校外学習を成功させるために先生が把握しておきたいこと|2月【特別支援学級の学級経営】
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- 特別支援学級の学級経営
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文部科学省からは、すべての新任教員が10年以内に特別支援教育を複数年経験するよう努めるように通知が出されています。特別支援の知識や経験が乏しいまま、手探りで特別支援学級を担任している先生も多いことでしょう。この記事では特別支援学級でよくあるケースを挙げて、その道の専門家がポイント解説します。今回は校外学習についてのお話です。
構成・執筆/兵庫県公立小学校校長・公認心理師・特別支援教育士スーパーバイザー 関田聖和
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目次
登場人物
皆川先生:自閉情緒クラス担当。教師生活25年のベテラン。特別支援学級主任・特別支援教育コーディネーター
島原先生:知的クラス1担当。教師8年目。特別支援学級担任1年目
根本先生:知的クラス2担当。教師3年目。特別支援学級担任2年目
しゅんたさん:皆川先生担当。独特な自分の世界をもっていて、彼なりのルールがある。他人とは打ち解けるまでにかなり時間がかかる。粘土や工作などは緻密で動物などは本物そっくり、大人顔負けの作品を作りあげる。
長期目標:同じクラスの友だちといっしょに作品作りをすることができる
短期目標1:大人といっしょに作品作りをすることができる
短期目標2:動物が入る作品作りでは、同じテーマの友だちの作品と並べて展示することができる
短期目標3:5分間程度、同じクラスの友だちといっしょに作品作りをすることができる
るなさん:島原先生担当。よく動く。出し抜けにしゃべる。思いついたことをすぐに伝えてしまう。言わないでいいことまで言ってしまうことがある。発想が豊か。次から次へと案が浮かぶ。
長期目標:会話のキャッチボールを楽しむことができる
短期目標1:先生としりとりなどの遊びに取り組むことができる
短期目標2:会話の中で質問されて、はい、いいえの答えを返すことができる
短期目標3:「朝ごはんは何を食べたの?」などの簡単な質問を受け、同じ質問を返すことができる
ゆうかさん:根本先生担当。不注意。衝動性が高い。よく忘れてしまう。様々なことが気になってしまい、失敗することが多い。いろいろなことに気が付いてくれるので、友だちが忘れていたことを思い出してくれるようなことがある。
長期目標:タブレットで記録を取ることができる
短期目標1:タブレットで必要な事柄を写真に撮ることができる
短期目標2:タブレットで文字を書いたり入力したりすることができる
短期目標3:タブレットで毎日の連絡帳などを写真に撮ったり文字を書いたり入力したりすることができる
2月のとある日の教員室での会話
(島原先生)
もうすぐ、みんなが出展した作品展の見学ですね。これが今年度最後の校外学習。自分の作品を改めて見たら、どんな感想をもつんでしょうね。
(皆川先生)
教育作品展の見学計画の作成、ありがとうございます。付き添いの大人の方は、どれぐらい来てくれそうなの?
(根本先生)
保護者は6名、コミュニティースクールから3名、そして校長先生の計10名の支援者が来てくれそうです。幸いなことに、福祉乗車証を使っていくつかの交通機関は付き添いの方も無料で行けそうですが、そうでない交通機関は、個々に負担してもらうことになります。
(皆川先生)
下見でいろいろ確認できたけど、万が一もあるからね。それぞれの持ち物を確認しておきましょうね。
校外学習は、子どもたちにとって楽しい行事のひとつです。でも学校外での活動は、想定しない出来事に遭遇してしまうこともあります。準備を万端にして、臨みたいものです。
【POINT1】支援者との共通理解
保護者もいっしょについてきてくれるような校外学習であるならば、安心です。昨今では、学校運営協議会が先導し、校外学習ボランティアなどが引率しているところもあるようです。支援者となる大人の方とは、保護者の同意を得たうえで、できるだけの情報共有をしましょう。共有しておきたい事柄として以下のことが挙げられます。
・特性のこと
・アレルギー
・興味のあること
・能力の強い面、弱い面
・好きなこと
・NGなこと
また、教師の係分担も共有しておくといいでしょう。誰が交通機関に連絡し、乗車券などの手配を行うのか。時刻表を見て、いつ乗車するのか。万が一、乗り遅れた場合はどうすればよいのかなどを事前に打ち合わせておくとよいでしょう。
【POINT2】時程は、ゆったりめに計画する
子どもの特性にもよりますが、校外学習では少し余裕のある行程が望ましいです。自宅や学校外の環境は、子どもたちにとって刺激が強いものもあることでしょう。普段ならば、家族だけのお出かけなのに、友だちや先生が一緒となると、テンションが上がってしまう子もいます。そうすると、今までできていたようなことができなかったり、思いもよらないものに執着してしまい、動けなくなったりということもあるからです。当日の調整も見越しておきながら、あまりプログラムを詰めすぎないようにすることも必要でしょう。
宿泊行事でのことですが、朝、昼、夜と1つずつプログラムを設定してしまい、準備不足などもあり、昼のプログラムが夜に延長してしまったというのを聞いたことがあります。
予定していたことができなかったために、パニックを起こしてしまう子ども。楽しすぎて、興奮が抑えにくい子ども。校外学習は、普段のルーティーンができない非日常です。いつもよりも緊張度やストレス度が高い場合もあります。だからこそ、計画にはゆとりをもちたいものです。
【POINT3】新しい一面を観察する
非日常でしか見せない表情であったり、楽しいことに一生懸命に取り組んでいる姿であったりと、校外学習ではその子どもの違った姿を見ることができるかもしれません。
給食ではグリンピースを激しく嫌がって食べない子が、お店では調理されたグリンピースをちゃんと食べている姿を見て、私も驚いた経験があります。その子の新しい一面をたくさん発見して、次への成長のきっかけにできるといいですね。
(島原先生)
お昼ご飯は、現地のフードコートに分かれて食べる予定にしています。
(皆川先生)
子どもたち、楽しみにしているもんね。私も何を食べようかなあ。
(根本先生)
皆川先生、ステーキランチでよろしくお願いします!
(皆川先生)
それは、どういうことかしら……(笑)
いかがでしたか。校外学習は楽しみにしている子が多い反面、いつもとは違う環境で何が起こるかわかりません。下見や打ち合わせなど事前準備を念入りにして、当日は余裕をもたせたスケジュールで臨みたいですね。「専手必笑」(専門的な手立てで必ずみんなが笑顔になれる)を常に意識して取り組みましょう。
イラスト/terumi