夏休み直前! 失敗しない1学期「学級納め」完全ガイド
夏休み直前、教師がやっておくべきことは!? この時期に意識しておきたい「大切なこと」から、「1学期最終日の完全シナリオ」まで、安心して夏休みを迎えるためのポイントを伝授! 保護者にも伝わるプリントや手紙類の確実な配付の仕方、やる気になる宿題の出し方、通知表を渡すときのポイント、夏休み明けの始業日がラクになる大掃除から隙間時間におすすめのレクまで、すぐに実践できる内容が盛りだくさん。終わり良ければ全て良し、子供たちと気持ちよく1学期を納めましょう。(ダウンロードして使えるワークシート付き)
執筆/埼玉県公立小学校教諭・紺野悟
目次
1.いよいよ夏休み! となる前に大切な2つのこと
もうすぐ夏休み。この時期になるとテストが増えたり、単元を終えなくてはいけないので授業がどんどん進んだり、梅雨で中止になった水泳授業があったりと、結構忙しい時期です。また、先生も子供たちも、夏休みが頭にチラついてきます。「ああ、夏休みは沖縄かあ」と、ちょっと上の空の子もいるものです。「先生は夏休みはどこへ行くの?」なんて聞かれることもあるでしょう。そんな子供たちの頭の中は「あと◯日!」とカウントダウンが始まっています(……と書いている筆者もちょっとちらついています笑)。
そこで夏休み前の指導にあたる際に、理解しておきたいことが2点あります。
①ギャップがあることを理解する
上記のように、夏休みへ向けて終えなくてはいけない学習内容を進めたい先生と、やる気の上がらない子供たち。焦っている先生と、ワクワクしている子供たち……と、教師と子供の思考にギャップがあることを理解しましょう。そうでないと、先生はイライラが募るだけです。ギャップがあることを理解した上で、子供たちに関わっていきましょう。
②楽しみな気持ちも理解する
夏休みを楽しみに思うことは決して悪いことではありませんが、楽しみに思うがあまりに大切なことを疎かにしてはいけないということです。今までできていた提出物が疎かになるとか、習字を適当な字で書くようになるとか、これまで指導対象にしていたことであれば、どんなに忙しくても向き合わないといけないのです。「楽しみだからこそ、ここを超えていこう」という気持ちで、学級にもうひと伸びを期待したいものです。
2.夏休み前に意識すること
①全員がワクワクしているわけではない〈配慮の側面から〉
学級の中には、様々な理由で「夏休みはずっと家に居てやることがない」「どこにも行かない」という子もいます。楽しみで楽しみでしかたのない子もいるし、学校がある方がやることがあっていいと思っている子もいる。このことを、教師である私たちは忘れてはいけません。
つまり、「夏休みは何が楽しみ?」という話題で教室で盛り上がることは危険かもしれない、ということです。子供たち同士ならまだしも、教師の側が「楽しみなことがある」前提で子供に質問することは、子供たちへの気遣いのなさを露呈させてしまいます。
私があえて質問するなら、「夏休みに食べたいものは?」と聞きます。すると、普段家で食べる「そうめん」でも、沖縄で食べようと持っている「ゴーヤーチャンプルー」でも、キャンプで食べる「スイカ」でもいいわけです。学級の子供たちと会話を楽しみつつ、「不用意な質問が一部の子に嫌な思いをさせてしまうかもしれない」ということは、夏休み前に限ったことではなく、常に気を付けておかなくてはなりません。
《話題にするならこんなことを!》
・夏休み、いつまでに宿題を終えたい?
・夏休みに食べたいものは?
・今年の夏、1日好きなことができるならどこにいく?
