「ギフテッド」、文部科学省に提言でキックオフ
2022年9月26日(月)の午前10時より「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」が行われ、文部科学省への提言が行われました。
目次
文部科学省への提言、5つの施策
最近、「ギフテッド」という言葉を耳にする方も多くいらっしゃるのではないでしょうか? それは、「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(以下、有識者会議)」が行われていたことと無関係ではありません。
9月26日、有識者会議の14回にわたる審議が一区切りし、文部科学省への提言が行われました。提言書のタイトルは、以下になります。文書名をクリックすると、提言書全文へのリンクが貼ってありますので、ぜひ一度、お目通しください。
提言では、今後取り組まれる施策として以下の5つが示されました。
- 特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進
- 多様な学習の場の充実等
- 特性等を把握する際のサポート
- 学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供
- 実証研究を通じた実践事例の蓄積
筆者は、有識者会議の座長である岩永雅也・放送大学長の言葉が強く印象に残りました。
今回の提言は、結論ではなく、キックオフ。議論をここから始めていくんだ、という意味で大変意味があったと思います。アンケートや調査の結果、真に問題を抱えている子どもたちがいるのだと、それを問題として感じている保護者の方がいるのだということを量的にも把握できたことは、非常に貴重な結果ではないかと思っています。
着目すべきは、副題の「多様性を認め合う」
一方で、「特定分野に特異な才能のある」という冠ばかりに注目が集まることに、危機感を感じます。なぜなら、今回の提言書は、特定な分野に秀でた特定の子を取り出して、何か特別なプログラムを行うといった話ではないからです。
筆者は、「多様性を認め合う個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実の一環として」という副題こそ、最も着目すべき事柄だと思います。つまり……。
今回の議論の根幹にある哲学は、「多様性を認め合うためには、どうしたらよいのか?」という話である。
長らく、日本の教育は、一斉指導が前提でした。近年、発達障害をもつ子、外国人児童、多様な性をもつ子(LGBTQ)など、「通常学級の中に、一斉指導とは別の特別な教育ニーズがある子がいる」という認識は広まっています。
一人ひとりが全然、違っていて、多様な子がいる。それが、当たり前の現実である。そんな一人ひとりの子どもたちの育ちを、大人はどう保障し、どう育むのか?
今回の提言書は、その一環として、いわゆる「浮きこぼれ」と言われる子どもたちに光が当たったという位置づけなのだと考えます。
キーワードは「実証研究」
今回の有識者会議では、何度も「実証研究」という言葉が出てきました。「いわゆる『浮きこぼれ』の子が、『いる』。その子たちは、『困っている』」。ここまでは、有識者会議による文科省への提言で、既成事実となりました。
では、どうしたらいいのだろうか?
筆者が構成を担当した『「みんなの学校」から社会を変える』の著者である木村泰子先生(大阪市立大空小学校初代校長)は、いつも、こんなふうにおっしゃっています。
「とにかく、事実を、1つ、1つ、積み上げていくんや。100のうち、51対49になった時、世の中は、ぶわっと変わると信じている。そこまで、みんなで、事実を積み上げていこう!」
「みんなの教育技術」では、一貫して「ギフテッド」とは、「配慮や支援が必要な子ども」と定義し、取材や記事作成を行っています。
編集部には、「ギフテッド」の研修を始めている教育委員会の話、「ギフテッド」を育てる保護者からの声などの情報が集まってきています。
こうした現場の声を、取材し、記事化していくことは、「事実」を積み上げることになるのではないか? そう考えて、今後は、「みんなの教育技術」でも、「事実」をしっかりと積み上げていきたいと思っています。
楢戸ひかる(ならと・ひかる)
ライター。『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』構成担当。息子の通級をきっかけに、「通常級にいる少数派の子どもたち」を軸に記事を執筆。令和の主婦像を考えるサイト「主婦er」運営中。