小5理科「ふりこの運動」指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

執筆/福岡県公立小学校教諭・大西 彩耶
  福岡県公立小学校指導・倉富 麻衣子
監修/文部科学省教科調査官・有本 淳
  福岡県公立小学校校長・川津 栄子
  福岡県公立小学校教頭・南波 啓一

単元の目標

本単元は、第3学年「A(2)風とゴムの力の動き」の学習を踏まえて、「エネルギー」についての基本的な概念等を柱とした内容のうちの「エネルギーの捉え方」に関わるものであり、第6学年「A(3)てこの規則性」の学習につながるものです。 

振り子が1往復する時間に着目して、おもりの重さや振り子の長さなどの条件を制御しながら、振り子の運動の規則性を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に予想や仮説を基に、解決の方法を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいとなります。

学習指導要領では、次のことを理解するようにすることが示されています。

ア(ア)振り子が一往復する時間は、おもりの重さなどによって変わらないが、振り子の長さによって変わること。

子供が、問題解決の活動を通して、上のア(ア)を理解するように指導しましょう。また、その過程において、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力、人間性等を育成しましょう。

単元展開

総時数 9時間

第1次 問題を見いだす

 振り子を作って音楽に合わせて動かす活動から、気付いたことを話し合い、問題を見いだす。(授業の詳細①)

第2次 振り子の1往復する時間は、何によって変わるか調べる

(授業の詳細②)

  1. 振り子の1往復する時間は、何によって変わるのかを予想して、予想を確かめる方法について計画を立てる。
  2. 振り子の1往復する時間は、振り子の長さで変わるか条件を整えて調べる。
  3. 振り子の1往復する時間は、おもりの重さで変わるか条件を整えて調べる。
  4. 振り子の1往復する時間は、振れ幅で変わるか条件を整えて調べる。
  5. 振り子の長さ、おもりの重さ、振れ幅をそれぞれ変えたときの結果を比べて、考察し、結論を出す。
  6. 振り子の長さをもっと長くしたときの振り子の1往復する時間を調べる。

第3次 振り子のおもちゃを作る活動を通して、本単元をまとめる(2時間扱い)

授業の詳細①

第1次 問題を見いだす

 振り子を作って音楽に合わせて動かす活動から、気付いたことを話し合い、問題を見いだす。

①問題を見いだす


【自作の振り子を作る前に】
単元の導入では、子供が自作の振り子を作って、自由に操作する体験活動を設定します。ただし、初めて振り子に出会う子供が多いと考えられるため、振り子時計等を提示する等して、子供が振り子を作ってみたいと思うようにしましょう。また、振り子時計がないときは、動画やおもちゃの振り子時計を活用しましょう。

この時計を見てください。教室にある時計とこの時計では何が違いますか。

この時計は、下に丸い物がついているよ。カチッカチッと規則正しく動いているよ。

下で揺れている丸いものは、何の役割があるのかな。

この時計は、振り子時計といいます。糸におもりをつけ、おもりを横に引いて離すとおもりは行ったり来たりをくり返します。これを振り子といいます。(実演しながら説明するとよい)

私もふりこを作って、動かしてみたいな。

振り子を作って音楽やメトロノームに合わせて動かし、気付いたことを話合いましょう。

〇自分で振り子を作っていろいろと試しましょう。

安全指導①

ガラスの玉や金属の玉などが飛ぶことがあり危険なので、振り回してはいけないことを指導しましょう。
振り子を動かすときには、よそ見をせずに、自分の手元の振り子をよく見ながら行うように指導しましょう。


【自作の振り子について】
振り子の長さやおもりの重さの違う振り子が自作できるように、長い糸や短い糸、ガラス・金属など重さの違うおもりを準備しましょう。

手で持つ支点の位置は固定したままで、振り子を動かすことを伝えるようにしましょう。
自作の振り子を使って、音楽やメトロノームに合わせて振り子を動かす活動を通して、振り子の1往復する時間について問題を見いだすことができるようにしましょう。
テンポの違ういくつかの曲に合わせて振り子を動かす活動を取り入れて、振り子の1往復する時間に関係している条件について気付けるようにしましょう。
ふりこが1往復する時間について「ふりこの長さ」「おもりの重さ」「ふれはば」それぞれに着目し、どの要因が影響を与えているかを、「見方・考え方」を働かせて考えることができるようにしましょう。そのために、児童の気づきの言葉をしっかりとすくい上げ、3つの要因に整理して、問題を見いだすことができるようにしましょう。
その際、下図のように、「ふりこの長さ」「ふれはば」「おもりの重さ」という用語を確認し、使用することができるようにしましょう。

