「これだけ英語」で乗り切る小学校英語指導#04〜エンターテインメント力! 楽しんで好きになる英語授業を目指して~

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マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

児童は、YouTubeやゲーム、テレビ番組など、楽しいものに触れながら毎日を過ごしています。生活の細部にまで、エンターテインメント性が染み込んでいると言っても過言ではないでしょう。そのため、いわゆる典型的な講義タイプの授業に集中力を傾けることは大変難しく、またじっと座って前を向いて学んでいるだけでは、すぐに気持ちが離れてしまいます。そこで、エンターテインメント的な要素を取り入れて、児童自らが楽しいと感じ、前向きに学んでいける授業をつくっていきましょう。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

※過去の記事はこちら>>
「これだけ英語」で乗り切る小学校英語指導#01〜外国語(英語)教育に関する総論〜
「これだけ英語」で乗り切る小学校英語指導#02〜アジリティ力!~決まり文句ととっさの基本ワードを身に付ける~
「これだけ英語」で乗り切る小学校英語指導#03〜リレーションシップ力! 英語をとおしてよりよい人間関係づくり~

1 中学校英語教員出身者の話

長く中学校での英語教育に携わり、定年などを機に小学校英語教育の現場に来られたせんせい方に、小学校英語教育のあり方について、お話を伺ったことがあります。

中学校に入学した新1年生にアンケートをとると、小学校から英語に触れて楽しんできたから、さぞかし「英語が好きだ」という生徒が多いのだろうと思っていたら、「英語が嫌い」という生徒が予想以上に多いのに驚いた。

小学校での週1~2回の英語の授業だけでは、なかなか英語が身に付かない。英語塾などに通っている一部の英語が分かる児童にくっついて、その場しのぎをしているだけで、1人で話す、1人で対応するとなると全然できないことが多い。

中学3年生になって、文法や構文などを学んでくると、「ああ、そうか! 小学校で使っていた言い回しは、こういうことだったのか」と、ようやく知識と理論がまとまることが多い。このように、言語学習では、知識と理論が別々に習得されていくので、知識を吸収する初期段階で苦手意識をもたせないことが重要ではないか。

小学校では、基本的に英語に触れ、楽しむということを前提とし、中学校での学習の基盤をつくることが大前提。でもある程度、文法的な知識も踏まえて学習させたり、今以上にフォニックス的な学習を取り入れたりすることが必要ではないかと感じている。

知識的な学習、スキル的な学習でも、小学校では「楽しんでできる」ことが優先。教科書にある学習内容をただ授業で進めるだけでなく、エンターテインメント的なおもしろさとともに学ばせたほうがやはり英語好きの児童に育つのだろう。

こういった貴重なお話を聞くと、教科書のとおりに進めていってもなかなか未消化のまま楽しめない児童が増えていくだけではないかと思います。

2 児童の声

教室には、様々な児童がいます。
学力の高い子、そうでない子…。
やる気のある子、そうでない子…。
明るい子、そうでない子…。
そのような中で、英語という別の言語を取り入れての授業はなかなか難しいです。
あまり工夫のない授業ではこんな声が聞こえてきます。

分からないよ

せんせい、日本語で言ってよ

ペア学習なんてイヤだよ しかも英語なんて

同じパターンでつまんない

なんでこんなことさせられるの?

カタカナで書いてください

書くのいや!

話せない みんなの前でなんかできない

英語って幼稚だなあ

算数よりは遊べるからまだいいか

こんな発言が多くては、児童たちは英語嫌いになっても不思議ではありません。そして、こうした事例は決して珍しくはないのです。授業者として、児童を「英語好き」にするための工夫をしていきましょう。
しかも、英語力向上につながるような何かです!

