小3特別活動「3年生になって」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小3特別活動の指導アイデアです。4月は、学級活動(3)「ア 現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成」の題材として「3年生になって」の実践を紹介します。
2年生の1年間を想起して、自分の得意なことや経験したことを振り返り、自分のよさや可能性に気付くことができるようにします。自分の成長について友達と共有できるようにし、学級で話し合ったことを参考にして、自分ががんばることを意思決定できるようにします。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・青木洋俊
監修/文部科学省視学官・安部恭子
日本体育大学教授・橋谷由紀
目次
年間執筆計画
4月 学級活動(3) ア 3年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ ぼうさいマスターになろう
7月 学級活動(1) なかよし集会をしよう
9月 学級活動(3) ウ 学習パワーアップ大作せん
10月 学級活動(1) 係発表会をしよう
11月 学級活動(1) クラス運動会をしよう
12月 学級活動(1) 今年もがんばったね集会をしよう
1月 学級活動(2) エ よくかんで食べよう
2月 学級活動(3) イ スッキリそうじ~みんなのためにきれいに~
3月 学級活動(1) ありがとう集会をしよう
学級活動(3)「ア 現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成」の指導について
学級活動(3)「ア 現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成」は、子供が自分自身の興味・関心やよさなどの個性を理解し、将来に明るい希望や目標をもって現在及び将来の生活や学習に進んで取り組み、自己のよさや可能性を生かそうとする意欲や態度を育てることを内容としています。学級や学校生活に希望をもち、日常生活や将来に向けた不安や悩みを解決するために、話合いを生かして個人の目標を設定したり、個性の伸長を図るために自己を理解したりすることができるようにします。
「キャリア・パスポート」との関連について
「キャリア・パスポート」を活用する場として、学級活動(3)が示されています。蓄積することだけが目的ではなく、蓄積したものを活用することが大切です。記録を振り返って自己の成長を感じ、今の自分を見つめつつ将来への見通しをもって意思決定し、実践していけるようにしましょう。
学級活動(3)の一連の学習過程について
事前の指導、本時の指導、事後の指導の一連の学習過程については、学習指導要領解説(特別活動編)には、「①課題・確認」「②解決方法等の話合い」「③解決方法の決定」「④決めたことの実践」「⑤振り返り」、そして、「次の課題解決へ」と示されています。学級活動(3)の学習過程を簡易的に示すと次のようになります。
本時の学習過程について
また、意思決定に向けた本時の学習については、「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の4つの段階の学習過程を重視しています。子供の成長やよさを認め合ったり、話合いの場を設けたりすることで個々の考えや可能性を広げ、強い決意をもって実践できるようにすることが大切です。
【つかむ】…課題の把握
→題材を自分事として捉え、将来と今とのつながりや学習する意義などについての課題をつかみます。
【さぐる】…可能性への気付き
→これまでの自分を振り返り、「なりたい自分」について自分の願いをもち、よさや可能性をさぐります。
【見つける】…解決方法等の話合い
→みんなで「なりたい自分」を追求するためにできることなどを出し合って見つけます。
【決める】…個人目標の意思決定
→なりたい自分になるために、自分に合った具体的な目標(内容や方法など)を決め、実践への強い決意をもちます。
事前の指導
【事前アンケートの活用】
事前にアンケートをとることで、題材への関心を高めるとともに、課題をつかみやすくします。
新学期になって、みなさんは3年生になりました。どんな3年生になりたいか、そのために、どんなことをがんばっていきたいか、考えてみましょう。
いよいよ3年生になったんだな。どんな3年生になりたいと思っているのか、自分でも気付くことができるな。
2年生のときも楽しく過ごせたし、いっぱいできることも増えたよ。3年生も楽しみだな。中学年になるし、もっといろいろなことをがんばりたいな。
アンケートは、子供の文章力などを知るためにも、次のようなワークシートを活用するとよいでしょう。
保護者の願いを聞く欄を設けておくことで、「こんな子に育ってほしい」といった思いや担任へ望むことなどを尋ねるようにするのもよいでしょう。
ICT端末を活用すると、効率的にアンケートをとることができます。
※下記ボタンをクリックするとダウンロードできます。
本時のねらい
事前のアンケートや「キャリア・パスポート」などを活用して、2年生の1年間を想起して、自分の得意なことや経験したことを振り返り、自分のよさや可能性に気付くことができるようにします。また、自分の成長について確認し、友達と共有できるようにします。そして、学級で話し合ったことを参考にして、自分ががんばることを意思決定できるようにします。
本題材では、「これからの学級や学校生活に希望や目標をもち、自分なりのめあてをもって学校生活を送ることができるようにする」ことをねらいとしています。
※考えを発表できるようになってほしいです。
本時の指導
【つかむ】…2年生の生活を思い出し、自分や友達、自分たちの成長について話し合い、題材をつかむ
①アンケートの結果から気付いたことについて話し合う
アンケート結果を提示し、多くの子供が「3年生の学級・学校生活が楽しみ」と回答していることなど、気が付いたことを話し合います。
