3年生担任になったあなたへ1年間の見通し&10の戦略!
校長先生より3年生担任を命じられたあなたは、どんな担任になればよいでしょうか。
2年までは、自分を中心に世界が回っていて、「自分が自分が…」といった生活が多かったですが、3年生では仲間意識をもつようになって、関わり合いの良さを感じるようになってきます。世界がぐんと広がってきます。こんな10のポイントを意識してみましょう。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
学習指導・生徒指導編
1 児童の声を拾う
3年生になる頃から、児童の「メタ認知」の力はどんどん伸びてきます。これは、自分の認知活動を客観的にとらえることです。つまり「認知していることを認知すること」です。
具体的には、
①自分が生み出した学習活動の結果をチェックする
②自分が行っている学習活動をまわりの児童に聞いてみる
③前もって問題の答えを予想する
といったようなことです。
授業中に、児童はいろいろな声を発します。授業から逸脱したものはスルーしていかなければならないのですが、「授業に関わる、課題の解決に向けられた小さな声」もいたるところで発せられています。
「つぶやき」とも言われるものです。こういったものを拾っていくことで、メタ認知を広げていきたいです。
「これでいいのかな…?」
「この答えで合ってるの?」
「ねえねえ、○○って書いたんだけど…」
「予想しました!」
「たぶん、これだ!」
などなどです。
「はい! はい!」「それでは、○○さん」と挙手指名型だけでやっていると硬直した授業になってしまいます。
児童の声を拾いながら、ブレーンストーミングの時間を設定したり、ペア学習やグループでの学習の形をとったり、あるいは自由交流の時間をつくったりしながら、授業を活性化していきたいです。
2 めあてを意識させる・学習の手引きを使う
1年生、2年生の授業では体験や活動をさせたり、1校時の学習時間にひたったりすることで、気づき、学んでいくことが多いわけですが、3年生からは、1時間のめあてや単元全体の学習の構造をしっかり意識させていきたいものです。
単元に入る前に、教科書にある学習の流れを概観していきます。
こんなことを学ぶんだということを意識させます。
例えば、国語での学習では、扉の絵、題名、さし絵などから多くを語らせ、それらを学習に位置づけていくようにしたいです。国語の学習は、案外さっと授業に入ってしまいがちですが、最初に「学習の手引き」のページにじっくり時間をかけて、最終的にどんなことをするのかをイメージさせることが大切です。
算数の学習では、単元末の練習問題などを見せて、「これが解けるようになりたいね」と最終的なゴールイメージをもたせていきます。
社会科や理科では最終的にどんなふうに学びをまとめるかといったことを計画の中で意識付けさせたいです。
音楽、図工、体育などでも最終的な目標達成モデルを最初に示すことで学習への意欲喚起をしていきたいです。
3 ノートづくりの力を伸ばす
1年生では、ノートのマス目にきちんと書くこと、2年生では、ノート整理の力をつけることなどが大きな目標ですが、3年生では、いよいよマイノートづくりに力を入れる学年です。
決められたノートの形式として
●日付
●ページ数
●めあて(例;青色で囲む)
●自分の考え
●友だちの考え(学んだこと)
●まとめ(例;赤で囲む)
●振り返り
などが基本的なノートづくりのポイントですが、これらを整然と見やすく書くことを指導したいです。
4月、5月は、授業後にノートを集めて細かくアドバイスをしたり、上手に書いている児童をモデルとして紹介したりすることも大切です。
ノートを「思考の作戦基地」となるよう、自分の考えを整理できるものにまで高めていきたいです。
3年生になると、だいぶ筆速力も上がり、たくさんの文字を書くことができてきます。
頭の中で考えながら発表発言することが苦手な児童もいます。そんなときには、ノート発言として、ノートに書いたことを発言させると、抵抗なく授業に参加させることができます。
4 初めてのものにチャレンジさせる
3年生で初めて出てくるものについては、児童の抵抗をなくし、わくわく興味いっぱいのものにしていきたいです。
① リコーダー
3年生からリコーダーの学習を始めます。
器楽において、リコーダーの演奏はなかなかの難題です。手先が器用でない児童はリコーダーの穴をふさぐということがとても難しいです。
