小4特別活動 学級活動編 「SNSの安全な使い方」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(元文部科学省視学官)

安部恭子

文部科学省視学官監修による、小4特別活動の指導アイデアです。1月は、「SNSの安全な使い方」学級活動(2)ウの実践例を紹介します。

健康への影響や課金をめぐるトラブル、人間関係のトラブルなど、SNSには危険性が潜んでいます。そうした課題を子供自身が自分事として捉え、SNSの利用について考え、安全に使うための約束についての大切さを理解し、家庭とも連携を図りながら自分に合った具体的なめあてやルールを決めて実践できるようにする活動を紹介します。

執筆/沖縄県公立小学校校長・工藤直也
監修/文部科学省視学官・安部恭子
 沖縄大学教授・黒木義成

年間執筆計画

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4月 学級活動全体 学級活動ってどんな時間なの?
   学級活動(1) ア どうぞよろしくの会をしよう
5月 学級活動(1) ア 学級の合言葉をつくろう
6月 学級活動(1) イ 係を決めよう
7月 学級活動(3) イ ピカピカそうじ大作戦
9月 学級活動(1) ア 学級運動会をしよう
10月 学級活動(2) エ 健康によい食事のとり方
11月 学級活動(2) イ 友達と仲よく
12月 学級活動(1) ウ 3年生との交流会をしよう
1月 学級活動(2) ウ SNSの安全な使い方
2月 学級活動(3) ア 5年生に向けて
3月 学級活動(1) ア 自分たちの成長を祝う会をしよう

はじめに

今や小学生がスマートフォンを所持していることは何ら珍しいことではなく、家族や友人との連絡や情報交換、情報入手のツールとなっています。学年も、高学年に限らず、低・中学年でも多くの子供がスマートフォンを所持しSNSを利用しています。しかし、手軽なコミュニケーションツールとして利用している一方で、長時間の利用により健康に影響を及ぼしたり、依存症につながったりすることも考えられます。また、ゲームでの課金をめぐるトラブルや相手が意図しない受け取り方をしてトラブルに発展するような危険性も潜んでいます。そうした課題を子供自身が自分事として捉え、SNSを安全に便利に使いこなすにはどうすればよいのかを考え、使い方のルールなどについて、学級で話し合ったことを参考にして、一人一人が意志決定していくことが重要です。

題材「SNSの安全な使い方」

学級活動(2)ウ 心身ともに健康で安全な生活態度の形成

本題材のねらいについて

子供が自分のSNSの利用について考え、安全に使うための約束についての大切さを理解し、自分に合った具体的なめあてやルールを決めて実践できるようにする。 

◇心身ともに健康で安全な生活態度の形成
SNSは人間同士が互いにコミュニケーションを取り合うツールです。しかし、スマートフォンなどの長時間使用など、その使い方を誤れば、心身の健康を害することにもつながります。また、使い方によっては、思わぬトラブルに巻き込まれることもあります。自分の生活を振り返り、課題とその解決方法を考えさせ、日々の実践につなげます。
※「(2)イ よりよい人間関係の形成」と関連を図って行うことも考えられます。

◇SNSの利点と欠点
SNSの便利な面だけを考えて使っていて、欠点である危険性を考えない子供たちもいます。そこで、SNSを利用するときに考えられる具体的なトラブルなどにも目を向けさせ、欠点についてもしっかりと考えさせ、よりよいめあてが立てられるようにします。
※養護教諭とのTTで行うことも考えられます。

1.事前の指導

①事前アンケートの活用

スマートフォン所持やSNSの利用状況に関するアンケート調査を行い、子供たちの実態を把握するとともに、題材についての意識を高めます。教師は子供たちの実態や経験に基づいて授業展開を工夫したり、意志決定の方向性を考えたりします。
※スマートフォン所持やSNSの利用状況は、家族構成や家庭環境による個人差があることから、「持っていて当たり前」とならないように留意します。

<アンケート例>

②動画などの活用

スマートフォンやSNS利用におけるトラブル事例を扱った動画などを活用することで、自分では課題として捉えていなかったことに気付くことができるようにすることも考えられます。
※動画が用意できない場合は、新聞記事を活用したり養護教諭に話をしてもらったりするとよいでしょう。

2.本時の指導

学級活動(2)は、「つかむ(実態や現状の把握)」「さぐる(原因の追求)」「見つける(解決方法等の話合い)」「決める(個人目標の意思決定)」という一連の学習過程に沿って授業を進めることで、子供たちは見通しをもって学習することができます。1時間の学習の流れについて、それぞれの段階で考えることや話し合うことを、あらかじめ板書で明確にしておくとよいでしょう。最終的にどんなことを意思決定すればよいのかを、本時のめあてとして板書するなど、明確に示すことも大切です。

①つかむ(実態や現状の把握)

スマートフォン・SNSの利用に関する事前アンケートの結果を見て、気が付いたことを話し合います。スマートフォンやSNSの長時間利用をしている子供、親に相談せずに課金してトラブルになってしまった子供の例を取り上げたり、「利用時間を決めている」という子供に発言してもらったりして、スマートフォンやSNSを安全に利用するにはどうしたらよいのかという本時のめあてにつなげていきます。また、自分はどうか、といった自分事として考えることができるようにします。

今日は、「SNSの安全な使い方」について、アンケートの結果などをもとに考えてみたいと思います。アンケートの結果を見てどのようなことに気が付きますか?

