子供のよさを取り上げ、よりよい成長を促す「通知表の所見」の書き方【主体的に生きる力を育む学級経営の極意⑮】


子供たちが多様な他者と関わりながら社会につながり、主体的に生きる力を育んでいくために、教師はどのような学級経営をしていけばよいのでしょうか。学級経営・特別活動を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に学級経営の本流を踏まえて基礎基本を解説します。第15回は、「通知表の所見」の書き方について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章
「通知表の所見」は、教師と保護者が子供のよりよい成長を促すために理解を深める大切な評価資料です。所見作成上の留意点やよりよい所見を作成するための手順を踏まえて作成することが大切です。また、保護者が、子供の生活や学習への意欲を高めていこうと感じるような文章を作成することが基盤となります。「通知表の所見」の特質を踏まえ、「資料収集上の留意点」「所見作成上の配慮点」「課題のある子供の所見」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 資料収集上の留意点
所見の記入は、学級担任だけの主観とならないようにすることが大切です。そのために、より多くの教師から多様な情報を収集することが求められます。
また、学級担任の取り上げた子供のよさと、本人が努力したと考えている内容が大きく異なる場合には、よい所見とはなり得ません。子供の自己評価や諸検査・日記や作文、子供の相互評価も効果的に取り入れ、適切に評価資料を収集できるようにしていきましょう。
適切な評価資料の収集に努めます
子供の多様なよさを取り上げるには、学級担任だけでなく、同学年や他学年の教師からの情報、養護教諭やクラブ活動・委員会活動の担当教師、教科担当の教師等、様々な教師からも情報を得るように努めることが大切です。また、子供の多様なよさを見取るには、授業での様子だけでなく、当番の仕事や係活動など、多様な学校生活の様子を把握するように努めていきましょう。

CHECK② 所見作成上の配慮点
多くの子供の所見を作成していくと、誰でもミスが出てしまうことがあります。そのため、学年等で互審会を行い、管理職を含めた多くの目で検閲していくことが求められます。よりよい「通知表の所見」を作成するために、次のような視点について配慮していきましょう。
①文章表記は、子供向けでなく、保護者向けの表現にします。
②専門用語は避け、わかりやすい平易な文章表現にします。
③他との比較ではなく、その子なりのよさを取り上げます。
④課題点の記載には十分配慮し、次への意欲を高めるようにします。
⑤課題点は、教師の指導不足ととらえ、子供や保護者の責任にしないようにします。
⑥学級担任の主観で、独断や偏見とならないようにします。
⑦誤字や脱字、文章の主述のゆがみ等がないようにします。
よい所見を作成する手法を確認します
よい所見にするためには、次のような手順で文章を再考し、校正していくことが求められます。
①事実としての「よさ」を取り上げる。 (例)「清掃によく取り組んでいました。」
よい所見にするために→
②「具体的な事実」を取り上げる。 (例)「進んで雑巾がけを行い、後片付けも責任をもって成し遂げていました。」
さらによい所見にするために→
③事実だけでなく「教師の考え」も盛り込む。 (例)「進んで雑巾がけを行い、後片付けも責任をもって成し遂げる姿は、クラスの模範となり感心しました。」
CHECK③ 課題のある子供の所見
課題のある子供の所見を書く際は、次のような視点をもつことが大切です。
①課題は、最小限の記載とし、その子なりのよさを中心に取り上げます。
②課題は、今後学校と家庭で共に取り組んでいきたいことを伝えます。
③課題は、その子の以前の状況から進歩している様子を伝えることを主とします。
④課題に向けた努力により、その子に内在する力が発揮できるように記載します。
課題については今後の励みとなるように記載します
課題の記載は、次の例文のように、今後の励みとなるように記載していきましょう。
「落ち着いて学習しようとする場面が増え、文字を丁寧に書く姿が印象的でした。」
「友達とのトラブルも、その都度、改善できるようになり、大きな成長を感じます。」
「音読発表会では、事前の練習を重ね、堂々と発表できるようになり感心しました。」

イラスト/町田ねる(イラストメーカーズ)