リコーダーの演奏は、算数の九九のようなものです。最初は誰一人として九九をすらすら言えないものですし、九九がしっかり頭に染み付いてはじめて、計算での思考がスムーズに行えるようになります。リコーダーをしっかり覚えることは、今後音楽好きになるか、嫌いになるかの大きなポイントと言えます。音楽の教科書で少しずつマスターしていくこともよいのですが、リコーダーの演奏スキルを楽しいものにするために、例えば、
●救急車のサイレン、チャルメラなどのおもしろソング
●アニメソング
●コマーシャルソング
●聞いたことがあるクラシックソング(一部)
などを練習曲にして興味を持たせながら練習させることもよいですね。
また、リコーダー演奏スキル向上のための参考書がたくさん出ているので、目を通してみてください。
② 外国語活動(英語)
とにかく楽しさを演出することが大切です。雰囲気づくりがすべてです。
音楽と英語の時間は、「お説教の時間はなくせ」とよく言われますが、やはり生徒指導上のお説教やお叱りの時間があると、雰囲気が壊れてしまいます。
つねに笑顔を心がけ、英語の世界にひたることができるようにしたいですね。
UNITでは最低限、どんな表現にふれ、習得すべきか、ねらいをはっきりもって活動していきたいです。
とにかく英語を話す、体験する機会を多くもつことに配慮したいです。
③ 社会科・理科
3年生から本格的に始まる教科学習に社会科、理科があります。
それぞれの教科の本質を理解し、生活科のような気づきを大切にしながら、社会認識力や科学探究力をどう育てるかを考えて授業づくりをしていきたいです。
3年生では、外で体験的にフィールドワークとして学ぶことが多いです。
どんな学習環境があるか、この単元ではこの場所を使おうとか先々を考えていかなければならないです。
3年生の社会科や理科は事前準備がかなり必要です。しっかりと計画しましょう。
④ 毛筆
3年生では書写の時間に毛筆の学習が入ります。
案外、せんせいによって、毛筆指導には差があるようです。勤務校でスタンダードとされている方法を把握し、4年生以上になってもその方法を続けていくことを前提に指導したいです。
例えば、次のようなポイントです。
●どんな半紙を使うか
●墨汁の使い方
●筆おろしのし方
●筆の処理手入れのし方
●硯に残った墨の処理のし方
●練習に使った半紙の処理のし方
●できた作品の扱い方
字を書くことを楽しむ児童を育てたいです。
5 あいさつ・会釈・歩き方を鍛える
2年生までは、自分と担任のせんせい、自分と隣の席の子、自分とクラスの子、あるいはお世話に来てくれる6年生というような人間関係でしたが、3年生となると、対人関係の広がりがかなり出てきます。人間関係を意識するようになってきます。
隣のクラスの友だち、隣接学年の児童、そして学校のせんせい方などを認識していきます。
そのために、あいさつは徹底させたいです。
気軽に「おはよう」「こんにちは」「さようなら」とあいさつし、廊下を歩くとき、せんせい方には軽く会釈をするような指導をしていきたいです。
1年生、2年生は廊下を飛びはねたり踊ったりしながら歩いていますが、3年生では、整然と歩く、走りたい気持ちをおさえて、まわりに配慮しながらゆっくり歩いて移動するということをしっかり指導していきたいです。
メンタル編
6 読書の幅を広げ、心を豊かにする
3年生になると読書も一段と進化します。
絵本、あるいは絵や写真がたくさんある本から、文章が主体の本への移行です。
読むスピードが上がり、自力での読書力が向上していきますが、まだまだ抵抗のある児童もいます。
●「アニマシオン」から学ぶ本を好きになるゲームやクイズの楽しい活動
●読書郵便、親子読書などのほかの人を巻き込んだ活動
●絵本帯づくり 本の紹介コーナーづくりなどの紹介活動
などを計画的に実施し、児童の読書の幅を広げていきたいですね。
読書とは、心を豊かにすることです。じっくり読書の時間を確保していきたいです。
7 自己の広がりを感じさせる
1年生、2年生は学校から学区内という範囲での学びでしたが、3年生からは居住地の市町村レベルへと、学びのフィールドが広がります。
交通事情によって自転車にも乗り、自分の活動範囲を広げていきます。
電車やバスにも乗ることができるようになり、遠くまで交通機関を使って移動もできてきます。
そこでは、社会のルールを守り、どうすれば快適に利用できるかを考えさせたり、そこで働く「ひと」を意識させることが必要です。
社会科あるいは総合的な学習の時間を通して、自分を取り巻く環境を広く感じ取っていくようにしていきたいです。
