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暴言を吐く子、暴れる子へのケア

2019/11/5

クラスの環境に慣れ自己主張をしだす子や、保育園や幼稚園時代と違い、自由にやりたいことができない環境に我慢の限界が来てしまう子も出てくる、小一の11月。もしかしたら、暴言を吐いたり、暴れる子もいるかもしれません。そんな「気になる子」について、特別支援教育の視点から南先生に解説していただきます。

執筆/岡山県公立小学校・南惠介

その子を取り巻く環境を観察する

「暴言を吐く子」や「暴れる子」への対応の仕方に悩んでいる先生方の相談に乗ることがしばしばあります。通常学級の中での特別支援という観点から考えると、「個への視点」と「集団への視点」が必要になります。

また、先生や友達などの周囲とのつながり方について考えていく必要もあります。特効薬のようなものはないかもしれませんが、それでも考えられる手立てはいくつもあります。ここでは、少しずつ前に進んでいくための、いくつかの考え方やヒントを提案したいと思います。

個への視点

「暴言を吐いた」「暴れた」時に、どう対応すればよいのでしょうか。「暴れる子」への対応を中心に、基本的な流れと考え方を提示します。

まず癒やすことを考えよう

暴れているのに、興奮して泣いている子はいませんか。そもそもその状態は、パニックになって「SOS」が出ている状態だと判断したほうがよいと思います。

精神的にいっぱいいっぱいになっているのに、叱責したり、「どうしてこんなことをしたの?」と問い詰めたりすることが、有効に働くとは思えません。まずは、落ち着いて子どもの話を聞くというスタンスで関わりましょう。「困っていたんだねえ」「腹が立ったんだねえ」と、柔らかく柔らかく対応します。そうすることで、少しずつ安心できた子どもは、やっと自分の気持ちや、状況を説明できる状態になるのです。

子どもを癒してあげましょう

その子の理由を明確にする

次に状況を説明してもらいます。まだ興奮状態が続いていれば、できるだけ「そうなの?」「つらかったね」というふうに、自分の考えや感情は挟まず、ひたすらその説明を聞き続けるようにします。その中で、事実関係がはっきりしないことは、確認しておきましょう。時間・場所・相手・状況(前後も含めて)・何が起こってどうなったかなどを聞くとよいでしょう。

この時、単に事件を解決するという視点だけでなく、後から保護者に説明するとしたらどうするかという視点を必ず持っておきましょう。

基本的には、傾聴するという姿勢、引き出すという姿勢が大切なのですが、昔話にはできるだけ乗らないようにします。時に、「幼稚園の時に・・・」とか「保育園の時にこういうことがあって・・・」というようなマイナスの記憶を激しく話し始めることがありますが、問題を複雑にしてしまうことが多いです。つい聞き込んでしまったら、「ごめんね。今の話に戻してもいい? ○○のときのことをもう少しくわしく知りたいんだけど・・・」と今回のことにフォーカスした話に戻します。

客観的な視点を持たせる

①できるだけ客観的な事実を把握する

一年生は発達段階として、まだ「相手の気持ちになること」は難しいと思います。まして「特性がある」と言われる「教室のあの子」なら、尚更です。

また、自分の行動やできごとを、かなり「主観的」に見て、認識している可能性があります。そこで、客観的な事実をできるだけ探るために、被害を被った子、一緒にトラブルを起こした子、そのまわりで見ていた子の話を別々に聞きましょう。別教室で聞くのが難しければ、全体に指示を出して教室の一番後ろで聞いてもよいと思います。

別室で優しく話を聞いてあげましょう

ただし、周囲の子には期待しすぎないこと。左右の視野が成人は150度程度なのに対して、6歳児は90度程度だと言われており、一年生は物理的に見える範囲が狭いのです。トラブルがおこったすぐ横にいても気づいていないことは多々あります。

②事実を突き合わせる

他の子の話を聞きながら、客観的な事実らしきものが浮かび上がってきたら、それをもとに、再度「あの子」と話をしてみましょう。

まずは、「あの子」が語ったことを中心に「確認」します。その上で、「先生、いろいろ話を聞いたんだけど、これって○○だったんじゃない?」と、水を向けて聞いてみます。「そうだ」と言うかもしれませんし、「いや、違う」と言うかもしれません。できるだけ、先生が考える事実に近づけたいのですが、無理はしなくてもよいと思います。無理をして、「こうだったでしょ?」とか「こうに決まっている」と決めつけられ、納得しないまま「だから謝りなさい」と言われて、後々トラブルが大きくなることがしばしばあります。

できるだけ事実をはっきりさせましょう。しかし、本人たちが納得できるようにしましょう。どうしてもはっきりしない場合は、「どちらの言うこともわかるけど、この部分だけは、話がかみ合わないから先生には本当のことがわからない」という結論を出すこともあります。

③「どうすればよかったのか」を教える

「いけません」と言われても、では次はこうしようと考えられる子は、実はそれほど多くはないと感じています。「次にこういうことがあったら、こうしたらよいんだよ」と具体的な方法を示すことで、同じ行動は繰り返しづらくなります。

例えば、腹が立ったら手を出すかわりに「いやだ!」と言う。汚い言葉を使ってしまいそうになったら、「それは、悲しいよ」と言う。そう伝えます。

その子ができるように具体的な行動や言葉を教えましょう。そして、できるようになったら、「それでいいんだよ」と確認することがとても大切なのです。「どちらが悪い」という話にしばしばなるのですが、私は下のような図と直線を使います。図でできごととお互いの関係を示した上で、「○○くんは、10のうちどれくらい悪い?」と聞きます。こうして、どちらか一方だけが悪いのではないという結論を導き出し、納得させるのです。

