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<連載> 菊池省三の「コミュニケーション力が育つ年間指導」第2部・学校づくり編 #5 愛媛県松山市立道後小学校4年4組②

連載
菊池省三の「コミュニケーション力が育つ年間指導」~3学級での実践レポート~
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教育実践研究家、教育実践研究サークル「菊池道場」主宰

菊池省三
菊池省三の「コミュニケーション力が育つ年間指導」 第2部・学校づくり編 タイトル

菊池実践を追試している3つの学校の授業と子供たちの成長を、年間を通じてレポートする連載、第2部。第2部では学級にとどまらず、学年、学校、地域を変えていくことを視野に入れた話し合いの授業を展開、レポートしていきます。今回は、道後小の竹本悠希先生の学級における2025年11月の授業記録をお届けします。

レポートする学校の3人の先生方の紹介

担任・竹本悠希先生より、学級の現状報告

自分のことや興味のある話題だと、子供たちは盛り上がって話すことができます。しかし、相手の話を聞くことが苦手な子も多いのが現状です。また、自発的に考えを持てない子もおり、いつも誰かが意見を言うのを待っている傾向もあります。
子供たちの興味を引き続けることの大切さを感じました。また、意見を発表するとき、これまで発表してきた人の考えを引用したり比較したりしながら発表することが、聞くことにつながると感じました。

菊池先生による授業レポート

「こんにちはっ! 笑顔の1時間にしましょう。じゃあ指の骨が折れるぐらい拍手っ!」
菊池先生が声をかけると、みんなが笑顔で大きな拍手をした。
菊池先生が黒板の左端を指しながら、
「前(5月)の授業のときに、ここに書いたんだけど、覚えている人は手を挙げましょう」と言って黒板に「リ」と書くと、

「ああっ!」と何人かが手を挙げた。
「リアク」まで書き、
「隣の人と『あんた、まだ思い出さんのか?』と言いましょう」と菊池先生が笑いながら問いかけると、子供たちは隣の子と笑いながら言い合い、みんなが手を挙げた。
指名された子が、

「リアクション」と答えると、みんなが大きな拍手を送った。
菊池先生が、
「リアクションの基本には、3つのポイントがあります。1つめは『うなずく』。あとの2つは何でしょう。当てずっぽうでもいいから、わかった人は立ちましょう」と問いかけると、半数以上が席を立った。
「意見を言った人から座るので、普通は立っている人の数が減っていきます。でも、聞き合う教室だと、友達の意見を聞いて『あっ!』とひらめいて立つ人もいるので増えるんですね」と菊池先生が小声で話した。

⚫︎目を見て聞く
⚫︎よく聞いて、発表している内容に合ったリアクションをする
⚫︎拍手
⚫︎言った人の意見のいいところや違うところを考えながら聞く
⚫︎「なるほど」と言う
⚫︎発表している人の方を見る
⚫︎軽く反対意見を言ったり、ほめたりする


子供たちの意見が出ると、菊池先生が、残りの2つを書き加えた。



教室は「呼応し合ってみんなで学び合う・聞き合って考え合う場」であることを1つのゴールイメージとして考えると、リアクション力は大きな要素になります。
リアクションというと、大きな動作をイメージするかも知れませんが、質が上がってくると、聞き合って考え合う静かな動作にも目が向くようになります。
そのようなリアクションを促すため、教師は常に話し方や動き、立ち位置、目線、声かけのタイミングを見計らい、教室の空気の温度を上げていくことが重要です。

言葉かけの文末も、呼応する空気づくりを意識

「今日の授業では、リアクションの3つのポイントをぐっと上げていきましょう。今日は、4コマまんがを持ってきました」
菊池先生の言葉に、みんなが、

「楽しみー」「やったー」と声を上げた。
菊池先生が、
「どんな場面か予想した人は、『やる気の姿勢』になりましょう」と、1コマ目の絵(ボールが何かに当たって「ガチャン」音を立てている絵)を見せながら、歩いて教室を一巡した。


資料写真やイラストを子供たちに見せる際、私は1枚持って教室中を歩いて回ります。
自分が見られる時間は、私が通り過ぎる際のほんのわずかな間ですから、子供たちは集中して資料を見ます。モニター画面に映し出すだけでは、子供たちの視界に入るのみで印象に残らず、受け身になります。一方、持って回る1枚の資料は、自ら見ようとする能動的な姿勢をつくります。
子供たちが必死で見ようとする行為も、リアクションの1つと言えるでしょう。
聞き合って考え合う授業の助走段階です。

