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「個別最適な学び」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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次期学習指導要領の改訂作業では、「個別最適な学び」というキーワードが重要な検討事項として位置づけられています。その検討協議では、子供一人ひとりの学習状況や関心、理解の進み方が大きく異なっている現状を踏まえ、従来の一斉指導を前提とした授業のあり方を見直す必要性が繰り返し指摘されています。とくに、GIGAスクール構想の進展によりICTを活用して学習の進度や内容を柔軟に調整できる環境が整いつつあることが、議論を後押ししています。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

「個別最適な学び」とは

【個別最適な学び】
学習者一人ひとりの特性や理解度、学習進度、興味・関心等に応じて、学習内容や方法、支援のあり方を調整しながら進める学びのことを指します。文部科学省は、個別最適な学びについて、「子供一人ひとりの理解度や学習進度、興味・関心等に応じた指導や学習活動を行い、資質・能力の確実な育成を図る学び」であると整理しています。

個別最適な学びが重視される背景には、社会や学校を取り巻く環境の大きな変化があります。第一に、社会の変化が激しく、将来の予測が困難な時代において、知識を一律に習得させる教育から、自ら課題を見いだし、学び続ける力を育成する教育への転換が求められています。第二に、学習者の多様化が進み、特別な教育的ニーズをもつ子供や、日本語指導を必要とする子供、学習理解に大きな差がある子供が同じ学級で学んでいる現状で個々の学習ニーズに応える学習活動を保障する必要があります。このような状況では、同一内容、同一方法、同一時間、つまり一斉画一的な指導のみでは十分な対応が難しくなっています。第三に、GIGAスクール構想で一人一台端末の環境が整備され、学習内容や進度を柔軟に調整することが可能になった点も大きな要因です。これらの背景から、全ての子供の学びを保障する方策として、個別最適な学びが強く求められているのです。

「個別最適な学び」は、単なる個別指導や習熟度別指導として捉えるのではなく、学習者自身が学びのあり方を選択し、調整していく主体的な学習過程を重視することで実現するものです。従って、教師が一方的に学習を細分化することではなく、学習者が自らの学びに関与し、意味づけながら深めていく学びであるということもできます。

具体的には、学習集団で共通の目標を設定したうえで、学習の進め方や思考の深め方に多様性を認める学びのあり方である点が重要です。例えば、課題の選択肢を複数用意したり、調べ方や表現方法を学習者が選んだりすることは、個別最適な学びの具体例といえます。また、学習の途中で振り返りを行い、自分の理解や課題を確認しながら次の学びを調整していくことも重要な要素です。このように、個別最適な学びは、学習者の自己調整力を育成することと深く結びついています。教師には、学習者の選択や試行錯誤を支援し、学びを価値づける役割が求められます。

個別最適な学びと協働的な学びの関係

令和3年の中央教育審議会答申『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~』では、個別最適な学びと協働的な学びを「一体的に充実させる」ことの重要性が示されています。個別最適な学びによって、学習者は自分なりの考えや問いを形成することができます。そのうえで、協働的な学びの場において他者と考えを共有し、対話することで、理解が深まり、考えが再構成されていきます。逆に、協働的な学びを通して得られる多様な視点や気づきは、個々の学びをより豊かなものにします。つまり、個で考え、集団で深め、再び個に戻して学びを確かなものにする循環が、深い学びを支えているといえます。

このような考え方は、決して新しいものではありません。学校現場ではこれまでも、子供一人ひとりの実態に応じた学びを保障しようとする実践が積み重ねられてきました。例えば、補充学習や発展学習による学習内容の調整、特別支援教育における個別の指導計画、生活科や総合的な学習の時間における探究的な学習などは、子供の理解度や関心の違いを踏まえた取組であったといえます。また、教師が子供のつまずきや成長を丁寧に見取り、声かけや支援の仕方を工夫してきたことも、個に応じた学びを支える重要な実践でした。

一方で、現在求められている「個別最適な学び」は、こうした従来の実践を否定するものではなく、それを基盤としながら、さらに発展させていこうとする教育の方向性を示しています。とくに重視されているのは、子供一人ひとりの興味・関心や学び方の違いを、より意識的に学習の中心に据えていく点です。学習内容や進度を教師が調整するだけでなく、子供自身が学びのあり方を選択し、振り返り、次の学びにつなげていく主体として位置づけられています。ICTの活用により、学習履歴の可視化や多様な教材へのアクセスが可能になったことも、こうした学びを支える重要な要素となっています。

このように、個別最適な学びと協働的な学びは、これまでの教育実践の延長線上にありながら、子供一人ひとりの学びをより大切にする方向へと教育を導くものです。両者を往還する学習のプロセスを通して、子供は自分の考えを深めるとともに、他者と学び合う価値を実感していきます。この循環を意図的に設計していくことが、これからの授業づくりにおいて一層重要になっていくといえるでしょう。

個別最適な学びと協働的な学びを実現する授業

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