3 エンターテインメント力

15分ユニット制をとっている学校では、単発のアクティビティとして考えます。1校時45分を基準としている学校は、授業の構成を考え、どこにどんなふうに用いるかを考えていきたいです。
単調な繰り返しだけでは、児童は飽きてしまいます。
飽きさせないように、「これだけ英語」として汎用性のあるものをあげてみました。
以下のような代表的なアクティビティはいかがでしょうか。

①「月ごとの英語の歌」を歌う
「歌うって楽しい! 日本語で知っている曲を英語でも!」
 児童がなじみやすい歌を、授業のはじめの5分間くらいを割いて覚えてもらいます
 シンプルななじみやすい歌がいいです
 もちろん、教科書に準拠した学習のための、ユニット付録の歌でも可です。しかし、長く覚えておいてもらうには、より馴染みのある歌がベターです
 1時間の授業時間に2~3回歌い、歌えるようにしていきます
 全員歌うことができれば、学級のレパートリーとして、何かの発表会に使います

Alphabet Song(ABCのうた)
Are You Sleeping?(朝ねぼうのうた)
Bingo(ビンゴ)
Finger Family(ゆびのうた)
Happy Birth Day To You(ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー)
Head, Shoulders, Knees & Toes(あたま、かた、ひざ、あし)
Hello Song(こんにちは)
If You’re Happy And You Know It(幸せなら手をたたこう)
I’ve Been Working On The Railroad(線路は続くよどこまでも)
London Bridge(ロンドン橋)
Jingle Bells(ジングル・ベル)

② カードとりゲームをする
「単語学習は単調だけど、ゲームになると楽しい!」
 3~4人のグループをつくり、机を合わせます
 「色」「数」「アルファベット」「動物」「国」などのテーマを1つ決めます
 テーマに基づいたカードを机に並べます
 授業者や代表の児童が、カードに書かれた単語を読み上げ(発音し)ます
 他の児童はカルタとりのように、発音された単語が書かれたカードをとります

③ ミッシングゲームをする 
「消えたモノは何か、記憶力・推理力比べが楽しい」
 単語カードを黒板に、マグネットでたくさん貼ります
 児童には1分程度、貼られたカードを見て覚える時間を与えます
 児童全員が目隠しをし、その間に授業者は、黒板のカードから1枚とります
 児童に、黒板を見て、なくなったカードを答えてもらいます
 モノの種類など、カードの配列にルールを設けると推理ゲームとしても楽しいです

④ ポインティングゲームをする
「速さ比べのスピード感がおもしろい」
 授業者が、現在学習しているユニット内から、ある1つのワードを言います
 児童は、そのワードをユニットの中から見付けたら、手を挙げます
 その際、右手でユニットの当該箇所を指し、左手で挙手をさせると、速さ比べゲームになります
 1つの印刷物をペアやグループで共有し、一番速く指させた人が勝ち、とすると更に白熱します
 3回続けて同じ人が勝てば、その人にはハンデをつける…等、全員で楽しめるようにしましょう

⑤ 隠して提示またはシルエットクイズをする
「ちょっとしたひねりが意欲につながる」
 授業者が、例えば「リンゴ」の絵を提示して、「apple」と言わせたいとき
 絵の一部だけを見せて、何が描かれているのかを類推させます
 答えを思いついた人から、手を挙げて発言するクイズ形式にします
 シルエットや輪郭線だけの絵で提示するのもおもしろいです

⑥ 英語に関する楽しいプリントを使う
「話す・聞くだけではない楽しみ」
 単語クイズや穴埋め問題など、授業進度に合っているプリントを、複数用意します
 教え合い自由とします
 プリントができたら挙手させ、授業者は素早くまる付けします
 児童が喜びそうなシール(外国っぽいものだとなお可)をプリントに貼ってあげます
 用意したプリントが終了した児童は、授業者を手伝ってまる付けします           

⑦ ”rock at first!”「英語でじゃんけん」活動を随時入れる
「いつもやってることを英語でも!」
 日本語でのじゃんけんのバリエーションを英語で応用するだけです
 例えば、何かの順番を決める際に、英語でじゃんけんします
 かけ声は”rock paper scissors”です
 「最初はグー」の掛け声は、”rock at first”です。そんな遊び心を入れるのもいいですね
 児童同士の対戦のほか、せんせいと勝負で、最後まで残った人が”winner”とするのも楽しいです

