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愛着形成が難しい現代の児童たち…教員を「傷つけながら近寄ってくる」行動に対応するために

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

令和時代の児童によくみられる傾向があります。それは、教員を「傷つけながら近寄ってくる」というものです。反抗・否定したい気持ちと、甘えたい気持ちの両方があり、その2つを出し分けてくるのです。戸惑いやもどかしさを感じている先生方も多いはずです。あなたの心が疲弊してしまわないよう、こうした現代っ子の背後にある心理と、大人に求められる関わり方について考え、対処していきましょう。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

「傷つけながら近寄って来る」ってどういうこと?

ある男児の姿をご紹介します。彼は授業中に「うざい」「バカじゃね?」「デブじゃん」「うっざ」「つまんない授業」と暴言を吐きます。でも、給食の時間になると、何ごともなかったように「ねぇせんせい、今日いっしょに食べよ」近づいてきます。
このような、
「傷つけながら近寄ってくる」
行動、みなさんもよく体験されるのではないでしょうか?
その背景には、「どうせ見捨てられる」「裏切られるに決まってる」という諦めと、「それでも信じてみたい」「そばにいてほしい」という願いがせめぎ合っています。愛着や信頼の土台が育ちにくい環境で育った子は、安心したいがゆえに、逆に大人を試すような言動を繰り返してしまうのです。

こういった言葉の奥にある児童の心の揺れに、わたしたち大人がどう応えていけるか。それが、現代の教室に求められているまなざしではないでしょうか。

近寄ってくる子の6つの教員との関わりパターン

現代っ子たちは、教員との関わり方にさまざまな「パターン」を見せます。どのクラスにも、思い当たる子がいるのではないでしょうか。以下に心理学研究の知見とわたしが経験した6つの典型的な関わり方を示します。

①「試し行動」で接近してくる

「このせんせい、どこまで自分を受け入れてくれるのか」を探るような態度をとります。
例:「せんせいなんか嫌い」と言いながら、放課後には話しかけてくる/失敗した後にわざと反抗的な態度を取る/悪いとわかっていてもやんちゃな行動をとる…

② フレンドリーだけど礼儀に欠ける

SNS世代の影響か、教員をフラットな存在ととらえがちです。芸能人の「推し」みたいな接し方をしてくる子もいます。
例:あだ名で呼ぶ、「マジでウケるんだけどせんせい」など、距離感を見誤った言動が多い。

③ 尊敬はしないけれど期待はしている

口では「どうせ無理」「もういいよ」と言いつつも、心の中では「せんせいならなんとかしてくれるかも」と希望を寄せています。
例:「どうせ忘れてるでしょ」と言いながら、翌日「今日あの話してくれる?」と尋ねてくる。

④ 感情をぶつけながら依存する

怒りや悲しみを教員にぶつけながら、決して離れようとはしません。
例:授業中に突然泣き出し「せんせいなんか嫌い!」と叫びながらも、休み時間には机のそばを離れない。べたべたしてくる。

⑤ 利害で動き、都合よく関わる

「せんせいは使えるかどうか」が基準。評価を上げたいときや、得をしたいときだけ近づいてくることもあります。
例:テスト前だけニコニコ話しかけてくる/ほかの先生の悪口を言って共感を引き出そうとする。

⑥ 大人びた態度で接してくる

家庭で親代わりの役割を担っている子に多く、教員にも無意識に子どもらしさを出さずに接してきます。
例:「せんせい、○○の連絡しておきましょうか?」など、まるで教員の同僚のような振る舞いを見せる。

これらに共通するのは、「信頼関係の不在、あるいは不安定さ」です。
「信じたいけど、信じて裏切られるのが怖い」
つらいことですが、教員は、そんな心の葛藤を試される対象になっているととらえなければなりません。

イラストAC

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