小学国語「構造的板書」の工夫とコツ(詩の楽しみ方を見つけよう/五・七・五で表そう)
スッキリした分かりやすい構成で、子どもたちに伝わりやすい板書の書き方を目指す本シリーズ。今回は、小五の国語の「詩の楽しみ方を見つけよう」「五・七・五で表そう」をテーマに、子供の発言から授業を組み立てるスキルや、他者評価から自己評価を意識できるようにする構造的板書について解説します。
執筆/ 大阪府公立小学校教諭 ・樋口綾香
目次
国語スキル1:子供の発言から授業を組み立てる
授業の導入を想像してみてください。教材名や学習課題を確認したあと、課題解決のための方法を考えさせることがあります。このとき、子供に大きな問いを投げかけ、意見を出させる、というのはよくある授業の導入です。しかし、その後の授業に子供から出た意見は使われず、先生が用意した答えと活動で授業が進んでいく、という授業を目にすることがあります。果たして、あの問いは何のためにあったのか、と後で不思議に思うのは、参観している教師だけではありません。きっと子供も感じているでしょう。
問いに対する子供の意見を黒板に残し、それらを使って授業の流れを組み立てる、子供の思考に寄り添いながら、スタートからゴールまでブレない授業をするための構造的板書を紹介します。
「詩の楽しみ方を見つけよう」(光村図書五年)
学習の流れ
①「めあてを全員で読みましょう」
めあてを読み、ポエムトークについて知る(ポエムトークはブックトークのポエム版として行います。教科書の詩から1つまたは2つ選び、どのような詩の楽しみ方をしたのかと、自分が詩から感じたことを紹介します)。
②「詩の楽しみ方には、どんな方法がありますか? これまでの学習を思い出してみましょう」
これまでの学習を振り返り、詩の楽しみ方にはどんな方法があるか、考える。
③「たくさんの意見が出ました。(板書の)①.④は必ずしましょう。みんなが一人一人違った詩の楽しみ方をできればとても味わい深くなるので、その他は自分に合うものを選択します」
これは絶対にしてほしいという楽しみ方の優先順位を伝えます。紹介するときを想定して、絵に表したい子や劇をしたいという子も出てきますが、それも自由に考えさせるとよいでしょう。
④「では、教科書にある『耳』の詩をみんなで楽しみましょう。まず、①の視写から始めます」
国語スキル2:他者評価から自己評価を意識できる構造的板書
国語授業の中で、言葉による見方・考え方を働かせて、言葉の力をつけていくことは、最重要事項です。しかし、これを毎時間きちんと意識して授業を行っているでしょうか。毎時間、評価ができているでしょうか。子供たち自身は、授業のどこで、どんな内容を、どのように評価されているか、分かっているでしょうか。授業の中で、「ここが大事なんだ」と子供自身が意識することは、より言葉による見方・考え方を働かせることにつながります。また、主体的な態度で表現を工夫する姿にも出会えるでしょう。
私たち教師は、板書をするとき学習の中で目標としていることや評価する点を子供に意識づけるように書き、それらを授業の中で子供たち自身が使えるようにします。子供たち一人一人が自分のゴールを意識でき、国語力を高めていけるように板書を工夫しましょう。
「五・七・五で表そう」(東京書籍五年)
学習の流れ
①「めあてを全員で読みましょう」
めあてを読むだけで、あるテレビ番組について知っていることを言いたい子が多くいると考えられます。「『才能あり』がどういうことか説明できる人?」と問い、めあてを深めていきましょう。
②「『才能あり』の条件、どんな内容がいいと思いますか」「教科書を読んで、俳句を書いた人の感動を伝えるための工夫を考えましょう」
まずは、子供たちが、どのような俳句をよい俳句だと感じているかを出し合います。「季語が入っている」や「言葉の重なりがない」など、これまでの学習を振り返って考えていれば、板書しましょう。
③「『才能あり』の条件をノートに写しましょう」
これは、相手を評価するための条件、つまり他者評価の項目ですが、自分自身が俳句を作るときにも役立ちます。常に自己評価を意識できるようにノートに写させましょう。
④「では、先生が書いた句を紹介します。これは『才能あり』ですか?」
先生が書いた句を提示し、子供たちと「才能あり」の条件に当てはまるかどうか検討します。
『小五教育技術』2019年1月号より