私のChatGPT活用アイデア:テスト採点、日程作成、指導事案整理|岩月駿人 先生(愛知県公立小学校)

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ChatGPTがもたらす教育パラダイムシフト
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小学校教員の「学校における働き方改革」特集!

ユーザーからの様々なリクエストに高度で自然な回答を返すAIサービス「ChatGPT」を、教育の現場でどのように扱ったらよいのか、教室での手探りの実践が始まっています。今回は愛知県の公立小学校教諭・岩月駿人先生から届いた、教師の仕事軽減につながる活用事例の紹介です。

執筆/愛知県岡崎市立北野小学校教諭・岩月駿人

出力情報の信憑性や機密情報や個人情報の取扱など、ChatGPTを教育現場で使用する際にはいろいろと注意が必要な点はあるものの、使い方次第では教師の仕事を軽減してくれる可能性を秘めています。

以下に、筆者が実際に試してみた、教師の仕事を軽減できる可能性のあるChatGPTの活用例を3つご紹介します。

国語科テストの自動採点

多くの教師にとってテストの採点は避けられない作業の1つです。しかし、この採点作業は教師にとって大きな負担となっています。

文部科学省が平成26年度に行った「教職員の業務実態調査」によると、テスト問題の作成や採点業務への従事率・負担感は小学校教師で86.6%、中学校教師で93.9%に達しています。これは少し古い資料ですが、現状も大きく変わっていないのではないでしょうか。

そこで私は、国語のテストをChatGPTで自動採点できないかと考えて、試してみました。ChatGPTは前後の文脈を読み取り、記述問題の自動採点も可能です。

まず、児童の回答をテキストでメモします。できれば記述問題のところだけFormsなどのアンケートツールにて回答してもらうと、この作業がコピペで済みます。

次にChatGPTに以下のプロンプト(命令文)を入力します。

#命令書:あなたは、【国語教師】です。以下の穴埋め問題の回答を100満点で採点してください。その際に、以下の#制約条件をもとにしてください。

問題:メロスは(       )。
正答:激怒した。

#制約条件:
・10点ずつの採点とすること。
・評価する基準は、正答の意味に近い答えであるかどうか。
・なぜその点数をつけたのか、説明も添えること。
・採点の結果は、回答と点数と説明をテーブル表にして表すこと。

#回答
激怒
激おこ
激おこぷんぷん丸
怒った
めちゃくちゃ怒った
かなり怒った
泣いた
悲しんだ
笑った

すると、以下のようにChatGPTから出力されました。

各回答に対して採点し、その採点の理由まで説明してくれています。この説明があることで、子供に対して具体的なアドバイスができ、また採点に対する質問にも説得力を持って答えることができます。

懇談会の日程を自動作成する

懇談会は、保護者との大切なコミュニケーションの場ですが、日程調整は時間がかかる作業です。保護者の希望日時を募集し、集まった希望を日毎に分け、時間をノートにメモし、すべての家庭が重ならないように仕分けないといけません。

しかも、やっとの思いで完成させ、お知らせを出したところ「うちの希望と違うんですけど」なんて電話が入り、泣く泣く再度修正して印刷し直すなんてことも……。

このように「懇談会の日程決め」は、派手ではないけれど、自動で作成できたら助かる仕事の1つであると思います。そこで、ChatGPTで懇談会の日程を自動で作成してもらいました。

初めに申し上げると、まだ完璧な活用法とはいえません。ChatGPTが時折ミスをする可能性をもっているからです。今回ご紹介する実践例に関しても、ChatGPTは少しミスのある日程を出力しました。日程作成作業をChatGPTに任せ、最終チェックや修正を教師が行うという方法が最適と考えています。

手順です。まず家庭から募った希望日時をテキストデータで以下のようにまとめます。(今回は、19日〜21日までの3日間、13:00から16:00まで10分間隔でのスケジュールとしています)

懇談会の希望日時をFormsなどのアンケートツールで募れば、この作業はコピペで済ませることが可能です。ただし各家庭の名前は個人情報に当たるため、ChatGPTに入力する場合は偽名を使用したり名簿番号に置き換えたりするなどの配慮が必要です(余談ですが、今回は僕の好きな中日ドラゴンズの選手に名前を置き換えました)。