②指導を早めに行う〈生徒指導の側面から〉
夏休み前日を指導で終わるのは、どうしても気持ちを暗くさせます。学級全体に伝えなくてはいけない指導事項があるなら、できるだけ早く伝えるほうがいいでしょう。7月の頭に時間を取って指導し、改善を促進し、できてきたことを承認する。そして良くなってきたことを子供たちが自覚した状態で、夏休みを迎えることができるからです。
例えば、担任ではない先生の授業で、授業中に私語が多くて集中できないという問題があるとします。よくある問題ですが、こうした問題を「いじめではないし、ひとまずこのままにして、指導は夏休み明けに……」と後回しにしてはいけません。
まずは、授業を担当する先生に様子を聞きます。そして、言ってきた子に「誰がどんな時に、何を話しているのか」を聞きます。できるなら、実際の状況を自分の目で見に行きます。その上で指導をします。指導は教科の担当の先生が行うか、担任が行うかは要相談。こうした指導に時間をかけることを疎かにしてはいけません。鉄は熱いうちに打て。まさにその通りです。
③「おさめる」意識を育てる〈心構えの側面から〉
「環境が人を育てる」と言います。その場の環境は、人の心も整えてくれます。2学期制にしろ、3学期制にしろ、夏休みまでの学びや成長を振り返る終業式(またはそれに変わる会)が、どの学校にもあります。通知表があれば、個人の成長に関しては通知表がその役割を果たします。なければ、振り返りや他者評価で、それぞれの4ヶ月間を言葉にすることが大切です。
また、環境を整えることも大切です。私の学級では、最後の授業に大掃除を行います。これには、環境を整えることだけでなく、学期納めの感覚を育んでほしいという願いがあります。その際に、夏休み明けに宿題を出す場所を設置したり、提出物を黒板に書いたりし、夏休み明けの自分たちのための準備を行います。そして、机、椅子も綺麗に拭いて、綺麗に整えて、ドアをみんなで閉めて、「次に来るのは1ヶ月後!」という気持ちを育むことができます。
このように、夏休みを迎えるにあたって、心構えを育て、指導事項を逃さず指導し、様々な子供たちがいることを意識しながら配慮を怠らない。それが夏休み前の心構えなのです。
3.「夏休み前最終日」のシナリオ
それではここからは、私が考えた「夏休み前最終日」のシナリオを紹介していきましょう。ぜひ参考にしてください。
《1時間目》 宿題と手紙の説明を確実に行う
まず始めに、終業式からクラスに帰ってきたら、プリントや手紙類の配付を先に行います。不足がないか確認するため、そして大事な内容を確実に子供たちに伝えるためです。実際の流れで見ていきましょう。
①全てのプリント、手紙類を配付(10分)
「今から、全ての配付物を配ります。手紙がたくさんありますので、机の右側に重ねていくように順番に置いてください。足りなかったり、わからないことは、配付した後に聞きますので、今は確実に配るということだけに集中してください」
*このように指示をしてから全ての配付物を配ります。夏休み前の手紙は多いので、ここで止まっていては後がつかえてしまいます。まずは配ることに特化させるのです。
②不足の確認をする(5分)
「静かに確実に配付してくれてありがとう。次は確認作業をしていきます。先生と同じプリントを頭の上にあげてください。全員持っているのを確認して、机の右側に移していきます。プリントがない場合は、教卓にくれば予備が置いてありますから持っていってくださいね。ただし、確認の指示がみんなに聞こえなくなってしまわないように、静かに来てください」
*こうした作業で大切なことは確実性です。配付物が一人残らず全て行き届くようにするには、丁寧でわかりやすい説明とフォローが重要です。ここで確認を疎かにして進めてしまうと、夏休み中に「何かがない」となった場合、元から配られていなかったから、と教師側の責任になってしまうことがあります。「先生が配っていないんだから届けてください」なんて言われても困ってしまいますよね……。
③手紙の説明(10分)
「赤鉛筆を1本だけ出して、筆箱はしまってください。次に、机の右側に連絡袋を出してください。流れを説明します」(と言って、以下のように板書する)
【名前を書く➡︎内容を説明する➡︎連絡袋に入れる】
