リレー連載「一枚画像道徳」のススメ #25 美しさの見つけ方|千葉孝司先生(北海道公立中学校)



子供たちに1枚の画像を提示することから始まる15分程度の道徳授業をつくり、そのユニットをカリキュラム・マネジメントのハブとして機能させ、教科横断的な学びを促す……。そうした「一枚画像道徳」実践について、具体的な展開例を示しつつ提案する毎週公開のリレー連載。今回は千葉孝司先生のご執筆でお届けします。
執筆/北海道公立中学校・千葉孝司
編集委員/北海道函館市立万年橋小学校教諭・藤原友和
目次
はじめに
みなさん、こんにちは。
北海道・十勝で中学校の教員をしております、千葉孝司と申します。
教員生活の中で、主にいじめ、不登校に力を入れて取り組んできました。
そして、いじめや不登校を減らすために道徳授業の大切さを実感し、道徳授業づくりに時間をかけて取り組んできました。
いじめや不登校の取組では時には深刻な場面にも出会います。
しかし、道徳授業づくりは、自由に発想でき悩みながらも楽しく取り組めるところが魅力です。
自分でつくるだけでなく、いろいろな先生方の素晴らしい道徳授業に出会うことも大きな喜びです。自分にはない発想や展開にうならされることも度々です。
小さな道徳授業という愛知教育大学の鈴木健二先生が提案されている実践があります。小さな道徳授業はサイズの面から見ても取り組みやすいものです。
その反面、より一層鋭い視点が必要になるものだと感じています。
一枚画像道徳は、小さな道徳授業の教材を一枚画像に限定するという趣旨かと思います。制約があることによる難しさと楽しさを感じながら、授業づくりをさせてもらいました。
今回は地域教材を生かした内容を報告させていただきます。
子供たちには美しいものをたくさん見てほしいと、常々感じています。どうぞよろしくお願いします。
授業の実際〜美しさの見つけ方〜
対象:中学1年
主題名:美しさの見つけ方
内容項目:A-5 真理の探究
以下の写真を提示します。
「ああ、きれい」「いいね」といった声が上がります。
『きれいだねぇ。見たことあるかな?』
「ない」
『ここはどこかなあ?』
「海岸」
『真ん中のこれは何かな?』
「氷」
『そうだね。これは海岸に打ち寄せられた氷の写真です』
写真に写っているものが何かを確かめます。

発問1 この写真を撮った人は、どんな思いで撮ったと思いますか?
●偶然見つけてきれいだから撮った。
●美しさを知ってほしいと思った。
●感動している。
●この瞬間を切り取ろうと思った。
説明
ここで、次のように説明します。
●写真の場所は、北海道十勝の豊頃町にある大津海岸です。
●氷は十勝川の水が凍ってできたもので、河口から海に流れ漂ってから打ち上げられています。
●流氷と違い、川の氷は塩分を含んでいないため透明度が高く、太陽や月の光を浴びて、宝石のように輝くことからジュエリーアイスと名付けられました。
●名付けた人は、写真愛好家で英語学校を経営している浦島久さんです。この写真を撮った人です。ジュエリーアイスの写真集も出版しました。
●様々なメディアで紹介されたこともあり、1万人を超える人が訪れた年もありました。
●ジュエリーアイスは、様々な形、色があり、自然がつくりだした宝石を人々は楽しんでいます。
この説明を聞いて、「見てみたいなあ」という声があがります。
『わざわざジュエリーアイスを見に行かなくても、美しい場所は身近にあるんじゃないかなあ』
「こんな美しい場所は近くにはないよ」
『そうだね。あったら観光客がたくさんやってきているかもね』
「そうそう」
『浦島さんが2012年にジュエリーアイスと名付けて美しさが認知されたんだけど、その前も氷はあったんだよね。実は普通に海岸を歩く人が蹴ったりしていたんだよ』
「ええ!」
『ジュエリーアイスは昔から変わりません。でも同じものでも足蹴にされたり、観光客が押し寄せたり。対応が変わったのは人々が美しさに気付いたからではないでしょうか。』
発問2 美しさを発見するために必要なことは何だと思いますか。
●美しさを見つけようとする心。
●幸運。
●美しいものに感動できること。
●周りをいつもと違う目で見ること。
●美しさを探し求めること。
●よく見たり、想像したりすること。
最後に浦島さんが撮影したジュエリーアイスやハルニレの木の写真をスライドショー形式で紹介していきます。
ハルニレの木は浦島さんが長年同じ場所で撮り続けているもので、四季を通じて様々な美しい表情を見せてくれます。長年同じ被写体を撮るという姿勢からも美しさに向き合うことのヒントを与えてくれます。