わたしが小学校3年生のとき、友だちと自転車旅行を企画し、まだ知らないほかの学校の学区めぐりをしたことを思い出します。今思い出せば、わずか20kmほどの距離でしたが、子供にとっては一世一代の、わくわくの大冒険でした。
国道の下り坂をかっ飛ばして止まりきれず、一回転する壮大な自爆事故を起こした仲間もいました。行動範囲が広がっていく分、交通安全指導も徹底したいです。
8 ぶつかり合いOK! アフターフォローをする
3、4年生は、「ギャングエイジ」と呼ばれ、小グループ化し、だいぶやんちゃな行動が目立つ時期です。
時には反抗的にもなります。
四六時中、あちらこちらで児童間で集団化し、ついたり離れたりして活動し、相互に集団への献身をメンバー相互に要求し合うようになってきます。
構造も上下関係や役割分担が明らかになってきて、ギャング集団のようになってきます。
しかし、これはマイナスではなく、集団活動を楽しみ、男女の集団別の差はあるものの、比較的いろいろな児童と結びつき、自分たちの生活を築いていくことになります。
保護者やせんせいは、基本的にはこの期の児童にとっては信頼すべき存在で、親密に接することが多いわけですが、仲間同士の秘密やルールを最優先にするので、集団で反発することもあります。
こういった人間関係を通して、ぶつかったり、賛同したりと忙しいわけですが、その中から学ぶことも多いわけで、トラブルがあった時はアフターフォローをしっかりとしてあげましょう。
やさしく大らかに見守っていきたいです。
9 共感する心を育む
この時期は、男女による意識差がかなり出てきます。
男女が分かれて過ごすことが増え、男女が遊ばなくなることが多くなります。
学級では男女間でだんだんぎくしゃくしてきて、「男子が!」「女子が!」と主張してまとめていくのが難しくなってきます。男女の交流を活発にしていくことがキーポイントです。
そのためには、
●男女混合での活動を多くする
●グループでのめあて・活動を設定して振り返る
●学級イベントを設定し、男女で遊ぶゲームを設定する
●「○○ちゃん」とか呼び捨てではなく、「○○さん」と呼び合うようにする
などをしていきます。
男女で協力することの大切さに気づかせていきたいです。
担任がいくら説明や説諭をしても人間関係は深まりません。
体験させ、良さに気づかせ、価値づけていかなければならないです。
例えば、良い行動が見られたときは、画像に撮っておき、その行動の良さをまとめ、シートにまとめて教室に掲示しておくということも良い方法です。
こうして「共感する心」や「思いやりの心」を育んでいきたいです。
10 発達障がいのある児童へ対応する
3年生担任が意識しなければならない大きな仕事の一つに、発達障がいのある児童の保護者への働きかけを本格化する学年でもあります。
LD、ADHD、ASDなどの特徴がある児童への指導ですが、低学年のシンプルな学習内容や学習方法では、どうにか学級担任の支援や合理的配慮で進めることができていたとしても、3年生で抽象的な思考が必要とされ、より高度な協働の学習方法を使ってとなると、なかなかうまく進めることができなくなってきます。
学校内で支援体制を考え、該当児童がどのような困り感や障がいがあり、どんなことが苦手なのかをきちんと分析する必要があります。
保護者と何度も面談をし、同意を得ながら検査を計画的に実施し、児童の苦手を理解し、どんな手立てでアプローチすべきか検討していきたいです。
また、該当児童のタブレットを利用した学習方法なども模索し、校内ではどのような支援リソースがあるのか、学級ではどんなことを配慮すべきなのかを考えていきたいです。
◆
以上、3年生担任を拝命したときの、10の戦略を考えてみました。
全部でなくても、ぜひできるところから始めてみてください。
4年生へうまくつなぐために…。
【参考図書】
『学級経営70のポイント―小学校学級担任必携〈中学年〉』/中村 満洲男(東洋館出版社)
『小三教育技術』(小学館)
イラスト/したらみ
こんな問題を抱えているよ、こんな悩みがあるよ、と言う方のメッセージをお待ちしています!
その他にも、マスターヨーダに是非聞いてみたい質問やアドバイス、応援メッセージも大募集しています! マスターはすべての書き込みに目を通してますよ!
マスターヨーダの喫茶室は毎週土曜日更新です。
山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。