遠足・社会科見学・宿泊学習・修学旅行を大成功させるポイント!
児童みんなが楽しみにする学校行事と言えば、遠足や社会科見学に、宿泊学習、修学旅行ですね。せっかくの貴重な体験です。児童みんなは安全に楽しく、教員のみんなは安心して実施したいものです。そのために、事前に心がけることをご紹介したいと思います。危機管理的な視点からアプローチしてみます。ちょっとした配慮で、行事は大成功。児童も教員もニコニコです。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
1 必ず「実踏」し、前準備しよう
校外活動の前には、現場に行ってあちこち見て回り、活動の疑似体験をしておくことが必須です。
昔からの教育用語に「実地踏査」、略して「実踏」という言葉があります。「下見」よりも詳しく調べ、調査をするという語感があり、児童を引率する担任の心構えとしてはピッタリな気がしませんか?
ぜひみなさんも、そんな気持ちで下調べしましょう。校外の環境は変わりやすく、去年行って安全だったから、とか、地図アプリで確認したところ大丈夫そうだから、といった予断は禁物です。
実際に、わたしも次のような事例に直面したことがありました。
●「熊や野犬など、危険生物注意の看板があった」→市役所や町役場に問い合わせて危険の状況を検討し、必要に応じて行き先変更
●「スズメバチの巣ができていた」→担当部署に駆除を依頼し、うまく進められなければ行き先変更
●「木製遊具に傷みを発見」→担当部署に修理を依頼し、その日までに修理が完了しないときは、使用禁止のテープを貼ってもらう、または学校で近づかないよう配慮する
●「歩行路で道路工事があった」→工事の警備会社に相談し、学校からも児童を案内する教職員を配置する
●「トイレが故障している」→別の場所にトイレがあるか確認し、必要に応じて集合地点を変更
などなど…。
特に注意して見ておきたいのは、
●トイレ
●水場
●救護場所(けが人・病人が発生した場合)
の3つです。
もし担当者全員が行けない場合は、デジタルカメラで撮影して共有しましょう。
また、身体的に配慮を要する児童がいる場合、保護者が同伴することもありますので、配慮することを忘れず、早いうちから綿密な打ち合わせをしましょう。
2 引率者にふさわしい服装とは
児童の服装は、活動に応じて運動着、普段着の2つの選択でしょうが、引率者はいろいろな配慮が必要です。
ア 公的な場所、例えば歴史資料館や博物館などに行く場合、先方の説明担当者がスーツなどカッチリした服装であることが予想されるなら、引率者(せめて代表者くらい)も同等にカッチリした服装で臨むべきです。
イ 遠足や運動的な活動を予定しているときは、児童とともに動くことができるような、伸縮性の高い運動着などで臨むべきです。
ウ 自然の中で体験活動がある場合は、進出色(白やピンク、黄色などの、前に出てくるように見える色)の服を着用すべきです。特におすすめなのは、レスキュー隊員の制服になっているような蛍光のオレンジ色です。
エ 修学旅行では、フォーマルな服装も必要ですが、上と同じように進出色のトレーナーなども持参します。特にバス移動におけるトイレ休憩など、児童が乗り物から降りてトイレに移動するときが危険です。担任はいち早く降車し、進出色の服装で、周囲の車と児童の両方に対して目立つような場所に立ちます。そして手を広げて児童を誘導し、守りましょう。
オ キャンプなどの野外活動では、靴はすべらないものを利用したいです。スニーカーが断然おすすめです。キャンプ用具をのせたリアカーを引いていた校長せんせいが、革靴を履いていたばっかりに、足を滑らせて谷底に落ちた事例を目撃したことがあります。安いスニーカーなら、ドロドロになっても惜しくないですよね。
ちょっとした工夫で、児童から引率者が見えやすくなり、安全に指導できるようになります。
3 集合の約束を確実に
校外で様々な活動をすると、夢中になってしまう児童もいますし、疲れてしまう児童もいるでしょう。終了しても、時間通りに集合場所に集まらない、ということが最大の問題です。
でも、ちょっとした工夫で、不安を回避できますよ。
① ホイッスルを使う
特に活動場所が広いとき、体を動かす活動のときに威力を発揮します。
例えばですが…
「ピー、ピー、ピーーーーーーーー(最後は長く)」(これを数回繰り返します)
これが聞こえたら、「集まれ」のサインだと伝えます。
また、例えばハチがいる、などの不測の事態のときは
「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ」(短く強く何度も)
これが聞こえたら、周囲に注意することを徹底させます。
② 時間で動かす
広いエリアで班ごとの活動をしていく場合、特に高学年は、自分たちで持参している腕時計や園内各所の時計を見て、行動させるようにしたいです。『5分前行動』を意識させるようにしていきましょう。
集合の時間が近づいてきたら、児童の活動範囲の外縁で教職員が円状に並び、中央に向かって移動し、どんどん円を小さくしていく要領で、児童の活動範囲を狭めつつ、残った児童がいないことを点検していきましょう。
◆
最後に笑い話を。昔、職員だけで箱根に旅行に行ったことがありました。社会科の素材がたくさんあり、社会科好きの教頭せんせいが、見学に熱中するあまり集団からはぐれてしまいました。いないことに気づいたのは15分後くらいだったでしょうか。手分けして必死に探しました。慌てた教頭せんせいが移動し続けていたので、わたしたち捜索隊も見つけられず、壮大な鬼ごっこのようになってしまいました。
「はぐれたら、その場でステイ!」ですね。
児童たちには絶対あってはならないことですが、そんな笑い話とともに、伝えておくのもよいかもしれませんね。
イラスト/したらみ
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マスターヨーダの喫茶室は土曜日更新です。
山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。