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休み明け児童の異変に「虐待かも」と感じたらすぐすべきこと

2020/1/7

休み明け、元気がない、提出物が出されない、体に傷がある・・・など、「虐待かもしれない」と疑いを持ったときに、担任はどうしたらよいのでしょうか? 専門家に、担任として最低限知っておきたい基礎知識と対応法を聞きました。

監修/明治大学文学部教授・加藤尚子

加藤尚子先生
「早期発見には学校の主体的取り組みが必要」と加藤尚子先生

虐待の基礎知識と把握のポイント

児童虐待が大きな社会問題になっています。子どもの被害をできるだけ少なく留めるためには、教師も虐待に関する基本的知識を持ち、早期発見することが大切です。さらに虐待が起きてしまう状況を変えていくために、さまざまな機関と連携し、主体性を持ってこの問題に取り組んでいくことが重要です。

虐待には、身体的虐待、ネグレクト、性的虐待、心理的虐待、と4つの種類があります。

身体的虐待を受けている場合は、体に傷やあざがあったり、ネグレクトの場合は、極端にやせていたり、服装が汚れている、忘れ物が多い、宿題をやってこないなど、見てわかる兆候があるため、見る目を持っていれば発見しやすい虐待と言えるでしょう。

しかし、ネグレクトに関しては、兆候があっても、「忘れ物が多いのは、子どもが連絡帳を書いていないから」「保護者が忙しいから」などと、教師が子どもや家庭の問題と捉える傾向もあり注意が必要です。

性的虐待は、子どもにわいせつな行為をすることやさせることです。人に見られにくい場所で行われるため、最も発見の難しい虐待です。幼いころから性的虐待を受けている場合には、低学年の段階ではその行為が不適切であるという認識がないことがあります。また成長して不適切な行為だと気がついても、性的なことであるがために、人に相談しにくいのです。

「死ねばいいのに」などと子どもの存在を否定する暴言を吐かれたり、DVなど家族内の暴力行為を目撃する等、激しい心理的外傷を受けることは心理的虐待にあたります。心理的虐待は子どもの心に深い傷とトラウマ体験を残しますが、性的虐待同様、発見されにくく、対応の難しい虐待と言えるでしょう。

高学年の子どもは、虐待を受けていてもそれが恥ずかしいことだと捉え、隠してしまいがちです。しかし低学年の子は、担任の先生に必要以上に甘えたり、すぐに癇癪を起こすといった問題行動から虐待に気づくことがあります。また保健室を頻繁に利用するなど、不定愁訴がある場合も多いので、養護教諭の先生と連携し、こうした症状が見られる子は注意深く見守る必要があります。

各自治体や教育委員会では「児童虐待の早期発見のためのチェックリスト」等を公開しているところも多いので、参考にするとよいでしょう。

虐待が疑われる場合の対応

① 情報を集め、共有する

虐待が疑われる場合には、他の先生方とその子の様子を共有し、情報を集めていくことが大切です。学年の先生方だけでなく、養護や専科の先生、スクールカウンセラーなど、なるべく多様な先生と情報を共有するのが有効です。

さらに校内だけではなく、校外も含めて、情報を集め、共有することで、子どもの状態をより具体的に把握できるでしょう。

学童に通っている子の場合は、学童の指導員に様子を聞いてみるのもよいでしょう。学童では長期休暇の保育をしたり、日々保護者と連絡帳のやり取りをするなど、家庭の状況について多くの情報を持っています。

② 専門機関に相談する

はっきりと虐待が起きているかわからない場合でも、情報を集めた結果少しでも虐待行為が疑われる場合は、速やかに管理職に相談をし、虐待対応の専門機関に連絡をしましょう。

保護者との関係悪化を恐れて判断を迷う先生方も多いようですが、ここで重要な視点は、「虐待かどうかとはっきりさせるのは、学校の役割ではない」ということです。判断を迷った段階でより専門的な機関に相談し、助言をもらうことが適切な対応です。大切なことは、「気づき」であり、「子どもがより大変な状況に陥ることを防ぎ、困難に直面している保護者を支援すること」なのです。

③ 保護者への聞き取りのポイント

保護者に聞き取りを行っても、自ら虐待を認めることは極めて少ないでしょう。そして、保護者に虐待の疑いがあることを直接問いただしたり、子どもの気になる問題行動についてそのまま伝えてしまうと、子どもがさらに虐待を受ける場合もあるということを想定しておく必要があります。

まずは、家庭で保護者が困っていることはないか、あくまで共感する姿勢、受け身の姿勢で聞きましょう。

聞き取りの例1

〈NG例〉「ちょっと今日A君がお友達に手をあげてしまって、相手のお子さんが怪我をすることがあったので、ご報告しておきます」

〈良い例〉「少し心配になったので、お電話しました。実は学校で、お友達と喧嘩をして手を出してしまうということがありました。A君にも言い分があり、学校ではちゃんと対応しているので、ご心配なさらないでください。ただ最近、気持ちが落ち着かない様子なのですが、お家の様子はどうですか? お困りのことはありませんか?