さて、家庭の希望日時のテキストデータを用意したところで事前準備は完了です。ChatGPTを立ち上げ、以下のプロンプト(命令文)を入力します。なお、今回はChatGPT4を使用しています。

#命令書:スケジュールを立てるのがあなたのミッションです。
まず、以下の#制約条件をもとにテーブル形式で表を作成してください。

#制約条件:
・左に時刻、上に19日、20日、21日の【見やすいテーブル表の形式】で出力すること。 
・時刻は13:00-16:00までの間で10分区切りとすること。

すると、以下のような返答が返ってきます。

まず、スケジュール表の枠を作成してもらいました。次に、以下のプロンプト(命令文)を入力します。

#命令書:以下は、人名とそれぞれの希望日時です。上記の表に、26人がそれぞれ希望する日時のうちのどこか1箇所のみに名前を表示してください。

”””””
項目名:人名 希望日 希望時刻
細川	19日	13:00-16:00
田中	20日	13:00-16:00
高橋	21日	13:00-16:00
鵜飼	19日	13:00-16:00
村松	20日	13:00-15:00
根尾	21日	13:30-14:00
大島	20日	13:30-14:00
田島	21日	14:00-16:00
橋本	21日	15:30-16:00
谷元	19日	14:30-15:00
柳 	19日or20日	13:00-16:00
梅津	19日or21日	15:20-16:00
髙橋	19日or21日	14:00-14:30
涌井	19日	15:00-16:00
岡田	20日	15:20-16:00
大野	21日	13:00-14:00
福元	21日	13:00-16:00
福谷	19日	13:00-16:00
石川	19日or20日or21日	13:00-16:00
石森	19日or20日or21日 13:20-15:00
太田	19日or20日or21日	13:00-15:30
森 	19日or20日or21日	13:00-16:00
三好	19日	15:20-15:50
仲地	19日	14:20-15:00
石垣	20日	13:30-16:00
福 	21日	13:00-15:50
””””””””
#制約条件:
・人名は、表の1箇所だけに表示すること。
・同日の同時刻に2人以上の人名が重なることがないようにすること。
・26人全員の名前を確実に表に示すこと。

こちらを入力すると、以下のように出力されました。

ChatGPTは長文だとスタミナ切れして、途中で止まってしまうことがあります。ですので、「続き」と入力しました。すると

以上のように、出力されました。

出力までの時間は約1分です。その短い時間で懇談会の日程が自動作成されます。しかし、出力された日程表には注意が必要です。実は、この懇談会の日程表には2つのミスがありました。1つ目は、岡田さんの時間が10分ずれて入力されていること、2つ目は、太田さんが入力されていないことです。

ChatGPTは完全ではないため、ミスをすることもあります。そのため、ChatGPTを使用する際には、出力された結果が正確であるかを必ず確認することが重要です。

しかし、それでも、全ての日程表を一から自力で作成するよりは、労力を大幅に削減できます。全体の作業をChatGPTに任せ、最終的にチェックを行い、誤りを修正するという使い方が効果的でしょう。

最後に、ChatGPTで出力されたスケジュールをExcelにコピペし、間違っている箇所を修正すれば、懇談会の日程表の完成です。

以上が、ChatGPTを利用した懇談会日程の自動作成方法です。完全な自動化は難しいものの、それでも1から自力で作成するよりは、効率的に作業を進めることができます。ぜひお試しください。

生徒指導事案の出来事整理

教師であれば、大小さまざまな生徒指導を行う状況に遭遇することは避けられません。しかし、関わった生徒たちの証言が一致しない場合や、問題が複数の日にわたって発生した場合など、事案の整理に時間がかかることがあります。

解決に向けては事実関係の把握が重要で、教師間で情報共有したり、将来の参考資料として保管したりする必要がある場合もあります。こうした際に、ChatGPTを活用することで、事案の整理を効率的に行うことが可能になります。

さて、具体的な実践例を見てみましょう。まず、ChatGPTを起動し、以下のように指示を入力します。

#命令:あなたは教師です。以下は、生徒指導の際に各児童から聞き取りを行った情報です。いつ何がどのように起きたのかを正確に把握するために、それぞれの行動を時系列でわかりやすくまとめてください。

