【相談募集中】私への不満を書き込んだ保護者のSNSを見てしまいました
自分への不満を書き込んだ、保護者のSNSを見つけてしまったという30代の先生から「みん教相談室」に相談が寄せられました。その内容がショッキングで、今のクラスでも同じことをしてしまっていたらどうしようと不安な日々だそう。この悩みに対して回答したのは「保護者を味方にする学級経営術」の連載も持つ千葉県公立小学校校長の瀧澤真先生。先生自身の経験もふまえて、親身にアドバイスしてくれました。その内容をシェアします。
目次
Q.異動した元学校の保護者がSNSにショッキングな書き込みをしていました……
昨年度、異動した学校の保護者のSNSをたまたま目にすることがありました。その中に、名前は出されていませんが、明らかに自分のことだと分かる内容が掲載されていました。意見を書き込むことは個人の自由だからいいのですが、気になったのが「2年間もあの先生(自分)が担任だったことが子どものトラウマになっている」「異動してくれて感謝」という内容です。
その保護者だけなら、その人や子供の一方的な感じ方や話を盛っているのかもしれないと言えますが、複数の保護者が同調するコメントを書き込んでいて……。3年・5年と担任して子どもとも保護者とも特に大きなトラブルはなかったし、管理職に指導されたこともなかったので順調とはいかなくても普通に学級経営ができているものだと思っていたのですが、それが思い上がりだったということに大きなショックでした。
知人は「過去は変えられないし、もう異動していて関わりもないから」と言いますが、最近ニュースなどで「以前の担任のトラウマで心の病気(不登校)になった」「過去の担任を数年後に訴えた」という話もよく耳にするので、すごく不安です。生活圏内なので、店などで会う可能性があるのですが、それも苦痛で遠い店まで買い物に行ったりしてしまいます。
さらに、今のクラスの子どもたちや保護者も傷つけているのかもしれないと毎日心配になり……。考えすぎ(自意識過剰?)なのでしょうか? ご意見やアドバイスをいただけたらありがたいです。(ミルク先生・30代女性・中学年担任)
A.匿名やネット上の書き込みは対応しない、見ないようにするのが一番です
教師はスーパーマンではありません。すべての子ども、保護者を満足させ、すべての問題を円滑に解決できる。そんな教師はいません。人が人を育てるのにマニュアルは存在しないし、何が正解かはだれにもわかりません。だから私たち教師は、悩み、試行錯誤し、失敗しながら経験を積み重ねていくしかありません。
今回の相談を読み、私は自分の身に起きた2つのことを思い出しました。
1つめは、3年生で担任した子がいじめられていたことが、翌年になって発覚したことです。その際、管理職から「あなたは昨年担任していたときに気づかなかったのか」と責められました。その話を聞いて、私は非常にショックを受けました。
クラスはうまくいっていた、みんな楽しく過ごし、4年生に進級したと思っていたからです。いじめがあったことに、まったく気がついていませんでした。私は自分の責任を痛感し、それ以来、いじめをどう発見するかに力を入れるようになりました。
もう1つは、全校対象の保護者アンケートで、「アイドル気取りの教師がいる。自分をアイドルのような名前で呼ばせている。学級経営もいい加減だ」という趣旨の意見が匿名で寄せられたことです。詳しい説明は省きますが、このアイドル気取りは私だということは明確で、かといって別にアイドルのような愛称で私のことを呼ぶように強要していたわけではないので、非常に腹立たしく思ったことがあります。
さて、こうした経験を踏まえ、今回寄せられた相談に具体的に答えていきたいと思います。
まず、子どもとも保護者とも大きなトラブルがなく、管理職からも指導されたことがないという状況ならば、あなたが訴えられることはありません。たとえあなたの指導に何か不都合があったとしても、指摘されていないので、直しようがありません。ですので、もし今後何かあるとしても、それは管理職の責任です。どうぞ安心してください。
また書き込みをした内容が不明なので、推測になりますが、賛同したのは書き込みをした保護者の仲間なのではないでしょうか。
我々はどうしてもネガティブな情報、声の大きい人の意見に振り回されます。負の感情というのはすごくエネルギーがあり、そのマイナス側面にどんどん引き寄せられます(これをスターウォーズという映画では、「ダークサイドに落ちる」と言っていました)。
たとえば保護者が30人いるとして、そのうちの3人がネガティブな発信をした場合、残り27人はどうなのでしょうか。先生を肯定している保護者もたくさんいるはずです。ですが、そういう人はあまり積極的に発信しないものです。味方も必ずいます。これは私が保障します。ですので、マイナスのエネルギーに巻き込まれずに、書き込みをしていない多くの方がいるという、そちらの方に目を向けましょう。
もちろん、書き込みが、具体的に何を改善すればいいのかわかる内容ならば、努力することも可能です。たとえ少数意見だったとしても、それを糧とし、自分の成長につなげていくとよいでしょう。
一方で、何をどう改善したらいいのかわからない書き込み、単なる批判ならば、もうそれは放っておくしかないでしょう。そもそもそういった内容をSNSに書き込む保護者は、教師と協力し、子どもをよりよくしていこうという気がなく、憂さ晴らしのようなことをしているので、気にしないのが一番です。
匿名やネット上の書き込みなどは気にせず、対応しない。これが私のスタンスですが、そうはいっても実際には気になりますよね。ですので、私はそういうものを見ないようにしています。先生も今後は保護者のSNSなどは、意図的に避けることをおすすめします。
また、近くの店で買い物できないということですが、私も学区内やその近くの店には極力行かないようにしています。特に何か不都合があるわけではないですが、学校から離れたら、仕事モードから解放されたいと思うからです。
芸能人ほどではないにしても、そういう苦労は教師ならばわかる人は多いと思います。あれこれ気にしてしまうくらいなら、多少遠い店で買い物した方が精神衛生上いいと思います(それでも買い物する必要があるならば、マスクをして帽子をかぶると、安心できますよね)。
それから、今担当している子どもたちを傷つけていると心配ならば、思い切ってアンケートをとってみてはいかがでしょうか。例えばこんなことを子どもたちに聞きます。
- 学校は楽しいですか(楽しくない、という子とあとで話をしましょう)
- よく一緒に遊ぶ友達は誰ですか(いない、と答えた子とよく話をしましょう)
- 先生へのお願いがあれば書いてください(先生への不満を書いてくれるかもしれません)
人は漠然とした不安があると、どんどんそれが膨らみ、ひどく落ち込みます。先ほど述べたように、ダークサイドに落ちていきます。
アンケートをとると、「先生へのお願い」のところにきついことが書いてあり、落ち込むかもしれません。ですが、はっきりと問題がわかれば、それ以上あれこれ考えて、深みにはまっていくことはなくなります。それに、問題が明確ならば対処のしようがあります。そしてそれをうまく解決できれば、すっきりして、悩みもなくなります。
いずれにせよ、何か批判された時に、開き直るのではなく、それを気にしてしまう先生は、よりよく成長しようという気持ちがある人です。そういう先生は、伸びます。あせらず、一歩一歩、教師として成長していきましょう。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。