また、「あまり楽しみではない」と回答している子供もいることに留意し、誰もが楽しく安心して生活できる学級にしていくためにも、一人一人が目標をもって生活していくことの大切さに気付くことができるようにしましょう。
多くの人が、わたしと同じように、3年生を楽しみだと思っていることが分かりました。
楽しみではないと答えている友達は、きっと不安な気持ちだと思うから、早く仲よくなれるといいなと思います。
②「キャリア・パスポート」を活用して、自分の2年生の生活を振り返り、成長に気付く
「キャリア・パスポート」の、2年生のときの自分の目標や、3月に書いた振り返りを見て、3年生に向けてどのような願いをもっていたかを思い起こせるようにします。自分の成長を自覚する子供もいます。2年生で成長してきたように、3年生の生活でも成長していけるようにがんばろうという思いをもてるようにすることが大切です。
ぼくは、2年生のときには、4月に「友達をたくさんつくるために、自分からたくさん声をかける」というめあてを立ててがんばったよ。
3月の振り返りシートには、係活動を友達と楽しくできたことを書いたわ。3年生でも、係活動をがんばっていきたいな。
【さぐる】…3年生の生活に見通しをもち、「なりたい3年生」について自分の願いをもつ
①3年生の学級・学校生活についての資料を見て、1年間の見通しをもつ
3年生の学級・学校生活について、遠足や校外学習などの学校行事、新しい教科等の学習など、写真資料などを提示して、子供が見通しをもつことができるようにすると、より具体的に3年生の自分をイメージすることができます。
②先輩からのメッセージ動画を見て、意欲を高める
昨年の3年生である4年生からのメッセージ動画を活用することも考えられます。
先輩がどのような3年生の生活を送っていたのかを知ることで、「なりたい3年生」を思い描くことができるようになります。
※3年生に何を話してもらうかについて、事前に学級担任と打合せをしておくことが大切です。
③「なりたい3年生」について自分の願いをもち、ワークシートに書く
①や②の資料などをもとに、「なりたい3年生」について思ったことを話し合い、ワークシートに書きます。実態に応じて、ワークシートに書いてから話し合うことも考えられます。
「なりたい3年生」の姿について、分類しながら板書し、【見つける】段階での話合いに生かせるようにすると
わたしは、今の4年生みたいに、2年生に優しくて、頼りになる3年生になりたいな。
ぼくは、動画に出てきたお兄さんのように、自分の考えをしっかり伝えられる3年生になりたいな。
【見つける】…「なりたい3年生」に近付くために、どのようにすればよいか考え、話し合う
具体的な個人目標を意思決定するために、「なりたい3年生」に向けてどのような取組をするとよいのかを話し合います。その際、教師が設定した学級教育目標など、担任としての願いや方針を伝えたり、保護者の願いを紹介したりして、焦点化を図るようにします。また、「なりたい3年生」を目指して、どのようなことに取り組んだらよいのか、具体的な行動目標につながる手立てとなるよう、整理しながら板書することがポイントです。
ぼくは、だれとでも仲よくなれる3年生になりたいです。そのためには、毎日、クラスの35人、全員に声をかけていきます。
わたしも、○○さんと同じで、だれとでも仲よくなれる3年生になりたいと思います。そのために、係活動で楽しいクラスをつくっていくこともできるのではないかと思います。
ぼくは、自分の思いを伝えられる3年生になりたいので、そのために、毎日1回は大きな声で自分の考えを発表できるようにがんばりたいです。
わたしは、自分の思いを伝えられるようになるためには、発言の回数も大切だと思うけど、言葉をたくさん知ることも大切だと思います。メッセージ動画で、3年生では国語辞典を使うって言っていたので、国語辞典で言葉をたくさん覚えたらいいと思います。
※自分のなりたい3年生について発言し合うだけでなく、友達が発表した「なりたい3年生」に向けて、どのようなことをがんばったらよいかについても話し合うようにします。
【決める】…話し合ったことをもとに、「なりたい3年生」に向けて今からがんばることを決め、ワークシートに書く
学級で話し合ったことなどを生かして、「なりたい自分」に近付くために、具体的な個人目標を意思決定し、学習カードに書きます。この学習カードには、担任や保護者等のコメント欄も付けておくことで、子供の意欲を高めたり、実践を応援したりすることができるようにすると効果的です。家庭の状況によって、保護者からのコメントを書いてもらうことが難しい場合などには、大人の人からとしたり、コメントは教師からだけにしたりするように配慮することが大切です。
※下記ボタンをクリックするとダウンロードできます。
板書例
事後の指導
【実践して振り返る】…自分の決めためあてや実践方法に取り組み、振り返りを行う
学級活動(3)の振り返りは、ある程度まとまった期間ごとに、折に触れて取り組むことが考えられます。毎月振り返ったり、1学期末(前期末)などに振り返ったりすることが考えられますが、振り返ったことを「振り返りカード」などのワークシートや「キャリア・パスポート」にしっかり記述しておくようにします。「もうすぐ4年生」や「4年生になって」の題材などの際に、資料として活用するとよいでしょう。
教師は、実践状況を帰りの会などで確認し、子供が自分の目標実現に向け、前向きにがんばることができるように、必要に応じて励ましたり声をかけたりしましょう。進捗状況によっては、目標の修正について助言することも考えられます。自主的な取組が、「自分もやればできる」「がんばってよかった」などの、自己効力感や自己肯定感の向上につながるようにします。
構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈
監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
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楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106