「はい、これを1セットにして繰り返していきます。
それではまず、「夏休みの過ごし方」というプリントを出してください。名前を書きましょう。2行目に下線を引きましょう。読んでください。サンハイ!」
子供たち全員:「子供同士で奢ったり、奢られたりしないようにしましょう」
「夏休みだから、というわけではありませんが、夏休みに起きるトラブルの1つがお金のトラブルです。皆さんはまだ働いているわけではありませんから、1円たりとも奢ったり、貸したりすることはしないほうが無難です。こういうことは、自分で働いて稼いでからにしましょう。
では、名前と下線が合っているか、ペアでチェックをして、連絡袋にしまいましょう。時間は15秒! スタート!」
このように、手紙の重要なことを説明したり、夏休みに気をつけてほしい交通事故のことなどの指導も行ったりしながら進めていきます。赤鉛筆で下線が引かれているので、指導済みであることが保護者に伝わるでしょう。
④夏休みの宿題(10分)
「続いて、夏休みの宿題について説明します。宿題は全部で5種類あります。1つ目に自主学習が3ページ分、出ています。皆さん、自主学習ノートを開いてください。」
【全員開いたことを確認】
「右上に「夏休みの宿題1ページ目」と書きましょう。いつやるか、予定日も書きましょう。右側に実際の日付を記入する欄を設けておきましょう」
このように、3ページ目まで予定を書かせてしまいます。すると、いつどこまでやれば良いのかがはっきりします。何より、夏休みに突入して「よし宿題をやろう!」となってから、「何が何ページだったっけ?」と、始めるまでのハードルが高くなってしまうのを防げます。夏休みドリルを使わないで自主学習のような宿題とする場合は、このように事前の指導を丁寧に行うことで、取り組み始めるまでのハードルを少しだけ下げることができます。
⑤帰りの用意(5分)
「ここまでで、伝えることは終わりました。1時間目ですが、帰りの用意をしてしまいます。今配ったものが入っている連絡袋、画用紙、その他学校で持ち帰ることになっているものを全て、ランドセルに入れましょう。そうすることで、あとは持って帰るだけの状態にしますよ。時間は5分です。はい、どうぞ!」
このように、流れの中で準備まで完了させられると、時間的に余裕ができます。残った時間はちょっとしたレクリエーションにあてることもできますし、早めに通知表を配付することもできます。何よりも、前もって帰りの準備を済ませておくことは、心の余裕をもたらしてくれます。
⑥ちょっとした隙間時間におすすめレク(残りの時間)
●「拍手リレー」とそのアレンジ
「みんながよく聞いて、素早い行動をしてくれたので、時間が余りました。少しレクリエーションをします。4月を思い出してください。拍手リレーをたくさんしたのを覚えていますか? あの時、最高記録はいくつでしたか? さあ、4ヶ月経った今、何秒を叩き出せるでしょうか? めざせ〇〇秒! 始めます」
【1回目取り組む】※必要に応じて、4月に提示したスライドも提示します。
丸くなってやってみる、一列になってやってみる、目を瞑ってやってみる。足でやってみるなどアレンジを加えていきます。
4月に行った「拍手リレー」のやり方はこちら!
失敗しない新学年スタート「1日目」の完全シナリオ《2時間目》 – 紺野悟
《2時間目》 通知表を配付する
通知表の配付は、一人一人と対話しながら渡していきます。そうすると30人学級で1人1分だとしても、30分かかってしまいます。ですから、全員に渡し終わるまで、他の児童にさせることを用意しておかなくてはなりません。
①通知表を渡す前に伝えること
「これから、皆さんに通知表を配付します。通知表は、皆さんの4ヶ月間の頑張りが載っている大切なものです。誰かと比べて見せ合いたい気持ちもわかりますが、見せ合うのはやめておきましょう。あなたとお家の人だけで見てください。
次に、待っている時にやることですが、「先生の通知表」を書いてもらいます。ちなみにそこには、先生の似顔絵を書く欄があります。その似顔絵が、4月に見せたこのスライド(※)です。夏休み明けに、皆さんから集めた似顔絵を見合いますからね。全力で書いてみてください。
何か質問はありますか?
