一年生にもきちんと伝わる!運動会の指示出しスキル
学級づくりが始まったばかりの 4 月から、春の運動会のある学校は準備開始です。入学したばかりの一年生は、トイレの使い方から給食の食べ方、登下校のルール、さらには校歌まで、ただでさえ、覚えなければならないことが盛りだくさん。その上、運動会のことも身につけていかなければなりません。担任は、子どもに教えることを整理して伝える工夫をする必要があります。そのスキルについて、神奈川県公立小学校の長沼久美子先生に教えていただきました。
目次
全体像を整理して伝える
徒競走の並び方の指示出し
レース順に正しく並ぶためには、「何コースの何番目」のように、 2 つの数字を同時に覚えなければなりません。
そこで、少し工夫をしましょう。 1 コースは、 リンゴ。 2 コースは、バナナなど、色がはっきりしている果物の名前をつけて「わたしは、バナナの 5 番目」と、覚えてもらうのです。果物の色のイメージを結びつけることで覚えやすくなります。あわせて、教室に並び方を掲示するだけで、相乗効果があります。
スタート練習は、間をとって
次に、スタートの練習です。フライングすると、スタートのやりなおしになってしまいます。 運動会当日にこれが続くと、タイムスケジュールが大きくずれてしまう場合もあり、とにかくフライングゼロ にすることを意識します。
そこで、練習の段階から対策を講じましょう。
「位置について、用意……………ドン!」。「ドン」 の合図まで、気持ち長めに時間を取りながら、スタートの練習をしてみてください。 子どもは、つい我慢しきれなくなり、フライングしてしまうのですが、 2 ・ 3 回練習すると、「ドン」の合図を待ってスタートできるようになります。
覚えなくてよいこともある
負担を減らすために、覚えなくてもよいことにも目を向けてみましょう。
例えば、全校種目。もし、六年生のお兄さんやお姉さんがリードしてくれるならば、「六年生についていけば、大丈夫」と伝えるだけで、十分なはず。一年生がどこにどう並ぶのか、移動の仕方なども頼ってしまいましょう。
鈴わりや玉入れなどの入退場は、先生が先頭を歩いてしまえば、子どもが覚える必要はありませんし、運動会の係にお願いしてしまう手もあります。負担軽減も大切な視点です。
ダンスの指示出しスキルアップ
①「たとえ」を使う
例えば、座って(しゃがんで)体を小さくする動きは、「たまご(みたい)になりましょう」 と、言い換えてみましょう。子どもはその動きをイメージして、自然と体を丸めて小さくします。「体を小さくして」と説明するよりも、覚えやすい利点もあり、効果的です。
②左右の確認は、目印を使って
例えば、右手(もしくは左手)だけ、手袋をつけて練習をやってみる。練習前に、みんなが右手に手袋をつけているか確認するだけで、オーケーです。これで、「手袋の手をあげて!」 「手袋のほうの足を一歩出すよ」と、目印を使っ て、向きを伝えることができるようになります。
目印は、リストバンドなど、なんでもオーケー。もし、左右で困っている子どもを見かけたら、ぜひ、取り組んでみてください。
③マイクパフォーマンスで的確に
ダンスの練習では、教師のマイクパフォーマンスを駆使した指示出しも効果を発揮します。例えば、「たまごになりましょー。 1 、 2 、 3 、4 、 5 、 6 、 7 、立つよ! はい、キラキラキラキラ、クルリンパ。 9 時、12 時、3 時、6 時 に歩いて、みーつけた。みーつけた。ひらおよぎで、すーいすい。くるくるパッ…」のように、 カウントの中に動きのイメージを取り入れて、指示出しします。
踊りながらのマイクパフォーマンスは難しいので、一人がダンスの動きを見せて、もう一人がマイクを担当するのがおすすめです。
④「ほめる」は大げさに
子どもが、ニコニコ楽しそうに踊っている。 そんな笑顔を見ると、ダンスがより一層、素敵に見えます。叱られながらの踊りになってしまうと、子どもの笑顔は引き出せません。ですから、とにかく、ほめる。大げさなくらいにほめましょう。
全体を通して踊れるようになると、子どもたちは達成感を感じ始めます。ここから完成度を上げるために、手を動かす方向や伸ばし方、顔の向き、足の曲げ方など、指導していくことが 多いのですが、子どもの動きに少しでも改善が見られたならば、「きれい!」「じょうず!」「さすが!」「感動しちゃう!」と、思いっきり声をかけてあげると、子どもは笑顔を見せながら練習に励み、完成度を高めていくでしょう。
校庭や体育館ではコール&レスポンスで
運動会は、体育館や校庭など広がった空間で指示を出す機会が多く、大人数に伝えなければなりません。そのため、教室とは勝手が異なります。
ここでは、手拍子を使って子どもの注意を引きつけながら指示を出す方法を紹介します。 ザワザワしているときに、有効的な方法です。 「タン・タン・タン!」と、教師が手拍子をします。子どもも続けて、「タン・タン・タン」。 教師はさらに、「タン・タタタン、はい」。子どもも合わせて、「タン・タタタン」。
これはリズム遊びですが、このコール&レスポンスを指示出しに応用していきます。リズム遊びで注意を引いてから、同じリズムで「二・列に・並ぶ」と、コールしましょう。 子どもも続けて「二・列に・並ぶ」と、レスポンス。その様子から、指示が子どもに伝わっているかを判断します。
もし、伝わっていないようなら、同じリズムでもう一度。「二・列に・並ぶ」と、 続けます。みんなに伝わったと判断できたら、 「はい・どう・ぞ」と、両手を差し出して、行動を促します。この方法は、「手は、あた・ま」「手は、おみみ」 などのコールを入れて、砂遊びをする手を封じながら、注意を引くことも可能です。
『小一教育技術』2016年5月号より