小3 国語科「気もちをこめて「来てください」」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3 国語科 「気もちをこめて「来てください」」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小三 国語科 教材名:気もちをこめて「来てください」(光村図書・国語 三上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都練馬区立大泉学園小学校校長・加賀田真理
東京都西東京市立田無小学校校長・前田元
執筆/東京都昭島市立富士見丘小学校・松清のぞみ

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、案内の手紙を書くことを通して、相手や目的に応じて伝える内容を明確にすることや、相手に応じた表現を用いて文章を整える力を身に付けます。

相手にとって分かりやすい内容にするためには、相手の立場になって必要な情報を取捨選択することが求められます。
手紙の型に則って書きながらも、相手に応じて内容を考えたり、相手にふさわしい表現を使ったりすることに児童の意識を向けさせ、相手や目的に応じて書くとはどういうことなのかを、具体的に考えられるようにします。
この視点は、文や文章を整える推敲の際の重要な観点にもなります。書字の正しさや丁寧さだけでなく、相手に合った内容や表現になっているかという視点で読み返したり、読み合ったりすることで、相手や目的に合わせて文章を整える力も身に付けられるようにします。

2. 単元の評価規準

評価規準

3. 言語活動とその特徴

「手紙を書く」という言語活動については、1年下巻「てがみで、しらせよう」、2年下巻「すてきなところをつたえよう」でも学習していますが、一般的な手紙の形式に触れるのはこの単元が初めてとなります。
宛名、差出人、挨拶、日付などを書く必要があることや、その書き方、さらに本単元の指導目標の一つである「丁寧な言葉を使う」ことや「敬体と常体の違いに注意」して書くことを、この言語活動を通して習得することを目指します。

敬体と常体の違いについては、教材文の手紙の構成を整理したメモでは常体、実際に出す手紙は敬体になっていることに気付き、目的や相手による文末表現の違いに気付けるようにします。

敬語については、第5学年及び第6学年の指導内容ですが、児童はこれまでの学習で丁寧な言葉と普通の言葉の違いについて学習してきていますし、敬体で書かれた文章になれていますので、その経験を生かして、相手にふさわしい丁寧な言葉遣いを児童なりに考えられるようにします。

また、相手の顔を具体的に思い浮かべることで、より強く相手を意識できるようにするため、お世話になった先生や地域の人など、児童が相手に選びそうな人の写真などの資料を事前に用意できるとよいと思います。
相手を意識しながら心を込めて書いた手紙が実際に相手のもとに届き、返信などの反応があると、手紙で書いて伝えることの良さや楽しさが実感できるはずです。

相手方のご負担には配慮が必要ですが、事前にお願いしておいたり、担任からの依頼の手紙も一緒に送ったりすることで、返事がいただけると、指導の効果を高めることができます。
今後も手紙を書いてみたいという思いをもつことができれば、学んだことを実生活の中で活用できる単元となるでしょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉「手紙を書いて送る」ことに意欲とゴールイメージをもち、学習過程を考える

2年下巻「お手紙」のがまくんは、手紙をもらったことがないことを嘆き、はじめてもらったかえるくんからの手紙をとても喜びます。
また、児童の生活の中でも、お誕生日カードや年賀状などをやりとりする様子が見られます。メールやSNSなどデジタルでのやりとりが主流となった今は、より一層、手書きの手紙をもらった嬉しさを感じられることでしょう。
このような、これまでの学習経験や生活経験を想起することで、自分もだれかを喜ばせるような手紙を書いてみたいという、手紙を書くことに対する意欲をもつことができます。

その上で、本単元では「相手や目的に合わせた手紙の書き方を考えよう」と呼びかけます。
また、実際に手紙を届けるところまで単元を設定することで、取り組む意欲をさらに引き出すとともに、単元のゴールイメージを明確にします。

このように進めることで、手紙の完成や相手のもとに届くまで、どのようなことをどのくらいの時間をかけて行うかといった単元の学習過程を児童と一緒に考えながら計画を立てることができます。

〈対話的な学び〉「内容の検討」や「推敲」の場面を効果的に設定する

相手や目的を意識した内容になっているかという観点から自己評価することは、経験を重ねなければ難しいことです。そこで、友達と相互に確認し、友達との対話の中で自分が見落としていた点や付け加えるべき点などに気付く場面を設定します。

具体的には、手紙で伝える内容を整理したメモの段階で内容の確認の場面を設けます。
そして、手紙の下書きの段階では、表現の確認の場面を設けます。このような確認の機会を意図的に、計画的に設定することで、よりよい書き方を目指して互いのよさを見つけ合い、自分の学習に反映していくことができます。

