【相談募集中】教師が注意すれば言うことを聞くのに、子どもが注意しても聞いてくれません

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北海道公立小学校教諭

藤原友和

教師が注意すれば言うことを聞くのに、子どもが注意しても聞いてくれずに困っているという先生から「みん教相談室」に相談が届きました。「わかるー!」と、首の関節が壊れるほど頷いた、という北海道公立小学校教諭 藤原友和先生が、具体的なアドバイスをくれましたのでここにシェアします。

イラストAC

Q. 教師が注意すれば言うことを聞きますが、子どもが注意しても聞いてくれません

「私は、小学校4年生のクラスで働いています。私の学校では、学校のルールで右側通行をしないといけません。先日、クラスの委員長から、自分がクラスメイトに『右側を通りましょう』と言っても、全然言うことを聞いてくれない、と、相談を受けました。教師である私が『右側を通りましょう』と言えば、言うことを聞きます。どうしたら、子どもの注意も聞くようになるのでしょうか」(ヒョウゴ先生・30代女性)

A. 教師としてできることを、2つの視点から考えてみましょう

「4年生」というのがポイントですね。「わかるー、わかるー」と首の関節が壊れるほど頷きました。あるあるですよね。こうした場面。

かくいう私も、児童会の担当でありまして、いわゆる「点検」的な活動や、「呼びかけ」的な活動は何度も何度も取り組んできました。それらの中には「やってよかったなぁ」と思うものもあれば、「あの時はよかったけれど、いまやるかといわれたら……」というものもあります。

そんなおじさん視点から、ヒョウゴ先生の相談に答えていきたいと思います。

問題を整理する

ヒョウゴ先生からの訴えは、いくつかの視点で分けることができると思います。

私なりに整理してみると、以下のようになります。

 ① 「学校の約束」を守っていない現状がある。
 ② クラスの委員長は、問題解決に対して積極的である。
 ③ クラスの子どもの中には、クラスの委員長の呼びかけに応えない子がいる。
 ④ 担任は、できれば子どもが主体的に解決してほしいと考えている。

いかがでしょう。ここまでの話はOKですか?

要は「守らなければいけない約束」を「守るようにするにはどうしたらいいか」というお悩みと、「子どもが主体的に問題を解決してほしい」という願いとが含まれていると、私は読み取りました。さらに後者には「その過程ではクラスの委員長という役目を果たしてほしいし、他のメンバーにはフォロワーシップを発揮して集団の向上に寄与してほしい」というものもありそうですね。

つまり、2つの領域の問題である、

 A 「規範意識」の醸成問題
 B 「自治的集団」の育成問題

とが混じっているように思われます。

もちろん、これらは特別活動という実践的な場で、一体的なものとして指導されていくのでしょうけれども、まずはとっかかりを見つけなければいけません。そこで、便宜上、このように分けて考えてみることとします。そして、それぞれについて、「もとになる考え方」と「取り得る手立て」を提案させていただきます。

もちろん、「提案」ですから、採られるのも捨てられるのもご自由に、ということで進めますね。

「規範意識の醸成問題」として考える

12年ぶりに改訂された「生徒指導提要」では、生徒指導という営みを次のように定義しています。

社会の中で自分らしく生きることができる存在へと、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動(「生徒指導提要」p.12)

また、「特別の教科 道徳」では、第3学年及び第4学年の内容項目C-(11)に以下のように示されています。低学年との大きな違いは「意義を理解する」という内容が入っていることです。

約束や社会のきまりの意義を理解し、それらを守ること。

「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」p.24より

以上の記述から、学校の約束である「廊下は右側通行」という決まりの意義を子どもたち全員が理解することが必要であり、さらにそれらを「説明されたから」とか「叱られるから」ではなく、自ら主体的に行動として選択できるように育てていかなければならない、ということですね。

はい、ここまでが「もとになる考え方」です。

では、これを実現するためにはどんな手立てがあり得るでしょうか。思いつく限り列挙してみてください! はいどうぞ!

 ①(           )
 ②(           )
 ③(           )
 ④(           )
 ⑤(           )

あ、「答え教えてくれないんだ……」という残念そうな顔をしないで!

もう少し、スマホを閉じるの、待ってもらっていいですかぁ~!

