小5算数「小数のかけ算」指導アイデア
執筆/東京都公立小学校教諭・横須賀咲子
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、東京都公立小学校校長・長谷豊
目次
本時のねらいと評価規準
(本時 1・2 / 12 時間)
ねらい
小数をかけることの意味を理解し、整数×小数の計算の仕方を考える。
評価規準
既習の整数または小数×整数の計算の仕方と関連付けて、整数×小数の計算の仕方を考えている。(数学的な考え方)
問題

図を、文にしてみましょう。
1mの値段は、80円です。
さらに図を付け加えますよ。いくらぐらいかしら?
2mくらいだから、160円くらい。
2mより、ちょっと長そうだよ。160円よりちょっと高いから、200円くらいじゃないかな。
(図に加えて)また図を文にしてみましょう。
2.3mではいくらでしょうか。
図に合わせて、文を作るように促します。子供と一文ずつ作ることで、問題場面をしっかりと捉えさせたり、見積もりをもたせたりします。
本時の学習のねらい①
どんな式になるでしょう。
見通し
2mだったら160円と考えたのは、どうしてですか。
1mで80円ということは、 2mはその2個分だから、 80×2で160円です。
1mの値段×長さで代金が出るから、80×2で160円です。
2.3mでいくらかを求めるには、どのような式を立てればよいでしょうか。
2.3個分って言わないけれど、かけ算でいいのかな?
長さが小数になっても、1mのねだん×長さで、 80×2.3だと思います。
リボンの長さと代金は比例しているから、長さが2.3倍になると、やはり代金も2.3倍になります。図で、説明します。

だから、長さが小数になっても、かけ算にしていいんだね!
でも、80×2.3って、どうやって計算するのだろう?
本時の学習のねらい②
80×2.3の計算のしかたを、考えましょう。
自力解決の様子



自力解決の際、手がつけられずにいる子供を集めて、今までの学習との違いである「かける数が小数であること」を確認し、「2.3を整数にするためにはどうしたらよいか」を考えさせ、2.3を10倍することを気付かせていきます。
学び合いの計画
自力解決の際、しばらくたっても手がつけられずにいる子供には、机間を静かに回って友達のノートを見て回ってもよいことを伝えます。そのようにすると、友達のノートから考えるきっかけをもらえることがあります。
また、発表検討場面では、ただの発表会に終わらせずに、友達の考えを共有し話し合うことができるようにしていきます。そのためには、BやCの考え方の方法は、はじめからすべてを発表させるのではなく、式だけを提示し、なぜそのような式になったのか、その式の意味は何かを、みんなで考えていくようにします。
また、友達の発表を隣同士で説明し合う活動を取り入れ、友達の考え方を共有できているかを確認していきます。
ノート例
全体発表とそれぞれの関連付け

〈Bの発表の後〉
Bさんの書いた式を見て、わからなかったり、確認したかったりすることはありますか。
80÷10で求めた8というのは、何だろう。
1mで80円の80を10等分しているから、0.1mの代金を求めたのではないですか。
どういうことですか。
はじめの図で説明すると……。
2.3mは0.1mが23個分だから、8×23ということですね。
Bさんの考え方を、隣同士で説明し合ってみましょう。

〈Cの発表の後〉
Cさんは、どのように考えたのでしょう。
2.3を10倍して、23にしています。
なぜ、10倍にしたのですか?
整数なら計算できるからです。
80×23をして1840が出るのはわかったけれど、それをどうするのですか?
10倍した答えが1840だから、1840を[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]にすれば、答えが出ると思います。
図で説明すると、どうなるでしょうか。
〈すべての発表の後〉
2人の考え方を見て、似ていることはありますか。
どちらも、整数の計算を使っています。
Bさんの考え方を1つの式で表すと、80÷10×23で、Cさんの考え方を1つの式で表すと、80×23÷10で、 考え方は違うけれど、80×23を÷10にするというのは同じです。
かける数が小数でも、80×23のように整数の計算を基にすれば、計算できますね。
学習のまとめ
リボンの長さが小数のときでも、代金を求めるときは、かけ算の式を立てることができる。80×2.3のようにかける数が小数のときも、整数の計算を基にすれば計算できる。
評価問題
1mのねだんが90円のリボンを、1.6m買いました。代金はいくらですか。
①その式になる理由を、説明しましょう。
②計算の仕方を、説明しましょう。
子供に期待する解答の具体例
リボンの長さと代金は比例しているから、長さが1.6倍になると、代金も1.6倍。だから90×1.6になります。

ノートに書かせるだけでなく、どうやって解いたかを隣同士で説明し合うと、評価規準を達成したかどうかを確かめることができます。
イラスト/横井智美
『教育技術 小五小六』2019年5月号より