『お話ノート』で傾聴力と記憶力を鍛えよう~全校朝会も大活用!~
あまり興味のない話に付き合うのはいやだなあと、話を聞かないで上の空の児童、あなたのクラスにもいませんか? 例えば全校朝会など、せっかく時間を設定し、良い話をしてくれているのにもったいないです。感染症予防のためになかなか実施されず、放送などで代用されることが増えましたが、昨今小規模少人数の学校など、密が避けられる状況にある学校を中心に以前のような体育館での全校朝会が復活しているところもあります。担任として、児童の傾聴スキル向上のため、何かできることはないでしょうか?
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
1 いっそのこと『お話ノート』をつくっちゃえ
担任をしていた頃、全校朝会から戻ってきて、朝の会を始める前に簡単に校長講話の話の内容を児童に聞いてみると、聞いている児童とそうでない児童がはっきり分かれました。国語の力とは関係ないようでした。要は気持ちの問題かもしれないです。ああ、せっかくのお話なのにもったいないなあ…。
では、どうしたらいいのか考えました。いっそのこと、国語のノートのほかに『お話ノート』を作るのはどうか、と思いつきました。算数で言えば、「算数ノート」のほかに計算専用の「計算ノート」とか「ドリルノート」というものと同じ発想です。市販のものではなく、用紙にフォームを印刷し20枚程度のものをまとめて綴じたもので十分です。
このノートは、その場で聞き取って書くという「聴写」というより、「要約」に近い作業をしていきます。全校朝会での校長せんせいのお話を思い出し、特に大切だなと感じたことや聞いた言葉を書き留めさせるようにします。児童の発達段階で、次のようなステップで指導するといいでしょう。
●低学年の児童には、ある程度自由に書かせます。覚えていることばをできるだけ書かせます。
●中学年の児童には、「箇条書き」や「~だ」という常体の書き方、さらに名詞止めなどの表記方法を習得させ書かせます。
●高学年の児童は、書き取った内容にプラスして自分の考えや思い、感想などを加味して書かせます。
ノートに書く作業は、ある程度の時間で区切ります。完全でなくてだいじょうぶです。この活動に時間をとられすぎると、次の学習に支障をきたすからです。ノートを提出させ、点検して必要に応じて担任がコメントを書いたり、チェック印を押印して返します。この活動を継続するとかなりきちんと聞くようになります。
もし、時間的ゆとりがあればノートを書かせる前に、
「今日の校長せんせいのネクタイの色は何だった?」
「司会のせんせいのブラウスの色は何色だった?」
「○○せんせいからほめられたことがあったね。何だった?」
「□□せんせいのお話はズバリいうとどういうこと?」
とクイズ形式で児童に問いかけてみます。そして、心が整ったら、ノートに取り組ませるということでいいでしょう。
『お話ノート』を使うことで、児童は少しずつ長く書くことができるようになり、内容も正確に聞きとるようになっていきます。
2 最近の校長せんせいのお話
ちょっと脇道に逸れます。わたしが初任者指導でお伺いしている学校の校長せんせいは、講話の際に、自ら理科の実験をしてみせ、児童の興味を集めました。教育目標にからめた、知的好奇心や探究心についてのお話に、せんせいたちもぐいぐい惹きつけられました。
児童たちが講話に引き込まれ、思考が活性化していくのが手に取るように分かりました。最近の校長せんせいは効果的なわかりやすい方法でお話ししてくれます。
コロナ感染予防のため、勤務校の創立記念式の校長式辞は校内放送で行いました。放送なので、教室のテレビ画面が使えます。式辞の中で、『世界の通学路』の動画が流され、一日片道20キロも歩いて登下校する児童の様子について考える機会がありました。そこで、校長せんせいは伝えたいことをフリップ形式で示しました。とても印象深くとらえることができました。
例えば、今回のようにモニターに示されたキーワードやキーセンテンスを教室の自席で書き写すという活動をすれば、より一層校長せんせいが伝えたいことが心に入ってくるのではないかと思われます。
全校朝会や放送朝会での校長せんせい、あるいは生徒指導のせんせいのお話は、ひとつの授業でもあるわけですから、しっかり有効活用しましょう。
3 『お話ノート』で自らのスキルも確認しよう
担任は日常的に児童の前で話をします。簡単な連絡から生徒指導、学習指導に関わることが多いですが、たまに気合いをこめて「生き方」に関わるような大切な話をしたいことがあります。
ぜひ、そんなときには『お話ノート』を使ってみてください。
その後、児童が書いた『お話ノート』を提出してもらいます。伝えたかったことなど、お話の中心概念が書いてあればOKです。さらに、児童自身が考えたことや感想が書いてあればなおうれしいです。
自分の話の分かりやすさや伝えるスキルを、児童の『お話ノート』から見つめ直すこともできるのです。児童が飽きないで聞くためには、話し手のスキルが絶対必要だなと思います。どういった話し方をすれば、児童が傾聴してくれるか工夫していきたいです。先に示した校長せんせいの手法などを参考に話し方スキル向上にがんばっていきたいものです。保育士さんが得意とする、「素話」のスキルも使えると思います。よかったら、こちらの過去記事もご覧ください。
ちなみに、児童の前で話すとき、「アー」「エー」と、つい言いよどんでしまうことがあります。これが続くと、とっても聞きにくいですよね。そんなときは焦る気持ちをぐっと抑え、「アー」「エー」と言いそうになったら「ひと呼吸おいて(深呼吸して)話すといいよ」ということを先輩から聞きました。やってみると効果抜群です。けっこう流ちょうに聞こえますよ。
4 『お話ノート』応用編
そして、日常的継続的に校長講話だけでなく、外部からのゲストティーチャーの講話を記録したり、社会科見学でのまとめなどに『お話ノート』を活用したりすれば、より一層効果的です。児童が自分のノートをあとで読み返してみると、大切なことが思い出され復習にもなります。そして、発表の際のネタ帳としても使うことができます。
「せっかくのいいお話も、忘れてしまうともったいない!」
そう児童に伝えて、傾聴スキルと記憶スキルを上げていきたいですね。
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記憶のし方は人それぞれのスタイルがあります。一度見たり聞いたりしたら覚えてしまう優れた記憶力の持ち主もいますが、わたしはひたすら、たくさんのメモをして、それを整理し、見返すことによってどうにか内容が定着するというタイプです。コツコツと努力して覚えていく人の方が、世の中には多いと思います。
このような記憶の定着方法があるということを、児童が理解し、自学に活用してもらえたら…。
そしていつか遠い将来、この一冊を見返したとき、小学校時代の思い出を呼び起こす宝物にもなってくれたらいいなと、願いを持っています。
イラスト/したらみ
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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。