちょっとした口ぐせを変えてみるだけで、気分が変わっていきます。

いずれにしても、この不安な状態が永遠に続くことはありません。

いつごろ不安がなくなるか、それはわからないけれど、この先ずっと続くということはありえません。過去に不安を抱いたことがあっても、その時の不安をずっと感じ続けている人はいないように、今の不安もいずれはなくなるのです。


「3密」を極力さけながらの学校再開は、手探りで進めていくしかありません。そしてそこでは、教師間の助け合いが、これまで以上に必要になるでしょう。

先生同士のコミュニケーションが苦手な教師も、協力し合って情報共有せざるを得ない今の状況です。

もしかしたら、自分を変えるきっかけになるかもしれませんね。

心理カウンセラー
前田泰章さん

前田 泰章(まえだ・やすあき)● 1976年生まれ。心理カウンセラー/問題解決セラピスト/「心のストレッチルーム」代表。ファミリーレストラン店長、キャリアコンサルタントを経て、埼玉県で中学校教員として勤務。その後、心理カウンセラーとして川越市にカウンセリングルームを開業。きめ細やかなカウンセリングで人々の心の悩みを解決に導いている。教員経験を活かした教師の心の悩み相談が評判。電話やオンライン(スカイプ・ズーム)による相談も可能。著書に『「なんとなく生きづらい」がフッとなくなるノート』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

取材・文/設楽由紀子

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