誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)とは?【知っておきたい教育用語】

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増え続けている小・中学校の不登校生徒数。その対策の1つである「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」について解説します。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

不登校の現状と課題

2022年度の全国小・中学校における不登校児童生徒数は299,048人でした(文部科学省、2023年)。前年度の244,940人から54,108人(22.1%)増え、過去最多となりました。全国の小・中学校に在籍する児童生徒の約3.2%がいわゆる「不登校の状態」にあるということです。過去5年間の傾向を見ても、2018年には小学校児童に占める不登校児童の割合が約0.7%から2022年には約1.7%に、中学校では3.7%から6.0%に増加しています。義務教育段階にある30万人近くの児童生徒が学校での学びを十分に受ける状態にないことは当事者にとってはもちろん、未来の社会の作り手の育成という視点からも深刻な問題です。

新型コロナウイルス感染症の拡大が不登校の増加傾向に拍車をかけたとも言われています。コロナ禍の社会では、学校や家庭での生活環境が大きく変化し、これまでとは違った不安の現れ方をしたり、人間関係の希薄化によって児童生徒が悩みを相談しにくい状況になったりしています。不登校となってしまうその原因がこれまで以上に複雑で多様になっています。

文部科学大臣メッセージ

2023年3月、文部科学省は「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を取りまとめました。さらに、深刻な不登校増加の状況を踏まえて、2023年10月には大臣メッセージ「〜誰一人取り残されない学びの保障に向けて〜」とともに、「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を出して、不登校といじめの問題に総合的に取り組む方針を具体的に示しました。

緊急対策パッケージの内容は次の3つの柱で構成されています。

 不登校緊急対策
 いじめ緊急対策
 学校における組織的対応を支える取組

パッケージの内容を見ると、不登校もいじめの問題も児童生徒の不安や悩みのSOSを早くキャッチして、そこから関係者、関係機関等が連携して適切な対応を講じる環境整備をめざしていることが分かります。

次の大臣メッセージは、全国の児童生徒や学校関係者に向けて出され、各学校等での周知も徹底されました。教育に関わる大人が、このメッセージの趣旨を踏まえ、地域等の実情に応じて、誰一人取り残すことなく子供の元に、その心に届くように工夫する必要があります。

出典:文部科学省「⽂部科学⼤⾂メッセージ〜誰⼀⼈取り残されない学びの保障に向けて〜」2023年10月

COCOLOプラン

緊急対策パッケージには、不登校対策としてCOCOLOプランを当初の予定を前倒しして実施することが示されています。その内容は次の通りです。

1 不登校の児童生徒全ての学びの場の確保
①校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置の促進
②児童生徒が自宅から学ぶことができる教育支援センターのICT環境の整備
③教育支援センターのアウトリーチ機能など、総合拠点機能の強化

2 心の小さなSOSの早期発見
①アプリ等による「心の健康観察」の推進
②子供のSOS相談窓口を集約して周知(1人1台端末を活用)
③より課題を抱える重点配置校へのスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置充実

3 情報発信の強化
①学びの多様化学校設置推進のための全国会議開催、「学びの多様化学校マイスター」派遣
②文部科学省による一括した情報発信

約30万人の不登校児童生徒のうち、学校内外で相談・支援を受けていない者が約11万人おり、この数も過去最多となっています。COCOLOプランは、全ての不登校児童生徒を対象にした対策計画であり、校内の支援ルームへの登校やオンラインによる家庭からの授業参加など、不登校児童生徒の多様な状況に応じる取組をめざしています。GIGAスクール構想で整えられた児童生徒1人1台端末をはじめとするICT環境を活用した新たな学びの場や相談体制の設定は、学校や関係機関等とのつながりに大きな期待が寄せられています。また、「学びの多様化学校」、つまり、不登校特例校の全国規模での設置を進めるために、設置経験のある自治体等の関係者を国が派遣する制度も創設されます。

COCOLOプランの実現のための組織対応の強化と学校の現状

言うまでもなく、全ての児童生徒は義務教育を受ける権利をもっています。国や自治体は、平成29年に施行された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」に基づく基本方針を策定し、不登校児童生徒の支援について体系的に取り組んできました。しかしその間も不登校数は増加の一途をたどっています。そこで、COCOLOプランには、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる支援、医師会との連携、スクールロイヤー、スクールサポーターなどの外部専門家を加えた不登校対策組織のこれまで以上の強化策が盛り込まれています。

では、不登校問題解決の最前線に立つ学校組織の状況はどうでしょうか。教員不足や学校の働き方改革など、経営そのものが危ういと言われている学校もあります。学校現場は、児童生徒の学ぶ権利を保障しなければならないという理想と、教職員が不足し組織運営自体が大変厳しいものになっているという現実の間に立っていると言えそうです。

「緊急対策」という言葉が示すように、国のリードのもと、学校や教育委員会等が総がかりでその解消に注力しなければなりません。不登校によって学びにアクセスできない児童生徒ゼロをめざすこのプランを実効性のあるものにするためには、予算と人材の確保はもちろん重要ですが、これまでの公教育そのものの在り方を問い直し、柔軟な発想で多様性に対応できる学校教育を構築していくことが求められているのかもしれません。

▼参考資料
文部科学省(PDF)「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」2023年10月4日
文部科学省(ウェブサイト)「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた緊急対策等について(通知)」2023年10月17日
文部科学省(PDF)「⽂部科学⼤⾂メッセージ〜誰⼀⼈取り残されない学びの保障に向けて〜」2023年10月
文部科学省(PDF)「不登校・いじめ 緊急対策パッケージ

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