〈深い学び〉 モデル分析で、より深く思考する

相手を決め、その相手に行事を見に来てもらう、見に行きたいと思ってもらうという目的のために、どのような内容を書くべきかを考え、相手のために必要な情報の取捨選択をすることは本単元の重点の一つです。

ここでは、手紙の内容を整理するためにメモを書きますが、このメモの段階でこの重点を押さえられるようにするための「モデル分析」を、相手による違いを比較する形で行うとよいでしょう。

教材文の「森川さんのメモ」は、保育園でお世話になった先生を相手に「日時」「場所」「自分がすること」「気もち」を表に整理しています。
では、相手が「おじいちゃん」ならどうでしょう。伝える内容に違いが生じるはずです。
また、「日時がない」「余計な情報が入っている」「項目が多すぎる」など、児童がこれでは相手に分かりづらい、ふさわしくないと思えるモデルも示すことで、相手に必要な情報を選び取る意識を強くもたせることができます。

同じことは、手紙のモデルでも可能です。
「時候のあいさつが季節と合っていない」「メモの情報が入っていない」「丁寧な言葉遣いになっていない」など、学級の児童の実態に合わせてモデルを作成するとよいでしょう。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)学習の過程を画像に残し、単元の重点に応じた評価につなげる

「書くこと」の評価は、成果物の評価のほか、学習過程それぞれの場面において適切に評価した上で、単元の重点に応じて評価の対象を工夫する必要があります。

本単元では、手紙に書く内容を整理したメモや、それを相互に確認し合う様子も、ここで身に付けた力を見取る上で重要になります。
そこで、1人1台端末を活用し、メモや書き上げた手紙を写真に撮り、画像として残します。こうすることで児童同士の交流がしやすくなるとともに、画像上にコメントや印、線などを書き込んだ状態で残すこともでき、単元を通しての児童の変容や思考の過程が可視化され、総合的な評価が可能になります。

6. 単元の展開(6時間扱い)

 単元名: 大事なことを考えて手紙を書こう ~気もちをこめて「来てください」~

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 学習課題を設定し、学習計画を立てる。
・これまでに手紙をもらったり書いたりした経験などについて話し合う。
・案内したい行事を決め、手紙の完成までの見通しをもつ。

・第二次(2時3時4時5時
② 案内する手紙を送る相手を決め、伝えることを考える。
③ 伝えることをメモに整理し、友達と読み合って内容を確かめ合う。
④ 手紙の組み立てを確かめ、手紙を書く(下書き)。
⑤ 書いた手紙(下書き)を読み合って表現を確かめ合い、清書する。

・第三次(6時)
⑥ 単元の学習を振り返る。
・手紙を届ける際に必要なことを確かめる。
・これまでに書いた手紙との違いを考え、案内の手紙を書くときに大切なことをまとめる。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

1時間目は、学習課題を設定し、学習計画を立てる時間です。

この時間のポイントは、相手や目的を意識して手紙を書くという学習課題に意欲をもてるようにすることと、単元全体の学習活動の見通しをもてるようにすることです。

まず、記憶に新しい2年下巻の「お手紙」のストーリーや手紙にまつわるエピソードを発表し、手紙を書く活動に対する意欲を引き出します。
その上で、本単元で扱う「案内状」について、児童が書いたりもらったりしたことのある手紙との違いや、「案内」できる行事とできない行事との違いを押さえます。
案内する行事については、各学級の実態により統一してもよいでしょう。(本単元では運動会で統一して進めることを想定しています。)

「主体的な学び」のために

・「相手や目的を意識して」手紙を書くというゴールイメージがもてたら、次はその手紙を書くための学習計画を立てます。学習計画の立案に慣れていない児童には、「こういう手紙を今すぐ書ける?」と問いかけてみましょう。すぐには書けない、ではどうしたらよいかという主体的な思考が動き出します。

・学習計画の立案に向けて、児童とやり取りをしながら、情報の収集や内容の検討、構成の検討、考えの形成、記述、推敲、共有という学習過程を児童と一緒につくっていきます。
また、書いた文章を確かめるタイミングについてもこの時点で考えます。
どの段階で確認をしたいかを考えることで、より主体的に自分の文章を確かめることを目指します。

このような経験を積むことは、本単元のみならず多くの「書くこと」や「話すこと」に役立ちます。ここで出された児童の発言や学習計画は、模造紙に記録したり板書の写真を撮ったりして、次時以降に生かします。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例

2時間目は、案内する手紙を送る相手を決め、伝えることを考える時間です。

イラスト/横井智美

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