1コマ目に書かれた絵を見ながら近くの人と3秒間相談した後、縦列の4人が発表。
菊池先生が最前列の女子に、

「一番最初と最後、どっちの発表がいい?」と尋ねると、

「最初です」と女子。
「……時を戻そう。意見は一人ひとり違うんだから、絶対に違う言葉で答えるよね。……じゃあ、一番最初と最後、どっちがいい?」と菊池先生が再度尋ねると、女子はさっきと同様に、「最初がいいです」と答えた。菊池先生が笑いながら、

「でも、……最後でもいい?」とあえてごり押しで尋ねると、女子が笑いながらうなずいた。


⚫︎おもしろがって野球ボールを窓に当てている
⚫︎遊んでいたら、ついボールを窓に当ててしまった
⚫︎野球をやっていたら飛びすぎた
⚫︎野球をしていたら障子を破って、見ていた人がびっくりして花瓶を割った


先ほど無茶振りされて最後になった女子が上の4つ目の意見を発表すると、

「詳しいですね、ありがとう」と菊池先生がほめた。
続いて2枚目の絵(おじさんが子供の頬を叩いている絵)を見て、どんな場面かを発表。新たな縦列の最前列の男子に、

「最後でもいいよね?」と尋ねると、男子がうなずいた。

「ここで拍手だな」と菊池先生が促すと、みんなが笑いながら大きな拍手を送った。


⚫︎怒られている
⚫︎おじさんの家の窓を割ったから、おじさんがお仕置きをしている


菊池先生が女子と握手し、

「教室は公の場だから、彼女は『じじい』という下品な言葉ではなく、『おじさん』という言葉を使ったんですね。ここで拍手!」と言うと、みんなが拍手した。


⚫︎おじさんに「お前、何をやっているんだ」とバシッとやられた
⚫︎友達とけんかしている
⚫︎野球していて割っちゃったけど、みんながおじさんに怒られないために、1人だけ残った


最前列の男子の“推理”にみんなが大笑いし、大きな拍手を送った。
「友達の意見を聞きながら、『○○さんらしいな』と大きくうなずいたり、上手に笑ったり……いい教室ですね」とみんなをほめた。


教師の言葉かけの文末(語尾)も、呼応するための空気づくりを意識しています。
「拍手!」と言い切る場合もありますし、「はい、立ちましょう」「~~してください」と静かに指示する場合もあります。一息置くこともありますし、無言、読点で大きく間を取る場合もあります。
さらに、「発表した人が座っていくから数が減るんだけど、いい教室は、ひらめいて立ち上がる人が出てくるから増えるんだね」「『前の人と同じです』と言う人はいないよね?」「一番最初と最後、どっちの発表がいい?」という問いかけは、「ちゃんと聞き分けなさい」という意味を込めた “前振り” でもあります。
書いていなくても発表する、うなずきながら聞く、こうしたリアクションは、みんなとつながろうとする姿勢です。
こうした学びの姿勢をほめ、みんなで拍手で認め合うことは、「ちゃんと聞きなさい」という前振りに対する、“オチ” に当たります。教師は、こういう意識を持ちながら、言葉かけをしていくことが大切です。
若手教師が先輩の授業を参観する際、こうした言葉かけを注視することで、聞き合う教室のステップが見えてくるのではないでしょうか。

抜けた1コマを想像する

「ところで、2枚の4コマまんがの絵の出し方で、『どこかおかしい』と気づいた人は?」と菊池先生が尋ねると、大勢が手を挙げた。
指名された子が、

「絵にA、Cと(記号が振って)あるけれど、Bがない」と答えると、菊池先生が、

「じゃあ、Bはどんなシーンなのか、近くの人と5秒相談しましょう」と声をかけた。
相談後、指名された2つの縦列が発表。


⚫︎焦っている
⚫︎どうしよう
⚫︎キャッチボールをしているうちの1人が逃げている
⚫︎おじさんが出てくる
⚫︎「お前のせいだろ」と言っている
⚫︎大人数で野球をしていて、「誰がやった!?」とけんかになっている
⚫︎野球をしていて、1人だけ残して他の人は逃げた
⚫︎ガチャンと割って、おじさんが出てきた


