「コグトレ」でコミュニケーション力を育てよう〔感情のペットボトル〕#14ダウンロードプリント付
14回目の今回は、なぜ感情を表現する必要があるのかを、ペットボトルを使って身体で感じ、感情を表現することの大切さに気付かせる「段階式感情トレーニング」のなかから〔感情のペットボトル〕にチャレンジしましょう。「コグトレ」とは、宮口幸治先生たちが開発した「コグニティブ(認知)機能」に着目したトレーニングのことで、身体面、学習面、社会面の3方面から包括的にトレーニングする特徴があります。本連載では、社会面のトレーニング(認知ソーシャルトレーニング)を基に、感情を上手にコントロールしたり、相手の気持ちを考えたりする、コミュニケーション力を高めるトレーニングを紹介します。ダウンロードプリントを活用して、ぜひ試してみてください。
監修/立命館大学教授・宮口幸治
目次
認知ソーシャルトレーニングとは
コグトレの認知ソーシャルトレーニングは、感情を統制する、危険を予知する、対人スキルを高める、問題を解決するなど、社会で生きる力を養うトレーニングです。以下の表のように「段階式感情トレーニング」「危険予知トレーニング」「対人マナートレーニング」「段階式問題解決トレーニング」など、4つのトレーニングから成り立っています。
今回は、「段階式感情トレーニング」のなかから、〔感情のペットボトル〕を紹介します。
このトレーニングは、ペットボトルを使って子どもたちが実際に体験することで、感情を表現することの大切さを学びます。気持ちをため込むととても重くてつらいことを、感情のシールが貼られたペットボトルを担ぐことで子どもたちに疑似体験をしてもらいます。
〔感情のペットボトル〕にチャレンジする前に、子ども自身がここ数日あるいは1日に感じた感情について簡単に書き出して整理してもらいましょう。
〔感情のペットボトル〕にチャレンジ!
ねらい
なぜ感情を表現する必要があるのかを、ペットボトルを利用して身体を使って感じてもらい、その大切さを学んでもらいます。
進め方
①様々な気持ちを貼ったペットボトルを準備します。500mL4本(水入り):「かなしい」「こわい」「さびしい」「きらい」などネガティブな感情を書いたシールを貼る。
500mL1本(空):「うれしい」と書いたシールを貼る。
2L 1本(水入り):「いかり」と書いたシールを貼る。
② 袋(またはリュックサック)を子どもに担がせ、シールに書かれた感情を読み上げながら、順にペットボトルを袋に入れていきます。
③ すべてのペットボトルを入れたら、「気持ちを出さずにため込むことは、こんなにしんどいことだよ」と伝えます。
④ 次に1本ずつペットボトルを袋から出していきます。続けて「気持ちを出すことで、どんどん楽になります」と伝えます。
⑤ そして、「いかり」のペットボトルを出してみるとどれだけ楽になったかを聞きます。
⑥「 怒りの気持ちは一番しんどいです。だから外に出さないといけません。しかし、『いかり』を出すときにそのペットボトルを相手に投げつけたらどうなるでしょうか?」と尋ねます。
※「いかり」のペットボトルを出すととても楽になることを体感してもらい、「いかり」を抱え込むことが一番つらいことを伝えます。
※「うれしい」のペットボトルは空なので、入っていてもつらくないことも伝えましょう。
授業の進め方
進め方は以下の手順を参考にしてください。※詳しくは『子どもの認知能力をグングン伸ばす!マンガコグトレ入門』(小学館)をご覧ください。
宮口幸治(みやぐちこうじ)
立命館大学教授 一般社団法人日本COG-TR学会代表理事
京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「日本COG-TR学会」を主宰。医学博士、子どものこころ専門医、日本精神神経学会精神科専門医、臨床心理士。著書『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)が大ベストセラーになる。
取材・文・構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ
出典:『社会面のコグトレ 認知ソーシャルトレーニング①段階式感情トレーニング/危険予知トレーニング編』(三輪書店)
著/宮口幸治 ・神島裕子
新書判 192ページ
逆境に苦しんでいる子への支援のヒントが満載
どの親のもとで生まれたかによって子どもの人生が左右される現実をカプセルトイにたとえた「親ガチャ」という言葉。 『ケーキの切れない非行少年たち』の著者と気鋭の哲学者が、全ての人が幸せを追求できる社会のあり方を考えながら、逆境を乗り越えるための心の持ち方、人生を切り開く力のつけ方を、哲学・精神医学・心理学の観点から具体的に提唱する。
『子どもの認知能力をグングン伸ばす! マンガコグトレ入門』(小学館)
著/宮口幸治
A5判 224ページ
教室を舞台にしたマンガでコグトレの進め方を楽しく具体的に紹介しています。「コグトレを取り入れたいけれど、何からどのように始めたらよいかわからない」という方にもピッタリの1冊です。「コグトレ」の代表的な50種のトレーニングのねらいや進め方・ポイントなどを、マンガを交えてやさしく解説。紹介する課題のワークシートはすべてダウンロード可能。