⑧ 毎回同じ質問(天気、曜日、気分など…)をする
「自信をもたせる」
 問いや答えを定型化し、何回も練習すると、誰でも簡単に答えられるようになります
 英語に苦手意識をもっている児童を率先して当てていきます
 授業の冒頭でうまく答えられると、「うまくいった!」という温かな雰囲気が醸されます
 うまく答えられなくても”That’s OK!”と言い、その場で教えればOKです
 慣れてきたら、今度はドラえもんの声で、とか、好きなアイドルふうに、とか、○○せんせいのまねで、とか、ひねりをきかせて答えてもらうのもいいですね

⑨ 英語でスピーチ大会をする
「気軽で簡単な、楽しい発表の場をつくる」
 新たにスピーチ原稿を考えるのではなく、教科書にあるテーマで英文を作ります。4文以上あれば、立派なスピーチです
 「行ってみたい国」「将来なりたい職業」「中学校でやりたい部活動」「わたしの住む町」など、既習事項(テーマ)から話してみたいことを選びます
 原稿は書いて構いませんが、発表の時には、原稿を読まずにそらんじられるようにします
 学年末にスピーチ大会を開きます
 あくまでエンタメの範囲で審査をし、優勝、準優勝、おもしろ賞…などと、コンテストみたいにするのも楽しいです。また応用例として、グループで英語劇にしたてることも可能です

⑩ スモールトークを入れる
「うまくできなくてもいい、対話力を磨いていこう」
 まず、どんなことを話すかを、ALTやTTのせんせいと考えて、シナリオを書きます
 シナリオを児童に提示し、まずはせんせい同士でシナリオに沿って会話をします
 次に児童に話しかけ、会話の練習をしてもらい、それにならって、児童同士でペアを組み会話します
 このペアを変えながら、児童同士の会話をし、教員は困っている児童を支援します

スモールトーク→「おしゃべり、世間話」という語彙です。慣れてくるとシナリオにそわないアドリブなども入れて、どんどん発展させていけます。

4月 好きな食べ物(給食のメニュー)は何?
5月 好きな音楽は何?
6月 好きな季節は何?
7月 夏休みにやりたいことは何?
8・9月 夏休みに行ったところは?
10月 修学旅行(宿泊学習)で楽しかったことは?
11月 日本の中で行ってみたいところは?
12月 サンタクロースに何をお願いする?
1月 冬のスポーツで好きなものは?
2月 あなたのヒーローは?
3月 あなたの夢は?

これらのほか、「ジェスチャーゲーム」「BINGO」「クラップゲーム」「ステレオゲーム」などなど、楽しいゲーム手法は、まだまだたくさんあります。

最後に、授業のおわりは名残惜しく…
おわっちゃったね! またやろう! また会おう!というような雰囲気をつくります。
こういったエンタメ性のある授業づくりをしていったところ、「エー、もう終わったの!」という声が毎時間聞こえてきました。
授業者としてはうれしい限りです。
ここで重要なのは、「決して競争要素を強めてはならない」ということです。
競争的要素が強まると、児童は英語を使わないで日本語で対応してしまう傾向があります。
あくまでみんなで楽しむ、協力して楽しむということを徹底させたいです。
できたら、喜ぶ!(イエーイ! ハイタッチ)
それが極意と言えるでしょう。

4 ALT(外国語指導助手・英語指導補助)との関わり

① ALTの生かし方

ALTは、英語を話す外国人の方で、小学校英語の授業の中にどんどん入ってきて支援をしてくれます。
必ずしも英語圏の出身者とは限りませんが、仕事や生活の中で英語を話してきた方です。
学校事情もあり、毎回授業に来てもらえるとは限らないでしょうが、ぜひ授業の中で効果的に活躍していただきたいです。
かつて英語教育の指導者研修に行った時、講師から、
「ALTをCDのスピーカーのような発音練習機にしてはいけない!」
と言われました。
これ、小学校ではけっこうやりがちです。「これを発音してください」とか「これを読んでください」などと頼んでしまいがちなのです。そういった発音練習の活動は、CDやネットの教材でいくらでもできます。
生きた英語を教室で再現するために、英語でコミュニケーションするために、ALTの皆さんはいるのです。
日本人の教員と、外国人のALTが、英語でスモールトークをしてみせるだけで、児童は英語への興味関心が湧いてくるはずです。

② ALTとの会話で英語力ブラッシュアップ!

