ハルシネーション(虚偽出力)を逆手に取り、学習対象に入り込む

6月末に行われた、日本生活科・総合的学習教育学会の福島大会、課題別研究発表で、大阪市立東田辺小学校の光田匠教諭が、2025年度、奈良県奈良市に在籍していたときに行った、生成AI(以下、AI)を活用した2年生の生活科の実践を発表しました。教育におけるAI活用の必要性が議論される一方で、「ハルシネーション(虚偽出力)」など、いくつかの問題点も指摘されています。そんな中、ハルシネーションを逆手に取り、2年生の子供たちがAIの抱える課題にも気づきつつ、身体性を伴いながら学習対象に深く入り込んでいった光田教諭の実践には、会場からも前向きな評価の声や質問が寄せられていました。そこで、光田教諭が行った生活科の実践を紹介するとともに、ハルシネーションを逆手に取るような実践の可能性についても紹介をしていきます。

執筆/大阪府大阪市立東田辺小学校教諭・光田匠
目次
子供たちは巨大な「鍵穴」の謎に興味津々
光田教諭が2025年度、奈良市立小学校の2年で担任として実践したのは、「まちたんけん」の学習です。この単元の構想当初、光田教諭はAIを活用する予定はなかったと話します。
「この単元は、7月中旬に1度、学区内にたんけんに出た後、本格的には9月から学習活動を進めていきました。この単元を構想していた7月24日に、奈良市からAI活用柔軟化の趣旨の通知『奈良市立学校における生成AI利活用方針』が示され、読んでもいました(同市は2025年度当初から、AI活用推進課を設置)。しかし、当初からAI使用も考慮して単元構想をしていたわけではなく、『まちたんけん』をして調べて分かったことを他県の学校と交流し、紹介し合うことを学習のゴールとしていたのです。
『まちたんけん』で子供たちが興味をもちそうな場所は、パン屋さんなどいくつかの候補が考えられますが、私はその地域の学習材(以下、材)の中で、唐招提寺、薬師寺、平城宮跡という校区内にある3つの世界遺産のいずれかに、興味をもって調べてくれる子がいるといいなと思っていました。例えば、平城宮跡は電信柱がなく、子供たちにとって格好の凧揚げ場所ですし、虫取りの許可、不許可から所管先も国と自治体に分かれていることを知るなど身近な場所だったのです。
しかし、実際に7月に足を運んでみると、パン屋さんやファミレスなどに興味をもつ子はいますが、3つの世界遺産への気づきはあるもののそこまで関心度は高くなく、『やはり学齢的に歴史は難しかったかな』と諦めていました。ところが8月末、訪ねた場所を地図に落とし込む活動をしていたとき、ある子が、『学校よりもでっかい鍵穴がある!』と言い出したのです(資料1参照)。それは、宝来山古墳(墳丘長約227mの前方後円墳、宮内庁が第11代垂仁天皇陵と治定)でした。そのとき、一人の子は『それは古墳やで』と言ってはいたのですが、子供たちは巨大な『鍵穴』の謎に興味津々で、そちらには耳が向きません。そして、『1回行ってみよう!』ということになったのです」
資料1

9月に入り、実際に足を運んで見てみると、古墳は池に囲まれた大きな森のようで、きれいに整備されているけれども立入禁止になっています。子供たちは実際に見て体感した大きさから、さらに興味をかき立てられ、おのおの古墳について調べ、朝の会で発表をしていったと光田教諭は話します。
「ある子は『古墳っていろんな種類があるんやで!』と古墳の種類を紹介しますし、別の子は、『古墳って、中にはすごく偉い人が埋められているらしいよ』と家で調べてきたことを説明します。そのような関心の高まりから、私も『これは材として使えるな』と思いました」
