小学校最後の作業、卒業制作・タイムカプセル・卒業研究論文を、心に残る思い出に

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
特集
卒業特集ー6担初心者もこれで安心!ー 

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

小学校での活動の締め括りに「卒業制作」をする学校が多いと思いますが、六年生はいろいろなイベントが目白押しなので、これだけに力をかけることはできません。しかし、せっかく作るものだから、思い出深いものにしていきたいものです。また「タイムカプセル」を作ったり、学習要素の強い「卒業論文」を作る取組もあります。それらの留意点を考えていきましょう。
今回は、年末のスペシャル企画として、
六年生卒業文集づくりへの取組~まかせる まみえる まきこむ まとめる まじわる そして まいあがる~
と同時公開します! 六年生担任のみなさんは、ぜひ冬休みに参考にしてみてくださいね!

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

1 卒業制作にあたって

卒業制作は、卒業時に取り組む大きな活動です。小学校での活動の集大成という意味合いがあり、後々まで残せるものにしていければよいですね。卒業制作の作品は、用途や目的別で3つに分けられます。

①児童個人の記念として自分の作品を作り、個人的に自分で飾ったり使ったりする
②学校に置いておくものを集団で作成する
③学校以外に置くものを集団で作成する

①の自分のための作品づくりは、ほとんどの学校で行っているのではないでしょうか。ぜひ卒業作品展として、展示会をして最後に盛り上げましょう。学校によっては、修学旅行の際に、旅先での制作体験で作ったものを持ち帰り、ブラッシュアップして卒業作品にするという取組をしているところもあります。これもステキなアイデアですね。最近は、卒業制作キットのようなものも出ていますので、児童と相談しながら採用を決めてもよいでしょう。

②は、断捨離に取り組んでいる学校が多いため、あまり好まれなくなってきました。
全員で描いた壁画や、大きな絵画
詩や自画像などを彫り込んだ刻字板や、木彫りの記念碑
こういったものは確かに素晴らしいのですが、残されても処分に困るものです。
そこで、せっかくだから学校経営上、必要なものを考えて作るのはどうでしょうか。
例えば、木彫りの教室案内プレートです。理科室や音楽室など、その特別教室が何なのか、一目でわかるようなデザインのもの、英語で表記するようなものは実用性が高いですね。
また、スポーツの記録を掲示する掲示板、校内の案内板なども必ず使うものですので、便利です。
さらに、より実用的に、ベンチや椅子などもいいですね。これらは、長く「令和○年度卒業生作」として親しんでもらえるでしょう。

③は、地域との密着度を上げるのに非常に役立ちます。地域の方々と相談の上、案内板を作ったり、看板を作ったり…。奉仕活動の一環として作成します。小学生の地域貢献ですね。

2 タイムカプセルについて

タイムカプセルの取組はロマンがあって楽しいですね。小学生時代のお気に入りのものをカプセルに入れ、それを成人式の日などに掘り出すというような企画です。成人式のときだと大して時間が経っていないので、20年後とか、もっと後に設定することもあります。

ただし、現職の学校教職員の立場からすると、この企画にはかなり問題があります。

①休日のイベントとなることが多い
タイムカプセルの開封イベントは、おおむね同窓会のとき、つまりカレンダー上の休日に設定されることが多いです。道具を貸してほしい、立ち会ってほしいというリクエストが、卒業生から学校に来ることが多いです。「えっ、誰が協力するの?」ということになります。

②埋めた場所がわからない。埋めるのが難しい
数年が経つうちに校庭の様子が変わってしまったり、当時の記録が曖昧だったりして、「あれ、どこに埋めたっけ…?」となる事例もよくあるようです。
また雪国では、雪の残っている時期にタイムカプセル作業をする可能性も高く、雪かきして、凍った地面をさらに掘って、やっとの思いでカプセルを埋めたり…ということになります。

③保存状態が悪い!
容器の密閉が悪かったり、長い年月による腐食で、中に水が入ってぐちょぐちょになっていたり。カビ臭くて持ち帰れない、ということも頻繁に起きています。これは非常にうれしくない状態ですね。
鉄は酸化して劣化しやすいですし、合成樹脂の容器も、素材によっては水分、酸素、紫外線などの影響で劣化するものがあります。不透明のビニール袋で保護する等の工夫をして、長い年月を経ても密閉状態を保持できるようにしたいものです。

さて、こういった問題に一気に対応する方法として、タイムカプセルを埋めないで保管する学校もあります。わたしが以前勤務した学校では、体育館の屋根裏部屋的なところに歴代のタイムカプセルを安置していました。そして、いよいよタイムカプセルをオープンする日の直前の平日に、同窓会の役員さんに来校してもらい、カプセルを自宅へ持ち帰ってもらって、当日は別の場所でセレモニーをしてもらう、という段取りをしました。これで一件落着です。

3 卒業研究論文について

小学校6年間で、夏休みの自由研究や総合的な学習で取り組んだテーマをブラッシュアップして、卒業研究論文にするという取組もあります。ただし、最近は与えられた教科時間数や放課後の活動時間が少なく、どうしても自宅での取組になるので、敬遠される傾向にあります。しかしながら、もしまとめることができれば、一生の宝物になるでしょう。
笑い話ですが、小学校を卒業して30年も経ってから「あの時は担任の先生が厳しかったなあ。卒業論文は泣きながら書きましたよ。せんせいを恨んだこともあった」と、元担任のせんせいに恨み言をいう、元教え子の保護者さんに遭遇したこともありました。

さて、研究論文の書き方ですが、昔のように原稿用紙何枚分とか、そんなしばりは設定しないで、簡単にしていいと思います。A3判1枚でプレゼン資料のように図式化するなど、現代風アレンジでもいいですね。テーマは、何でもいいです。

例えば、
国語で学習した物語文の分析を研究者風に書く
自分たちの住む地域を、低学年の生活科学習の発展形としてまとめる
家庭科で学習した調理レシピに、自分流のレシピをアレンジしてまとめる
○○○日記として、クラブ活動や委員会など、さまざまな活動の足跡をまとめる
算数の解法や理科実験などを自分流に工夫してまとめてみる
または、
卒業演奏として難しいリコーダーの演奏をする
卒業発表として流行の曲にのせてキレキレのダンスを披露する

などなど…形にこだわらず、児童が自分ごととして取り組めるテーマを認めていくとよいでしょう。これらを集めてみれば、エキスパート揃いのすごい文化体育活動になるでしょうね。
取り組ませる場合は、充分余裕を持って期間を設定し、成果を発表できる機会も設けましょう。

児童が「させられる」という感覚をもつようでは本末転倒です。しっかり趣旨説明をして、児童が納得した上で始めたいです。あるいは、児童たちで組織する実行委員から提案する、という形をとるのもよいでしょう。
何かを残すということは、「自分が確かに生きてきた」という、自らの存在を確かめることです。その大きな意味合いは、大人になるほど身にしみて感じられることでしょう。タイムカプセル、卒業研究論文も同じです。ぜひとも、意義深いものにしていきたいですね。

イラスト/したらみ

【参考図書】
池岡正康『思い出に残る卒業イベント―文集づくり・儀式づくりのノウハウ』(明治図書 1995)
小山弘一『6年生担任の仕事術・これだけはおさえたい7ポイント』(明治図書 2000)
奥田靖二『まるごと小学校6年生学級担任BOOK―卒業年度の指導ポイントがよーくわかる 』(いかだ社 2008)
深浦喜久雄『6年生担任の仕事術~卒業に向けて~』(小学館 2015)
『教育技術小五小六』3月号(小学館 2020)


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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。

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