……ふぅ、よかった。もう少しだけ聞いてくださいね。

まず、子どもを指導するにあたって、教師自身の価値観が大きく影響します。「決まりだから守りなさい」と言った場合と、「右側通行をみんなが守っていると、どんないいことがあるんだろう? 逆に守らないとどんな困ったことが起こるんだろう」と対話的に進めようとした場合とでは、子どもが感化される力が大きくなるのはどちらでしょうね。

決まりの意義を理解できるように指導するのは、道徳の時間かもしれません。朝の会でのお話かもしれません。何か事故が起きてしまった時の全体指導かもしれません。どのような場面であれ、子どもたちとの生活の中では指導すべき場面はたくさんありますよね。ええ。たくさんあります。毎日あります(泣)。

それを根気強くやっていきながら、「少しは育ってきたかしら」という日を修了式までに迎えられたらいいですね。1年通して不十分だったかもしれません。けれど、次に担任してくれる先生が繰り返し指導してくださるでしょう。

この節のタイトルを、規範意識の「醸成」問題であるとしました。醸成というのは、米が発酵し、アルコールを産出してお酒ができることを言います。つまり、時間がかかるわけです。「学校の約束を守ることができる子どもを育てる」ことは、そうした息の長い取組です。

であるならば、4年生の現在の時点では、どこまでを求めたらいいのでしょう。そして、どこから始めたらいいのでしょう。それは子どもたちの実態や、学校がそれぞれにもっている教育課題によっても変わってくると思います。ヒョウゴ先生の学校の4年生のお子さんたちにはどこまでを求め、何から始めるのが良さそうですか? 是非、同僚の先生方と話し合ってみてください。

あ。「ネットの相談室」という立場から離れてる! ごめんなさい。でも、せっかくの課題意識ですから、先生方と共有すると財産になると思うなぁ。

ちなみに、僕なら「クラス委員長さんが困ってるんだけど、どうしたらいいかなぁ」と朝の会でさらっと投げかけます。そして、帰りの会で「先生はみんながどうするかなぁと思って見ていたんだけど、〇〇さんの歩き方はよかったなぁ。〇〇さんは注意されて直してた。見直した。委員長さん、〇〇さんが直してくれたとき、どう思った?」と、振り返りの機会をつくります。まずはそこから始めて、子どもたちがどう動くのか観察すると思います。

「自治的集団の育成問題」として考える

はい、すでに相当な字数を使ってしまったので、こちらはさらりといきます。

読むのも疲れたでしょ(笑)? 

ヒントはもう前節でお示ししました。

そうです。問題解決に向けて教師がファシリテートする例を挙げたわけですが、これを子どもたちが教師に代わってできるようになればいいのですよね。子どもたちをファシリテーターとして育てる、ということです。そして、自分たちの問題を自分たちで解決できる集団にしていくというアプローチです。

そのためのメソッドは、教育界にはたくさんありますよね。ホワイトボードミーティングや、クラス会議などは有名です。また、学級会の実践から得られた知見も書籍や論文でたくさん残っています。p4cという哲学対話の方法論も目にしたことがあります。

「そんな気が長い話ではなく、即効性のあるものを」と求める気持ちも、もしかしたらあるかもしれません。ごめんなさい。それは僕にはよくわかりません。ただ、クラス委員長さんが苦しい思いをしているというのであれば、その頑張りを認めつつ、「禁止と命令」で約束を守るように呼びかけてうまくいかなかった経験を学びにできるようにしたいです。「どうしたら守ってくれそうか、みんなで考えてみないかい?」と話すように思います。「対話と相談」にモードチェンジするお手伝いをするわけです。たぶん。どんな子か分からないので、あくまでも一般論なんですけど。

まとめ

ヒョウゴ先生、相談ありがとうございました。先生の年齢からしても、もう職場では中心的な役割を果たされているのだと思います。10歳くらい年齢が上のおじさんも、一緒になって考えた気持ちになりました。ここまで長々と書いてきたことをまとめると、以下の2点になります。

① 「困った!」は成長のチャンス! ぜひ、子どもと一緒に困ろう
② 「1年間を通した成長」という広い枠組みから捉え直すと何が見えそう?

僕がヒョウゴ先生と同僚なら、きっと一緒に困って「どうしたらいいんだべか」と放課後にせんべい食べながらお話ししていると思います。ヒョウゴ先生の学校にもそういう同僚がいると思います。ぜひぜひみんなで困ってください。困ったことを解決するために1つみんなで行動できたら、それはそのまま「学校の実践」となるわけですから。

ここまで読んでくださってありがとうございました。おじさん、頷きすぎて首が痛いので先に帰ります。ではまた!

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