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リレー連載「一枚画像道徳」のススメ #19 みんなの場所で|有田雪花先生(神奈川県公立小学校)

連載
リレー連載 明日の授業に生きる!「一枚画像道徳」のススメ

北海道公立小学校教諭

藤原友和

子供たちに1枚の画像を提示することから始まる15分程度の道徳授業をつくり、そのユニットをカリキュラム・マネジメントのハブとして機能させ、教科横断的な学びを促す……。そうした「一枚画像道徳」実践について、具体的な展開例を示しつつ提案する毎週公開のリレー連載。第19回は有田雪花先生のご執筆でお届けします。

執筆/神奈川県海老名市立中新田小学校教諭・有田雪花
編集委員/北海道函館市立万年橋小学校教諭・藤原友和

ごあいさつ

みなさん、こんにちは。
神奈川県海老名市で小学校の教員をしております、有田雪花と申します。

初任校は特別支援学校で3年間、その後小学校へ異動し支援級の担任2年目となり、縁あってずっと支援教育に携わってきました。教員経験としてはまだまだですが、出会った子供たちがみんな、周りに愛され、楽しく幸せに生きていってほしいという、壮大なような素朴な願いを持ちながら、向き合ってきました。

道徳教育の軸である「生き方を考える」ことは「自分を知る」ことであり、それが、よりよく社会とつながっていくことに結びつくと思っています。
まだまだ未熟な小学生の彼らにとって、「うまくいかない」場面は多々ありますが、それと同時に「よりよくなりたい」という思いも大きいと感じます。

支援級の子供の実態は多様です。また学年も複数に跨っています。なるべく身近な出来事をきっかけに、考える道徳へつなげていきたいと考え、今回の提案をいたします。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

1 授業の実際〜みんなの場所で〜

対象:支援級2~5年
主題名:みんなの場所で
内容項目:C-11 規則の尊重
 「約束やきまりを守り、みんなが使う物を大切にすること」(低学年)
 「約束や社会のきまりの意義を理解し、それらを守ること」(中学年)

以下の写真を提示します。
提示してすぐ次の質問をしました。
『これ何の写真かわかるかな?』
「ボール」「プレイルームのボール」「片付け忘れたボールじゃない?」
正解です。みんなで普段遊んでいるプレイルームという部屋にあるボールです。

「でも、ぼくプレイルームで全然遊ばないよ」
一人の子が言いました。
『自分の教室でみんなで遊ぶこともあるよね、そのときのことも同じように考えてね。』
と補足しました。プレイルームという場所の問題ではなく、一人一人に『みんなで使う場所』について考えてほしかったからです。

発問1 ボールがこんなところに落ちたままでいいのかな?

よくない。
次に使う人が場所がわからなくなっちゃう。
なくなったら使えなくなる、悲しい。
探すのが大変になる。
前おもちゃがなくなったとき大変だった。

2~5年生まで、実態が多様な子供たちだったので、誰でも答えやすい発問をしました。
ある児童が、おもちゃがなくなったときの自分の経験を語ってくれました。子供たちはこれまでの経験の中から、他人事の話ではなく「自分のこと」として、このボールの写真を見てくれるようになりました。

説明

ここで、次のように説明します。

放課後先生がプレイルームを点検すると、片付け忘れられているおもちゃがあること。
プレイルームや教室は【みんなで使う場所】だということ。

プレイルームは支援級の児童が主に使用してきましたが、今年度は通常級の児童にも開放し、みんなで遊ぶようになりました。
片付け忘れられているものがあると伝えると、「ええ~」という反応もありましたが、驚かない児童もいました。休み時間の終わりを知らせるチャイムが鳴ると、いつも慌てて教室に戻っていくからだと思います。

みんなで使う場所の過ごし方や、物の使い方を考えてほしい、という話をしました。

発問2 【みんなが使う場所】で気を付けるべきことってなんだろう?

いろんな場所を確認してから教室に戻る。
忘れているものがないか気付いて、自分で返す。
なんかないかなーって確認する。
自分で取れないところは先生に相談する。
チャイムが鳴ったら、片付け忘れがないか探してから出る。
みんなの場所は、入ったら片付けるまでが大切。
想像してみる。
友達をお助けして協力する。
片付けが苦手な人を助ける。

実際に出てきた発言です。
子供たちは次の休み時間からどう過ごすのか、それぞれの目線から考えていました。
公共の場における規則の尊重は大事なことです。ですが、一人一人に得意なことがあれば、苦手なこともあります。
発問2の後『そうは言っても、一人で片付けるのが大変な子もいるよね。』と投げかけると、ある子が「ぼく片付け苦手! お部屋もきたないもん!」と素直に話してくれたおかげで、子供たちの気持ちのベクトルが自分だけではなく、周りの友達にも向いたのを感じました。

「みんなの場所は、みんなで大切にする」そのようなきまりは個人だけではなく、集団が安心して暮らしていくことのためにある、と感じられる心を育てていきたいです。

この15分道徳の後に、自立活動でボッチャを行い、何も言わなくても散らばったボールを集め、指さし確認して「よーし、全部あるオッケー!」と協力して片付ける姿を見ることができました。

一枚の画像をきっかけに「遊んだ物の片付け」のような当たり前のように過ぎていく時間を、少し立ち止まって、みんなで考えることができました。日常生活の一場面を切り取って問いかけることで、子供たち一人一人の心の中にある「よりよくなろうとする」種が育ち、道徳的実践意欲へつながっていけばと思います。

2 どこにどのようにつなげるか

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