けっこう長い時間スマートフォンやSNSを使っている人も多いね。ぼくもついつい動画を長い時間見ていて次の日起きられなくて、家の人に怒られたことがあるよ。

わたしは家の人に相談しないでゲームの課金をしようと思ったことがあるわ。お姉ちゃんにそんなことやったらダメって言われてやらなかったんだけど。

うちでは家の人がいるところで使うことになっていて、使う時間も話し合って決めているよ。

②さぐる(原因の追求)

「SNSの安全な使い方」とはどういうことなのか、スマートフォンやSNSの長時間利用による健康被害やトラブル事例を通して、SNSを安全に使うには、ルールを決めて使うことが大切であることについて探っていきます。スマートフォンなどの長時間の操作によって目や脳などへの影響があることについて確認します。また、保護者が知らないところで自由に使っているとどんなことになるかを子供たちに尋ねながら、ルールを決めてSNSを使うことの大切さを子供たちが実感できるようにしていきます。

※スマホ依存の影響についての資料、小学生のゲーム課金トラブルの資料を準備し子供たちがトラブルなどをイメージしやすいようにするとよいでしょう。
※養護教諭とTTで行い、専門性を生かして資料に基づいて話してもらうのもよいでしょう。

③見つける(解決方法等の話合い)

「さぐる」段階で見えてきた原因を踏まえ、SNSを使うときに気を付けることなどについて話し合います。まず、ペアやグループでSNSを安全に使うためにはどうしたらよいのか、互いにアドバイスし合いながら話し合います。さらに、学級全体で話し合って、多様な方法や工夫となるようにし、よりよい意思決定へとつなげることができるようにします。

《教師の声かけ例》

スマートフォンやSNSを使うことで、みなさんの健康に影響があることや、トラブルに巻き込まれることもあることが分かりましたね。SNSを安全に使うためには、これからどうしたらよいと思いますか。まず、グループで話し合ってみましょう。

毎日、使う時間を決めるようにしたらいいと思うよ。

お金がかかることだから、ゲームで課金するときには必ず家の人に相談しないとダメなんじゃないかしら。

ぼくのうちでは決めたルールを忘れないように、紙に書いて貼っているよ。家族みんなも分かるから、お互いに声をかけ合うなどしているよ。

※グループで話し合ったことを発表し合い、安全に使うための方法や工夫を板書し、学級全体での話合いに生かすようにします。
※家庭でルールなどを決めている子供を意図的に指名して家のルールを紹介してもらうなど、いろいろな工夫が出るようにします。

④決める(個人目標の意志決定)

「見つける」段階で学級で話し合ったことを生かして、一人一人が自分の課題に合った具体的なめあてや解決方法を意思決定できるようにします。「どんなことをどの程度」「どのように」という視点を与えるなど、SNSを安全に使うために具体的な目標や方法を決めることができるようにします。
机間指導を行い、意思決定できずに困っている子供がいた場合は、教師が例を示すなど助言するようにします。また、内容によっては具体的な数字を入れて意思決定をすると、事後の実践を振り返りやすくなったり、目標の修正をしやすくなったりします。意思決定して終わりではなく、何人かが発表したり、ペアやグループで発表し合ったりして、自分の立てた目標や方法を見直す機会を設けるようにします。

《教師の声かけ例》

スマートフォンやSNSを安全に使うために、これから自分が取り組むことを発表しましょう。

使い過ぎで脳に影響があることが分かってびっくりしました。今まで1時間以上使っていたのを30分に減らしたいと思います。

家の人がいないときにスマホを使ってゲームをしていたけど、課金トラブルの危険も分かったので、使うときは家の人がいるときにしようと思います。

明日から1週間、自分が決めたことに取り組みましょう。

《本時の板書例》

3.事後の指導

①決めたことを実践する

自分が意思決定したことを 継続的に実践できるように、 1 週間程度振り返ることのできるワークシートを活用して取り組みます。実践のまとめとして、振り返ったことを学級全体で確認し、「ふり返りシート」 にまとめて学級活動コーナーに掲示したり、朝の会で実践を紹介し合う時間を設けたりしながら、子供たちが意欲を継続できるように支援していきましょう。「実践できたか、できなかったか」といった結果だけでなく、進んで取り組もうとしたり、粘り強く努力しようとしたりする態度や、進歩の状況などを教師は温かく見守り、認め、励ますなど、成果を上げることができるように指導します。

②定期的に自分の立てた目標を振り返る

学級活動⑵ では、目標の実施状況や努力の様子を毎日確かめたり、1週間程度の比較的短い期間で振り返ったりします。自己評価については、帰りの会など、全員が振り返ったり記録したりできる時間を設けるようにしましょう。達成状況を踏まえ、必要に応じて新たな目標を設定したり、目標を修正したりします。
※互いの努力を認め合い、励まし合う場を設定することも大切です。このことが実践の継続化や日常化、共感的な人間関係づくりにつながります。

③取組や努力について、家庭へ情報を発信したり、協力を求めたりする

意思決定した目標を実践する場が、家庭である場合も多くあります。保護者に本題材の授業の様子や取組、子供の様子を伝えたり、協力を求めたりすることで、より子供たちの意欲の向上や成長につながることが期待できます。具体的には、学級通信や学年だより、保護者会等で子供の決定した目標や努力している様子を伝えることや、振り返りカードに「家庭から」の欄を設け、保護者から子供の取組や努力を認め、励ましてもらうことなどが考えられます(※家庭環境において配慮が必要な子供が在籍している場合は、「先生から」だけにしたり、「家の人などから」としたりするとよいでしょう)

構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈


監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


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著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
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