次年度への引継ぎ&情報共有を正確に行うための極意とは?
子どもたちの一年間の学びの姿、担任として続けてきた指導や支援、校務分掌や行事の運営、保護者の家庭状況や学校への要望等々…。次年度への引き継ぎ&情報共有を行う際に重要なキーワードは、「日常的かつ頻繁なメモ」と、その「確実な文書化」です。子ども同士の関係性を見取り、次年度のクラス編成に生かすため、年度末に取り組みたい活動例も紹介します。
執筆/千葉大学教育学部附属小学校教諭・松尾英明

目次
子どもの情報は3月中に確実に文書化しよう

引継ぎや情報共有は、何のためにするのでしょう。ずばり、次の担当者に無用な苦労をさせないためです。相手への思いやりとも言えます。そういう視点から、次年度に担当する教師に向けて、今何をすべきかを考えていきます。これは、子どもの情報であっても、校務全般においても同じことです。
特に要注意なのは、異動してしまう教師の学級です。異動した教師自身も、異動先に慣れることで手一杯になるため、子どものことを改めて聞くことが非常に難しくなります。
引継ぎと子どもの情報共有を考える際に、はっきりしておいた方がよいのは次の点です。
① 学年に残るのは誰か
② 学校に残るのは誰か
③ 異動してしまうのは誰か
④ 新担任の中に異動者がいるか
これが分かるのは3月ぐらいかもしれませんが、分かってからで構わないので、改めて情報を整理します。
情報共有の大切な視点
当然ですが、ここでの中心は①の教師です。次年度に自分が受け持つ学年なので、切実です。情報共有の中心となります。この教師を中心に、情報を集約していきます。ここがいない場合は、②の教師です。校内に他に頼る人がいない以上、次年度何かある際には確実に聞かれますので、責任感を持って行います。
そして、③の教師については、他の教師以上に細かい文書化を求めておきます。先に述べた通り、後で聞けないからです。しつこいくらい細かく書いておいて丁度よいでしょう。
加えて大切なのは、④の視点です。新しく異動してきた教師が担任するとなれば、その教師には状況が全く分かりません。まして、前担任が異動者だと、文書だけが頼りになります。
残っている教師に詳しく教えてもらえばよいと思うかもしれませんが、4月はみんな忙しく、しかも異動してきたばかりの教師であれば、なかなか声をかけにくいのが現状です。細かいことが文書化されていると、とても助かります。
ここに加えて、「学級解体の有無」も大切な視点です。学級解体がない状態と、解体がある状態では、必要な情報も引継ぎの仕方も全く変わってきます。
学級解体がない場合、子ども同士は今の人間関係をそのまま引き継ぎます。つまり、学級の子ども同士の情報の文書化が必要になります。
一方で、学級解体がありクラスが再編される場合、個々の情報が大切になります。特に、一年時に解体されて二年時に再編された学級を三年生に再編成する場合、一年時から二年時に引き継がれた情報が漏れ落ちるということが起き得ます。その結果、いじめ等で問題の起きた子ども同士をうっかり一緒にしてしまうようなミスが起きます。
毎年学級解体があるような学校は、特にこの個々の情報をきちんと記録しておかないといけません。そうしないと、六年生のクラス編成時に、重要な人間関係の情報について誰も知らず、大変なことになるというような事態が起きます。
次年度の担任のためだけでなく、向こう数年間の担任たちにとっても、中学校に上がるまで使い続ける息の長い情報だという自覚を持って、今の情報を文書化して残しておきましょう。
とにかくメモをとりまくろう

情報を残すためには、普段からメモをとり、それを文書化して残しておき、全ての教師が共有できる状態にしておくこと。引継ぎ&情報共有においてこれ以上に大切なことはありません。校内LANの整備が急務に挙げられていますが、職員の誰でもアクセスでき、かつセキュリティ上安全な場に記録を残しておくことが大切です。
逆に、個人のPC上やUSBメモリのような持ち運びのできる媒体に保存しておくことは、漏洩の可能性が高いので、お薦めできません。これは校内の情報セキュリティ機器の整備にも関わる点ですが、全校で真剣に考えてほしいところです。
こうした「子どもたちの情報」の引継ぎの仕方を考える際にも、校務分掌等をどう引き継ぐかということを考えるとよいでしょう。
例えば、自分の校務分掌、担当行事の場合を考えます。一・二年生ですので、遠足の行事を担当したとします。これを学年内でも提案し、共通理解をしたとします。
しかし、後になって、あれが必要、これも必要と気付き、いろいろと追加連絡が出るものです。その場では何とか凌げますが、来年度も確実に同じことが起きます。だから、確実にメモをしておき、その都度元の文書に書き足しておく必要があるのです。
特に、提案文書には書かれていないにも関わらず、よく気が付いて協力的な教師の好意に頼って何とかなっている部分は、確実に改善が必要です。好意に頼るのは、本当のピンチにおける最終手段としてとっておくべきことです。
同様に、文書化していないのに、長くいる特定の教師だけが分かっていて、毎年何とかしているような状態も、改善すべきです。情報の独占は、その人の立場を強くしますが、学校という協働の場でやるべきことではありません。
さて、これらのことをそのまま子どもの情報の引継ぎに応用して考えてみます。
子どもを指導していて、何か起きた時や、気付いたことがある時、即時メモに残しておきます。そうして、専用のノートや指導記録に日常的に書き加えていくことが大切です。