英語専科教員を拝命したとき、「ええっ、わたしにできるのかな!?」と戸惑いました。
いわゆる教室英語と呼ばれる言い回しは、まだマスターしていなかったからです。
そこで、町なかの英会話教室に「小学校英語授業向け指導者講座」があると聞き、すぐ予約し受講しました。
講師は地元でのALT経験年数が長い方で、うれしいことに地元の日本人の方と結婚して地元に住んでいる方でした。その方に教室英語のあり方や、ALTとのコミュニケーションの方法についてたくさんのことを学び、最低限の教室英語を覚えれば、誰でも何とかなる、ということが分かりました。
自己研修として、こういった講座を受けることもいいですね。
ところで、このALT経験者の講師から聞いた話ですが、来日したALTは職員室でポツンとしていることが多いようです。
誰も話しかけてくれない。
ただの軽いあいさつや、ひと言・ふた言のコミュニケーションさえあれば安心できるのに、それすらないことで、自分は歓迎されていないのでは…と孤独感が募るそうなのです。そのアウェー感がとてもいやだと言っていました。
ALTをそんな気持ちにしていては、エンタメも何もあったものではありません。
授業者どうしの信頼感あってのエンタメです。とにかく簡単なことでいいから話してみましょう。わたしたち教職員は、まさに「これだけ英語」で話せばいいのです。
そして、話していると何となくコツがつかめます。半分くらいの単語を理解できれば、なんとなく話は続きます。
ペラペラなんて二の次、あなた自身が、英語で話すことに楽しさをどんどん感じていけたらOKです。
ALTと会話をして、教室英語力やスモールトーク力をブラッシュアップしていってください。

以上のようなエンタメ性のあるアクティビティで、英語を好きにならせてください!

今回4週にわたって「これだけ英語」と称して、最低限これだけ身に付けておけば、英語の授業はどうにかなるということをお伝えしました。
高度な英語の授業力は一朝一夕では身に付かないことは事実です。
でも、気軽に「これだけ英語」でだいじょうぶ! Let‘s go!

【参考図書】
『こどもの英語耳を刺激する 英語のうた』(ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス)
CD『みんなでうたおう!えいごのうたベスト50曲』(日本コロムビア)
金森強『小学校外国語活動 成功させる55の秘訣』(成美堂)
山口美穂『Small Talk 月別メニュー88』(明治図書出版)
水落芳明・阿部隆幸編著『これで、小学校外国語の「学び合い」は成功する!』(明治図書出版)
島崎貴代・和田博之『朝学プリント英語小学校5・6年生』(清風堂書店)
島崎貴代『学級担任がスグに使える小学英語活動コピー資料集』(フォーラム・A)
守屋佑真『イラストで直感的にわかる小学英語ワークブック』(KADOKAWA)
英語の授業の流し方については、『小三小四教育技術』2019年度・2020年度(小学館)で連載されていますので、アーカイブでの閲覧をお奨めします。
>>「教育技術」電子版アーカイブ|みんなの教育技術 (sho.jp)

イラスト/したらみ 横井智美


  こんな問題を抱えているよこんな悩みがあるよ、と言う方のメッセージをお待ちしています!

その他にも、マスターヨーダに是非聞いてみたい質問やアドバイス、応援メッセージも大募集しています! マスターはすべての書き込みに目を通してますよ!


マスターヨーダの喫茶室は土曜日更新です。

山田隆弘先生

山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。

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