小学校理科の授業づくり、私の勉強方法 【進め!理科道〜よい理科指導のために〜】#19
今回は、私が理科の授業づくりに興味をもち、どのように理科の授業の勉強にハマったのかについてお話ししたいと思います。私自身は、理科の授業づくりは本当におもしろいと思っています。なぜならば、自然事象の追究する中で、子どもたちの発見したときの驚きや喜びが出やすい教科だからです。同じ学習内容でも先生の授業の工夫一つで、とても楽しい授業になるのです。
「理科の指導についてどのように勉強したらいいですか?」よく学生から聞かれる言葉です。授業力はすぐには身につくものではありませんし、人によって身に付け方は全く異なると思います。一つの方法としてお読みいただければと思います。
執筆/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.工作好きから理科好きになる
私が理科好きになったのは、小学校の2年生くらいのときです。当時は1年生から理科があり、時間をかけて体験しながら学んでききたように思います。小学校時代、高学年にあったクラブ活動でも科学クラブに入ります。理科の授業というより科学実験に興味をもっている子どもでした。中学校時代、そこそこ学習内容は理解していたため、理科への苦手意識もありませんでした。高校に行くと、生物の暗記で挫折し、理科を敬遠するようになります。結局、やさしい先生の化学だけとって文系に進んだわけです。高校の化学は、有機分野は得意でも、それ以外はダメ。私としては高校で理科の苦手意識を植え付けられたのです。
大学を選ぶ際には、教員養成系に進みましたが、子どもたちに理科の楽しさを教えたいと思い、理科専攻に進みました。私自身は、高校時代には理科ができたという経験はなく、それ以前の経験から理科専攻に進んだわけです。
2.目標となるモデルを見付けた! 大学時代の人との出会い
大学3年のころから、「学校の先生方が参加している理科の研究会がある」ということを聞きつけ、大学の先生に紹介していただき、研究会に参加します。当時は静岡にいたのですが、理科のよい授業を勉強するために東京や箱根など遠方でも行くようになります。実際行ってもよく分からない話がされていましたが、「とにかく、先生方が授業について熱心に語っている」ということだけは分かりました。私自身は、このような “熱い人” のように専門性をもちたいと思うようになったのです。ここで言えることは、近くに理科授業のプロと思えるモデルとなる人がいたということです。
3.うまくいかなかったときこそ、授業が失敗した原因を探れる!
着任1年目は、理科専科を任され、3年から6年までの半分のクラスをもたせてもらいます。大学3年生から理科の授業づくりに興味をもっているわけですから、最初の年からほかの教科よりも理科の授業に力を入れました。楽しみながらやっていたと思います。
理科の授業づくりに特にハマるようになったのは、「授業がうまい」と言われる先生の授業をマネするところからだったと思います。授業の構成から自分で考えるのではなく、まずはうまい先生の授業をそのままマネして、「自分が授業をやってみるとどうなるのか?」について考えたわけです。授業の構成から私自身で考えると、授業がダメだったときに、何がダメなのかわからないと思ったからです。
実際にやってみると、とてもうまくいき「自分がプロになったのでは?」と思えるくらい、想定された子どもの反応がありました。このときは、成功体験として授業の楽しさを得ることができたわけです。一方で、想定外の反応がある授業もありました。ここから分かったことは、想定と違ったときに、何がおかしかったのか考えることが大切だということでした。マネをする基となる授業があって、うまく授業ができている人がいるわけですから、授業がダメだった原因は、必ず自分の指導方法にあるわけです。このように、よい授業をマネして、うまくいかない原因を探ることを続けるようになったのです。
4.志を共にする仲間と話す機会を作り、授業研究の継続をする
自分自身だけで授業研究をしても、その授業がいいのか悪いのか分かりません。そのため、自分の授業を発表したり、相談したりする機会を積極的につくりました(市の研究会のように “年に数回” というレベルではなく、もっと頻繁です)。私は、(地域の研究会ではない)理科の研究会に入ったり、個人的に理科のベテランの先生指導を受けたりしていたために、頻繁に実践発表をしてほかの先生からの意見や改善案を聞くことをしてきました。1人より多くの人に見てもらったほうが、たくさんの視点で意見がもらえます。周りの先生方も「理科の仲間」として大切にして教えてくださいました。
このように、理科の授業について研究を継続できたのは多くの人との関わりがあったからだと思っています。私自身は、同じ市や地域という近くの先生だけではなく、全く違った地域の先生方とのかかわりもつくると、考え方が拡がりますし、新しい目標やモデルが見付かると思います。
5.「授業について話せる仲間が近くにいない」方は声を出してみよう
私は「やるかやらないか悩んだら、やるほうに進む」ように心がけています。やらない後悔より、やった後悔の方が納得できるからです。近くに相談できる先生がいない、もっと理科の授業づくりにハマってみたいという方は、「やりたい」「授業で困っている」という声を出してみましょう。近くに相談できそうな人がいれば、相談してみてもいいですし、「理科の壺・理科道」に相談のメールをお送りいただいても構いません。私自身は、理科が得意な先生を増やしたいとは思っていません。日ごろの理科の授業で困っている人を減らしたい、理科の授業の楽しさを感じてほしいと思っています。
先生自身が、「理科が楽しい」「子どもたちに自然のおもしろさを感じてほしい」と思っていると、それは、子どもたちにも伝わります。先生自身が楽しいと思える授業、子どもが楽しいと思える授業を探してみませんか?
イラスト/難波孝
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<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。