それでは、全員終わるまで静かにお願いしますね」
②渡している時に話すこと
「1学期は楽しかった?」というような大まかな質問は、「楽しかったよ!」と返って来ればいいですが、「あんまり……」という反応だった場合、子供も答えにくいものですし、それに先生のほうも悲しくなりますよね。ですから、このような質問にしておきましょう。
- 今年頑張った科目は何?
- 好きな教科は何?
- テストは思ったように点数取れた?
- 初めて話したのは誰?
- ずっと仲良い子は誰?
- 泳げる距離は伸びた?
- 2学期はどの教科の成績が上がると嬉しい?
このような質問を通して、子供たちが自分自身で「ちょっとよくなった」と思っていることを引き出してあげましょう。
また、評価Cの科目がある子もいます。そういう子には、「あと点数が5点伸びるとBになるよ」と意識を引き上げたり、「課題の提出が1回少なかったよ」のような、Cになった理由を説明したりしておきましょう。評価の理由がわかると、納得はしていなくても理解はできるので、結果的に後々クレームになることを減らすことができます。
《3時間目》 大掃除
①イントロダクション(5分)
「これから大掃除をします。大掃除とは、普段の掃除では時間が足りなくてできないところまで掃除をすることです。例えばどんなところがあるでしょうか」
【子供たちと掃除する場所を話し合う】
「掃除の最後に、2学期の初日の準備もしておこうと思います。夏休みの宿題は何がありますか? 提出する場所、雑巾を集める場所も用意しておきましょう。さて、回収と言っても、どっちの回収が良い回収でしたか?」
【スライドを表示】
「4月に見せた写真ですね。覚えていますか? 今度はみんなで掃除の後に、夏休み明けにみんなが提出するものを素敵に回収できるように準備をしてもらいます」
このように言って、大掃除に取り組みます。大掃除では、子供たちは淡々と、担当の場所、自分の机、椅子を掃除します。最後に、夏休み明けの宿題提出場所を作成します。「揃えて出してね!」などの掲示も子供たちに作ってもらい、掲示しておきます。
4月の記事はこちら!(上記に紹介したスライドを含むパワーポイントのテンプレートがダウンロードできます)
失敗しない新学年スタート「1日目」の完全シナリオ《1時間目》 – 紺野悟
終わりに
以上、夏休み直前の学級納めの進め方について紹介しました。夏休みを迎える前、学級納めをきちんと行おうと思ったら、学級開きの逆に設計するのがポイントです。
ただし、学級開きの時は前日に先生が掃除していたけれど、今度はみんなで行います。そして、学級開きの日と同じレクリエーションを行うけれど、ちょっとアレンジやレベルアップを狙っていきます。こういう点は、発展的に変更することが求められます。提示したスライドも、学級開きの頃のスライドを再度提示することで、確認しながら確実に進めていけるようにします。
つまり、学級納めは「学級開きの逆向き設計」で考えればうまくいくのです。ぜひ参考にして、素敵な学級納めを実現させてください!
今回ご紹介したワークシートを共有します。
ダウンロードしてお使いください!
↓↓↓
執筆者:紺野悟(こんの・さとる)
埼玉の教育サークル clover 代表。イベントを数多く企画・運営し、価値ある教育情報を広めている。共著『全単元・全時間の流れが一目でわかる!社会科 6 年 365 日の板書型指導案』(明治図書出版)他多数。
大好評! 紺野悟先生の『完全シリーズ』はこちらからご覧ください。
●失敗しない新学年スタート「1日目」の完全シナリオ《1時間目》
●失敗しない新学年スタート「1日目」の完全シナリオ《2時間目》
●失敗しない新学年スタート「1日目」の完全シナリオ《3時間目》
●先生のための失敗しない「1回目の授業参観」完全ガイド
●先生のための失敗しない「学級懇談会」完全ガイド
●山場の「魔の6月」を乗り越える!学級メンテナンスの手立て完全ガイド