聞き取りの例2

〈NG例〉「忘れ物が多いので、お家でももうちょっと気をつけてあげてください」

〈良い例〉「B君、忘れ物をしてしまうことがあり大変そうなのですが、お母さんもお忙しい状況ですか? もしそうであれば学校でも工夫しようと思うのですが、お困りのことがあればお聞かせ願えませんか?」

保護者に共感的に聞くことで、「実は子どもが言うことを聞かないから、お父さんが怒って叩くことがあります」などと打ち明けてくれることもあるかもしれません。発言内容はきちんと記録し、その後専門家に相談をしましょう。発言の内容から、「母親は虐待行為をよしとしているのか、困っているけれど止められないのか」などと分析し、対応を検討することができます。

④ 子どもへの聞き取りのポイント

虐待が気になる子には、「イライラしているみたいだけど、なにか嫌なことあるの?」など、子どもの心に寄り添う声がけをしましょう。

学校では、虐待について詳しく聞き取る必要はありません。聞き取りには専門的な技術が必要であり、教師の不用意な発言から、口を閉ざすこともあるので、できるだけ早く児童相談所との聞き取りの機会を設けることが大切です。

万が一子どもが虐待について話をした場合には、語るままに任せ、子どもが発したありのままの言葉を正確に記録し、その内容を専門機関にそのまま伝えることが必要です。

声かけの例

〈NG例〉「そんなことするなんてひどいね」

虐待をした人の批判をすることは避けましょう。自分の保護者を批判されたと思うと、子どもは口を閉ざしてしまいます。

〈NG例〉「いい子になってほしくて怒ったんだよ」「あなたが何か悪いことをしたからじゃないの?」

虐待した人の肩を持ったり、子どものせいにするような発言もNG。子どもは逃げ場がなくなってしまいます。

〈良い例〉「どうしてお父さんは君のことを叩いたの? そうか、お皿を落としてこぼしちゃったから怒ったんだ。でもあなたはもっと別な怒り方をしてもらったほうがよかったんだよね」

このように、子どもの気持ちに寄り添い、子どもを中心に話を聞いていきましょう。さらに、気になる子には日頃から声をかけ関わりを密に持ちましょう。大好きになってもらうことで、甘えたり、暴れるなどの問題行動が出ることもありますが、それが早期発見につながります。また、子どもが困った時に相談できるような関係もつくれるようになるでしょう。

【関連記事】加藤尚子先生の児童虐待についてのさらに詳しい解説は→教師がしっておきたい<児童虐待>見分け方と対応法

子どもを支える環境をどうつくるのか

① 学校全体で家庭を支える

決定的に養育力が低い家庭の場合は、家庭で果たすことのできない養育機能を学校で担わなければならないこともあるでしょう。しかし担任が一人でフォローするのは困難です。虐待問題への対応は、学校全体で取り組み、さまざまな関係機関と連携することが必要です。

② クラス全体でその子を支える

すべての子どもに公平に接しなければならないという観点に縛られると、前述したような特別なサポートが必要な子に対する対応が難しくなってしまいます。しかし、子どもの成長を支えるために、子どもたちを納得させる「説明力」も重要なスキルなのではないかと思います。

〈説明例〉
「みんなそれぞれできること、できないことって違いがあるんだ。Cさんは、一回怒っちゃうと、なかなか怒りがすぐには収まらない。でも、なんとかしようと頑張ってるんだ。だから、C君が怒っても先生は厳しくしないけど、そうしたほうがC君が成長するから、そういうふうにしているんだ。先生はみんなの成長もそうやって支えるよ。だからみんなも、C君が怒った時は、なるべく気持ちが収まって席に着いて授業が受けられるように、応援しよう」

加藤さんの本
虐待から子どもを守る! 教師・保育者が必ず知っておきたいこと』加藤尚子著(小学館)
試し読みはコチラ

取材・文/出浦文絵 撮影/五十嵐美弥

『小一教育技術』2018年1月号より

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