子どもたちの意見を聞いた菊池先生が、
「一人ひとり違う、その人らしいことを言う。それをみんなが聞いているからリアクションできるんですね」とみんなをほめた。


友達の意見に、つい「うっそー!?」「そうそう」などとつぶやいてしまう子がいます。こうした発言を否定するのではなく、「いいリアクションだね」とほめましょう。
自分の予想通りだったり、または予想と全く違う意見だったりしたときにうっかり出てしまうつぶやきは、集中して聞いているからこそのリアクションです。
1つの正解を答えなければならない問いの場合、友達の発表を聞いても、正解がわからなければ、予想のしようがありません。

こういう正解が1つではない問いだからこそ、いろいろ考えられるし、聞き合える。ユニークな答えも出てくる。そういう前提で、教師も「○○さんらしさが出ているねえ」とプラスに受け止めることが大切です。

菊池先生が、抜けていた2コマ目を見せた。子供がおじさんに「払えばいいんでしょ」と言いながら、お金を差し出している絵に、「えーっ!?」「うっそー!?」と教室が騒然となった。
お金で解決しようとする子供と、その態度に怒って頬を叩いたおじさん。
「自分はおじさんの味方をするか、子供の味方をするか、決めた人はやる気の姿勢を見せてください」
菊池先生が静かに話すと、子供たちがピシッとした姿勢になった。
「とりあえず意見を決めて、今から話し合いをするけれど、友達の意見を聞いてから変わってもいい。だから、今決めた立場は(仮)です」
子供たちは次のように立場を決めた。


⚫︎子供の味方 7人
⚫︎おじさんの味方 18人


「子供に味方する立場に変わってもいい、という人はいますか?」と菊池先生が問いかけると、何人かが手を挙げ、子供が12人、おじさん派が13人になった。
同じ立場同士がそれぞれ3~4人の小グループになり、その立場を選んだ理由について自由に意見交換し、そのままの立ち位置で発表した。

<おじさんの味方派>
⚫︎子供の態度が悪い
⚫︎子供の言葉遣いがよくない
⚫︎「割ったけど、払えばいいでしょ」と謝っていない。払えば済むという感じ
⚫︎そもそも窓を割るのが悪い


菊池先生が子供たちを教室の真ん中に押し出して集め、話し合いの “輪” を小さくした。

Point 5
意見発表というと、調べたことを滞りなくみんなの前で話すことだととらえる教師も少なくありません。正確に発表するため、もちろん、何度も練習します。きちんと発表した結果に、教師も子供も満足しますが、これでは単なる発表会にすぎず、ライブ感も全くありません。
話し合いのおもしろさは、他者との関わりです。質問したり反論したりしながら、それぞれの意見を聞き合うことです。当然、シナリオはありませんので、即興で進んでいきます。
話し合いの中心はもちろん子供ですが、好き勝手に話し合わせるだけでは、ただの言い合いで終わります。子供主体の話し合いにするためには、教師がファシリテートし、話し合いの内容や目的を明確に指示し、子供たちの有意義なラリーが続くように導く必要があります。

<子供の味方派>
⚫︎子供の態度も悪いけれど、暴力を振るうのはよくない
⚫︎お金を払って謝る気持ちがあるのに、殴ろうとしている
⚫︎子供はわざとじゃないし、もしかしたら、お金を出した後に謝ろうとしたのかもしれないのに殴った
⚫︎この子が割ったとは限らない


「今の意見を聞いて、立場を変えたい人?」と菊池先生が尋ねると、3人が、
「子供派からおじさん派に変更したい」と手を挙げた。


⚫︎やっぱり子供が悪いと思った
⚫︎お金を払ってとっとと帰りたい感じがする


その後、再び同じ意見のグループ同士で話し合ってから、意見が違うチームによる先の発表への反論も兼ねて発表した。

<子供の味方派>
⚫︎子供の態度はよくないけれど、暴行はいけない
⚫︎暴力じゃなく、言葉で言えばよかった
⚫︎お金で済ませて大事にならないようにした

<おじさんの味方派>
⚫︎男の子が反省しているように見えない
⚫︎子供がお金で解決しようとするのはよくない

子供たちの発表に熱がこもり始め、聞いている子供たちも、

「なるほどねえ」「そう、そこだよね!」などと、リアクションが大きくなっていく。話し合いの空気が一気に加熱していった。

「3人の登場人物は幸せか」を考える

菊池先生が、
「この4コマまんがは、実際に北海道の新聞に載ったものです。最後の4コマ目はどんなシーンなのか、近くの人と5秒相談しましょう」と問いかけた。
相談後、横列の5人が発表。


