休校明けの子供が感じる不安と心のケア【新型コロナ対策】

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多賀一郎

地域差はあるものの、さまざまな形で小学校も学校再開となっています。休校明けの子供たちの不安やストレスと教師はどう向き合い対処していく必要があるのか、児童心理理解について、追手門学院小学校講師・多賀一郎先生に解説していただきます。

執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎

Photo by Gift Habeshaw on Unsplash

子どもたちがストレスフルなのは当然

子どもたちは、大きなストレスを抱えているという前提で対応を考えましょう。

長い間、抑制的な生活を強いられているのです。いつもの休みなら、テーマパークや遊園地に行ったり、様々な施設に遊びに行ったりすることもできました。友達とも自由に遊べました。でも、そういう遊びが一切できずに、主に家に籠もって過ごしてきたのです。休みで楽しいのは一週間もなかったという子も多いかもしれません。

「学校はやっぱり楽しいところだ」と、実感できるようにしていきましょう。

子どもは家庭では弱者である

新型コロナの影響で仕事の無くなったおうちもたくさんあります。イベント関係、飲食業界、観光関係…みなさん苦しんでいます。保護者の仕事が無くなったり家計がひっ迫したりすることは、子どもたちに関係のないことではありません。家族で心配したり、おうちでの言い合いが増えたりしているかもしれません。ものすごいストレスだと思います。子どもたちは家庭の弱者なのですから、そのストレスは学校が受け止めなければなりません。

また、残念なことですが、僕のところにはDVが増えているという情報が入ってきています。DVの多くは大人のストレスのはけ口が子どもに向くということですから、家庭にストレスが充満していたら、増えるのは当たり前ですね。学校は、子どもにとって逃げ場でもあったのだと痛感しています。よく観察しておかないと、DVを受けている子どもはなかなかわかりません。そういう子どもがいるのだという前提で子どもの様子を見ましょう。

【関連記事】虐待の可能性がある子がいる場合には、こちらの記事をお読みください→休み明け児童の異変に「虐待かも」と感じたらすぐすべきこと

はりきりすぎた先生に心は開けない

正直、多くの子どもたちは、一日中、スマホ、ゲーム、動画漬けの生活だと思います。生活リズムも崩れているでしょうし、ぼんやりして寝とぼけたような感覚になっているかもしれません。驚くほど学力が低下している子どもたちもいるようです。

初日は久しぶりの学校だという喜びで元気そうに見えるかもしれませんが、そうした高揚感は一週間ともたないでしょう。そこでいきなり「さあ、勉強だ」と圧をかけないで、あせらずにゆっくりとスタートを切ることを心がけましょう。

子どもたちは、はりきりすぎた先生に心は開けません。

子どもの意欲が高いうちに対話を重ねる

子どもたちの意欲が高いうちに、子どもたちと繋がることを最優先で考えましょう。例えば、振り返りジャーナル(下記参照)や日記を書く時間をとるのもよいと思います。

たまにしか登校しないのなら、来た時に10分でもいいから自分の思いを書く時間を作って(書けなくてもいいと伝え、決して無理強いはしないようにしましょう)、先生もそれにコメントで答えるようにするのです。直接対話できないのなら、文章と文章で対話していきましょう。

【参考】
岩瀬直樹 ・ちょんせいこ 著「振り返りジャーナル」で子どもとつながるクラス運営」(ナツメ社)
多賀一郎著「クラスを育てる「作文教育」 書くことで伸びる学級力」(明治図書出版)

続く不安というストレスと共存していく

いつまた休校になるかわかりません。また、学校へ行くことに対する不安を感じている子もいます。不安というストレスはなかなかぬぐえません。子どもたちの心が癒されるような話をしたり、絵本の読み聞かせをするなどして、少しでも教師がほっとできる場所にできるように心がけたいですね。

【参考】
多賀一郎著「一冊の本が学級を変える―クラス全員が成長する「本の教育」の進め方」(黎明書房)


もちろん、ストレスフルなのは、子どもたちだけではありませんよね。先生方も、どうか自分の心身を大切に、この大変な時期を共に乗り越えましょう。

多賀一郎
多賀一郎先生

●多賀一郎(たが・いちろう)。追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。

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