#聞き取った情報
A君:・廊下を歩いていた。・後ろから来たB君に突然叩かれた。・「やめろよ」と言ったがB君は聞いてくれなかった。・むかついてB君を叩いた。・謝らずに立ち去った。

B君:・A君が廊下を走っていたから、「止まれ」と言ったが、A君は止まらず、「うるせえ」と言い返してきた。・腹が立って、A君を追いかけて叩いた。・A君にお腹を叩かれた。・自分は謝ったが、A君は謝らなくて許せない。

すると、以下のようにChatGPTは出力をしました。

以下に、A君とB君の行動を時系列でわかりやすくまとめました。

1. A君が廊下を歩いていた(B君の主張では走っていた)。
2. B君がA君に「止まれ」と言ったが、A君は止まらず、「うるせえ」と言い返した。
3. B君が腹が立ってA君を追いかけ、後ろからA君を突然叩いた。
4. A君が「やめろよ」と言ったが、B君は聞いてくれなかった。
5. A君がむかついてB君のお腹を叩いた。
6. B君が謝ったが、A君は謝らずに立ち去った。

このまとめにより、いつ何がどのように起きたのかを正確に把握することができます。今後は、この情報をもとに両者の話を聞き、適切な指導を行ってください。

ChatGPTは、時間の流れに沿って出来事を整理してくれます。特に、生徒指導でよくある「互いの証言が一致しない」といった状況も、

 1.A君が廊下を歩いていた(B君の主張では走っていた)。

とわかりやすくまとめてくれています。これにより、事実関係がはっきりと整理できるため、生徒指導やその後の職員への報告や事案共有に役立てることができます。

実際にこのように使用する際には、くれぐれも個人が特定されるような情報は入力しないようにお気をつけください。また、ChatGPTが入力された情報を学習しない設定にすることをお勧めします。

*  *  *

以上、ChatGPTが教育現場でどのように利用できるかの事例についてご紹介しました。教職員の皆様がこれらの情報を参考に、より効率的な教育現場運営に役立てていただければ幸いです。

執筆者・岩月駿人
愛知県公立学校教諭。1991年愛知県生まれ。愛知教育大学卒業。「子供も教師も毎日楽しく過ごせる学級づくり」をモットーに、教育技術やICTを活用した仕事術などを発信している。スクールタクト認定ゴールドマスター。

講評コメント

講評/北海道公立小学校教諭・藤原友和

まず国語の自動採点に使うというアイディアについてですが、初見でこの部分を読んだ時には、「テストの採点は、その子の思考の癖や理解度を測るために、教師が手作業でやった方がよいのではないか」と思いました。今も基本的にはそのスタンスでいます。

しかしながら、岩月先生は評価に際して「基準」を明らかにして子どもとも共有することができそうな取り組みに見えます。だから、「テストの採点」と言うよりは、単元の中で評価基準を明確にした授業づくりの一案と捉えた方がよいように思われました。

次に個人面談の自動生成について。あくまでも「叩き台」として機械的に割り振ったものを生成させるにはよいアイディアだなと思いました。しかし、その反面、「異学年の兄弟と同日にしてほしい」「変更したい」という要望に柔軟に対応する必要が生じます。

私の学校では、Googleのジャムボードに全校児童分を一覧にして職員全員で共有しています。児童数が150人に満たないという小規模校であるが故に可能な方法ですが、こうしておくと兄弟間の担任の情報共有や変更にも対応しやすいです。岩月先生のアイディアをさらに活かしていくには、ChatGPTと他のアプリや校内のシステムと併用していくことがポイントになるのかな、と思いました。

生徒指導事案の出来事整理に使うというアイディアは、非常に面白い試みだなと思いました。が、実際に活用するにあたっては、まだ「手書きで図示化」の方が効率がよいように感じてしまいました。というのも、特に小学校における生徒指導事案では、「どこにいて、どこからどこへ向かって」という空間や位置関係といった、当人同士の認識以外の情報を加味しながら事実関係を確認していくことが必要である場合が多いためです。

ChatGPTは大規模「言語」モデルを参照しながら文章を生成しますので、事案の言語情報部分には適用しやすいと思います。また、岩月先生も書かれていたように個人情報に関わりますので、直接的な事例を書き込むよりは、学校事故の記録や、トラブル事例のパターン、判例などを質問して指導の参考に留めるのがよいのではないかと思いました。


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