⚫︎親が呼ばれる
⚫︎ちょっと泣きながら謝る
⚫︎子供が謝る
⚫︎逆におじさんが謝る


菊池先生が4コマ目を見せようとしたとき、1人の男子が、

「楽しみだなあ」と思わずつぶやいた。菊池先生がすかさず男子と握手。
「いろんなリアクションがある。『楽しみだなあ』と思わず言ったのは、みんなの意見を聞いて、だんだんプラスの言葉が出てきたからだね」と言うと、みんなが笑顔になった。
4コマ目は、男子の母親がおじさんに対し、「弁護士を立てて話し合いましょう」と抗議しているシーンだ。
菊池先生が、

「おじさんと子供と母親。3人の中で本当に幸せな人はいると思うか。決めた人は背中を美しくしましょう」と言うと、みんながさっと姿勢を正した。
悩んでなかなか選べない子もいたが、「いる」という意見が多数を占めた。
「一生懸命考えていること、先生や友達の話を真剣に聞くこと、全てがリアクションです。そう考えると、教室は毎日が祝祭ですね」と菊池先生。再び同じ立場同士で意見を交換し、発表。

<いる派>
⚫︎自分のためにお母さんが来てくれた
⚫︎お母さんが弁護士を立ててまで話し合ってくれた
⚫︎ガラスを割ったにもかかわらず、お母さんから説教を食らっていない
⚫︎窓を割ったのに怒られず、お母さんは自分の味方をしてくれた

<いない派>
⚫︎男の子は叩かれたから痛みが残っているし、お母さんは自分の子が叩かれたから怒りが強い。おじさんは「弁護士を呼ばれたらどうしよう」と考えているので、誰も幸せじゃない
⚫︎3人とも嫌な気持ちになっている
⚫︎子供はお母さんに全部やってもらっているし、母親は意味もなく怒ってわざわざ弁護士を立てるのはおかしい。おじさんは悪いことをしていないのに、弁護士まで入っている



発表後、菊池先生が、

「私はこの3人の中に幸せな人はいないと思います。『ごめんなさい』『ありがとう』『お願いします』のように、大切な言葉を使えばよかったんですね。この3人は、コミュニケーションの力が弱ったのかも知れません。両方の言いたいことを聞いて話し合うコミュニケーション力があれば、幸せになれるんじゃないかと、私は思っています」と授業を締めくくると、みんなが大きくうなずいた。

菊池省三先生から竹本先生へのメッセージ

知識や情報を教える通常の授業に対して、対話・話し合いを中心としたコミュニケーション力を高める授業は、子供たちとの呼応関係が重要になります。子供たちの発言はもちろん、一人ひとりの表情や態度、うなずき、つぶやきなど、非言語の部分もその場でキャッチしていくことで、教師と子供、子供同士がつながり、ライブ感あふれる授業となっていきます。
きっちりとした指導案どおりには進まないので、経験が少ない教師にとっては難しく感じられるかもしれませんが、挑戦し続けてほしいと強く思います。

菊池省三先生による授業解説

子供たちのワクワク感を引き出す4コマまんがの授業。教師の発問によって、「次はどうなるんだろう」「えっ、そうなの!?」と、子供たちの頭の中をぐるぐるかき回していきます。
「意見を出しておしまい」ではなく、相手の意見を聞きながら、その先を考えていく発問によって、4コマまんがの起承転結の流れのように、子供たちの思考もどんどん変わっていきます。
「一人ひとり違っていい」「何を言ってもいい」という安心感と、友達らしさにあふれた意見を聞き合い、自分の意見を重ねていく楽しさ。意見のラリーが続く中で、教室に呼応していく空気が生まれていきます。
聞き合うために必要なのが、予想する力です。「相手はこんなことを言うかも知れないから、こう返そう」「こういう意見に対しては、こんな反論をしよう」と予想しながら聞くことで、次の発言が生まれ、意見のラリーが続くのです。

話し合いが加速してくると、子どもたちの “輪” が小さくなっていく。
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取材・文/関原美和子


菊池省三先生の写真

Profile
きくち・しょうぞう。1959年愛媛県生まれ。北九州市の小学校教諭として崩壊した学級を20数年で次々と立て直し、その実践が注目を集める。2012年にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演、大反響を呼ぶ。教育実践サークル「菊池道場」主宰。『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』(講談社)、『一人も見捨てない!菊池学級 12か月の言葉かけ コミュニケーション力を育てる指導ステップ』(小学館)他著書多数。


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