視覚的に表現して、事柄を整理しましょう

④「兆し」は、必ずある

「突然」に見えるその行動も、実はその原因となる「兆し」があります。しかしそのできごとまで先生が「その兆しを見ていない」ことは、多々あります。

気になるあの子を1時間に何回見ていますか? 何回、目を合わせて笑っていますか? それだけでも、大きな問題になる前に収まることがあることを知っておきましょう。

⑤「事件」が起こりづらい状態にしておく

不安や緊張、そして、自尊感情の低さが「あの子」の「暴言」や「暴れる」という行動を引き出している可能性があります。やることをはっきりさせる。見通しを持たせる。視覚情報をたくさん提示しないなど、いろいろな方法で不安や緊張を日常から取り除いていきましょう。そして、たくさんほめて、かわいがって「あなたは大切な存在なんだよ」と感じさせましょう。

また、周囲の子どもに対する日常的な価値付けも大切です。

時に「あの子」は周囲の子に対する不信感を持っていることがあります。「○○くんが、君のためにこんなことをしてくれたよ」「△△さんは、いつも君に優しいね」と日常的にプラスの価値付けをしていきましょう。

「A君が君のためにこんなことしてくれたよ」

そうすることでトラブルは減っていきます。いわゆる「キレる子」だけでなく、勝ちたい、主導権を握りたい(自分のストーリーで動けるので、見通しが立ちやすい)がためにトラブルを起こす子がいます。そういうケースでは、教師の毅然とした態度が必要です。

叱責は「あの子」に対してはできるだけ避けたい方法ではありますが、それでも大きなトラブルに発展して、結果的にその子が傷つくなら、叱るべきだと思います。ただし、大きな声で叱ったとき、その内容はその子の頭にはあまり残っていません(視覚イメージが優先されるようです)。後から、何が悪かったのか、どうしてほしいのかを丁寧に説明したほうがよいでしょう。

また、「叱ってくれる=関わってくれる」から同じ行動を繰り返してしまう子がいるということも理解しておきましょう。そういう場合は上手にスルーし、その反対の「良い行動」に積極的に関わっていくのです。

集団への視点

ルールの明示

何をしたらよいか。何をしたらいけないのか。子どもにわかる言葉や具体像を把握させているでしょうか。

教室の中で許さないルールをもう一度確認しておきましょう。明確でない場合は、学期の途中であれ、何度も確認しておく必要があります。ただし、あれもこれもとたくさんのルールを設定してはいけません。子どもは、「訳がわからないことは聞かない」のです。

ダブルスタンダードを可能にする方法

最初に、「優しく話を聞く」と書きました。ただし、これは全体が見ている場では使えません。「あれが許されるんなら、ぼくも」と、そもそもの「学級のルール」が曖昧になってしまいます。曖昧な状態は、実は「あの子」にとっても苦しいし、学級そのものが崩れる原因にもなります。

そこで、次のような方法を使います。

厳しい顔で、当事者に近づき、「別室で話を聞きます」と言って、他の子に見えない場所に連れていく(当然、教室には誰か他の大人がいるようにしておく)。

別室に呼んで、穏やかな表情と話し方で受容的に話を聞く。こうすることで、当事者の「あの子」も、周囲の子も納得することが多いようです。

別室で優しく話を聞いてあげましょう

そもそも問題が起こりづらくなる「場」

机イスの配置は大切です。トラブルが起きやすい配置は変えましょう。優しい子が隣にいる時に落ち着く場合もあれば、頼りになる子が隣にいるときに落ち着く場合もあります。可能な範囲で試してみるとよいでしょう。

失敗や負けを許す教室の文化も大切です。子どもの失敗を認めると同時に、先生自身が失敗しても、笑ってもう一度挑戦しているという姿を見せましょう。授業では、やることがはっきりわかり、たくさん活動がある授業、楽しく友達と関わることができる授業をできるだけつくっていきましょう。

保護者への連絡

一年生の場合は、本人や集団への対応以上に、保護者への対応に心を配る必要があります。学校から見ると、「こんなことはわかるだろう」と思えることでも、保護者には学校の様子はほとんど見えません。詳しく丁寧に、そして誠実にトラブルの内容を説明しましょう。

保護者への伝え方

この保護者への連絡の時に、前述のように事前に子どもたちからしっかりと状況を聞いておいたことが役に立つのです。

そして、わからないことはわからないとはっきり言うことが大切です。その上で、次回に向けての改善点や対応策も話ができるようにしておくとよいでしょう。

最後になりましたが、「あの子」のことを、自分に置き換えて考えていただきたいのです。嫌なことがずっと続き、「自分なんてだめだ」と自信を失いイライラしている時に、さらに嫌なことが起これば、キレそうになることもあれば、暴言を吐きそうになることもありませんか?

叱責されるよりは、嫌な状況をできるだけ取り除き、よく話を聞いてほしいと思いませんか? そうしてもらうことで、次はなんとかしようと思えるのではないでしょうか。

教室の「あの子」もきっと同じなのです。しばしば、生徒指導と特別支援が関連づけて考えられることがあります。もちろん、現実的にそういう視点が必要な場合がないとは言いませんが、「生徒指導=特別支援」と捉えていただきたくないと私自身は考えています。「あの子」が必ずしもトラブルを起こすわけではありません。周囲の環境や関わりで、「あの子」がトラブルメーカーから、ヒーローやヒロインに変わることも、よくあることなのですから。

イラスト/大橋明子

『小一教育技術』2016年11月号より

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