鉄棒で逆さ感覚を高めるのに、一番いい教材は何? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #52】
鉄棒運動では、逆さ感覚や回転感覚、振動感覚、体の締めの感覚などを高めることがねらえます。この中の逆さ感覚を高め、その後の鉄棒運動の技につながる要素も多い鉄棒遊び教材の「ふとんほし」を紹介します。ふとんほしとは、腰で鉄棒にぶら下がる逆さま姿勢の技です。ふとんほしは様々な運動につながる逆さ感覚を高めるだけでなく、体育班を活用した友達同士のお手伝いを取り入れやすい教材でもあります。友達同士のかかわりを取り入れながら、大切な基礎感覚である逆さ感覚を高めていきましょう。
執筆/新潟県公立小学校教諭・竹松 譲
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川 譲
目次
Ⅰ.ふとんほしにチャレンジ!
1.ふとんほしの行い方
①つばめの姿勢から、前回り下りの要領で上体をゆっくり前に倒す。
②股関節(足のつけ根)の位置に引っかけるようにして、力を抜いて鉄棒にぶら下がる。
※膝を曲げて、腿とお腹を近づけるようにすることで、鉄棒に引っかけやすくなる。
2.ふとんほしでのお手伝いの行い方
①ふとんほしをする子の横に立つ。
②鉄棒の下からふとんほしになっている子の背中に手をあてる。
③背中とすね付近を持って支える。
④大きな声で5秒(できるようになったら10秒)数える。
はじめは、両手で鉄棒を握った姿勢で5〜10秒程度ぶら下がり、前回り下りで下りるようにします。4人程度の体育班で子ども同士のお手伝いを取り入れて、かかわり合いを促していくとよいでしょう。
両手で鉄棒を握って10秒ぶら下がれたら、片手で鉄棒を握った姿勢でふとんほしに取り組ませます。最終的には両手を離してぶら下がれるようになることを目標として運動を行わせましょう。
上体を前に倒して、頭を鉄棒より下げることができない子どもに対しては、前号で紹介した前回り下り同様に、教師が鉄棒を挟んだ横に立ち、子どもが鉄棒から手を離さないように声かけし、胸を支持しながら上体を前に倒すように補助します。
Ⅱ.慣れてきたら、じゃんけんを取り入れて楽しみましょう
1.「ふとんほしじゃんけん」をやってみよう
基礎感覚を高めるためには、できた運動を何度も繰り返して、体に染み込ませることが大切です。そこで、同じ運動の繰り返しで子どもが飽きないように、じゃんけんを取り入れたゲーム化で、子どもが楽しく基礎感覚を高められるようにしていきましょう。
半数以上の子が両手を離したふとんほしができるようになってきたら、体育班対抗でじゃんけんを取り入れることができます。
両手を離すことが心配な子がいても、はじめは「片手は鉄棒を握ってもOK」「両手で鉄棒を握って口じゃんけんでもOK」など、どの子も安心して楽しみながら運動に取り組めるようにするとよいでしょう。
方法1:勝ち抜き戦方式
<行い方>
① 鉄棒1欄※で2人が同時にふとんほしの姿勢になったら、隣の子(相手の体育班)とじゃんけんをする。
※欄は鉄棒を数える単位です。
② 勝った子は、ふとんほしのまま、鉄棒に残り、次の相手ともじゃんけんをする。
③ 負けた子は、次の子と交代する。
④ 3人勝ち抜いたら、チャンピオンとなり、次の子と交代する。
一定時間の間でどちらの班にチャンピオンが多いかで勝敗を判定します。「判定がもめた場合は、じゃんけんで解決する」ことを事前に約束してからゲームを始めます。
方法2:得点方式
<行い方>
① 勝ち抜き戦方式同様、ふとんほしの姿勢になって隣の子とじゃんけんをする。
② じゃんけんで勝敗がついたら、勝っても負けても次の子に交代する。
③ 勝ったら10点として、勝つたびに班の得点を加算する。
一定時間の勝負で、班の得点を決定します。班の合計得点で順位をつけてもよいし、じゃんけんをし合った班で勝敗を決めてもよいでしょう。
学級の多くの子どもたちがふとんほしの姿勢のまま、片手でじゃんけんをすることができてきたら、片手のじゃんけんで勝ったら10点、両手を鉄棒から離して両手のじゃんけんで勝ったら20点というルールを追加すると、子どもたちが意欲的に両手を離したふとんほしに取り組むことができます。
勝ち抜き戦方式同様に、判定でもめた場合は、じゃんけんをして解決させます。
2.チームの入れ替えを取り入れて、もっと楽しみましょう
かけっこ入れ替え戦やハードル走の入れ替え戦、そして関所じゃんけん同様に、ふとんほしの学習でも勝敗が決まったら入れ替えをすると盛り上がります。
隣の班と入れ替わるだけでは、また同じ班と対戦することになったり、対戦相手がいない班が出てしまったりします。図のように、「鉄棒の支柱を越えて隣の鉄棒に移動する」ように指示をするとよいです。入れ替えが済んだら、1回戦の続きの子からじゃんけんをさせましょう。
ふとんほしは、逆さ感覚を高めるのにとても有効な運動です。全員がリラックスして逆さまになれるように繰り返し取り組んで、基礎感覚を高めていきましょう。次回は、逆さま姿勢で振動感覚を高める「ふとんほしブランコ」を紹介します。
【参考文献】
・平川譲(2012)『体育授業が得意になる9つの方法』東洋館出版社
・平川譲(2018)『体育授業に大切な3つの力 主体的で対話的で深い学びを実現する教師像』東洋館出版社
・筑波大学附属小学校体育研究部(2020)『できる子が圧倒的に増える「お手伝い・補助」で一緒に伸びる筑波の体育授業』明治図書出版
イラスト/佐藤雅枝、佐藤道子
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執筆
竹松 譲
新潟県公立小学校 教諭
1989年新潟県新潟市生まれ。子どもたちがたくさんの「できた!」を積み重ねられる体育授業を目指して、日々研鑽中。体育授業でのかかわり合いを中心として、子どもたち一人一人が安心して過ごすことのできる学級づくりを目指している。
監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。