自分が作った振り子と友達が作った振り子の動き方を比べて、気付いたことを話し合ってみましょう。

曲の速さに合わせてふりこを動かすことができたよ。

曲の速さとうまく合わないなぁ…

友だちのふりこの1往復する時間と違う気がするよ。

私は、ふりこの長さを短くしたから、速く動いていると思うよ。

ぼくのふりこは、Aさんのふりこよりも、おもりの重さが重いから、速く動いていると思うよ。

私のふりこは、ふれはばを大きくしたから、ゆっくり動いていると思うよ。

じゃあ、ふりこの1往復する時間は、何によって変わるのかな?


ふりこの1往復する時間は、何によって変わるのだろうか。

授業の詳細②

第2次 振り子の1往復する時間は、何によって変わるか調べる

 振り子の1往復する時間は、何によって変わるのかを予想して、予想を確かめる方法について計画を立てる。

②予想する

音楽やメトロノームに合わせて、振り子を動かしたことから予想してみましょう。

(予想)振り子の長さ
りこの長さを長くすると、1往復する時間は長くなると思う。長い糸でふりこを作ったとき、糸の長さの分、時間が長くなっているようだったから。

(予想)おもりの重さ
おもりを重くすると、1往復する時間は短くなると思う。おもりが重い方が勢いがついて、速く動きそうだから。

(予想)振れ幅
れはばを大きくすると、1往復する時間は長くなると思う。ふれはばを大きくしてふりこを動かしたとき、大きくしたふれはばの分、時間が長くなっている

③解決方法を考える


【条件制御】
比べるときは、調べる条件を1つだけ変えて、それ以外の条件を同じにします。この条件制御の考え方は、「予想や仮説を基に、解決方法を発想する力」を育成する上で、大切な考え方となります。前単元で、「植物の発芽と成長」の学習をしていれば、そのときの条件制御の考え方を想起できるようにし、子供が自ら条件制御の考え方を働かせることができるようにします。

(予想)振り子の長さ
ふりこの長さが関係しているか調べるには、
変える条件→ふりこの長さ
変えない条件→おもりの重さ・ふれはば

(予想)おもりの重さ
おもりの重さが関係しているか調べるには、
変える条件→おもりの重さ
変えない条件→ふりこの長さ・振れ幅

(予想)振れ幅
ふれはばが関係しているか調べるには、
変える条件→ふれはば
変えない条件→ふりこの長さ・おもりの重さ


条件を制御しながら、振り子の1往復する時間を調べる
①振り子の長さが関係しているか、振り子の長さだけを変えて調べる。
②おもりの重さが関係しているか、おもりの重さだけを変えて調べる。
③振れ幅が関係しているか、振れ幅だけを変えて調べる。

振り子の1往復する時間の求め方
①振り子が10往復する時間を3回はかる。
②10往復する時間の平均をもとめる。
③1往復する時間の平均を求める。


【算数科で学ぶことを使って】
本単元では、データを数値化や平均化するなど、数学的処理が必要となります。計算の仕方を丁寧に確認し、統一しておくことで、計算間違いによる結果の大幅な違いが生まれないようにしましょう。問題にあった考察ができるように指導しましょう。
実験や測定には、多少の誤差が含まれることを指導し、平均を求めることが必要であると伝えるようにしましょう。


【実験方法】
①正確に調べるために、スタンドに振り子をつけて調べましょう。そのとき、振れ幅を調べられるように厚紙で角度板を作って取り付けるようにします。
②振り子の10往復する時間は、ストップウォッチやデジタルタイマーを使うとよいです。
③振り子を動かしてから、約2回往復した後に、はかり始めるようにしましょう。

④観察・実験をする

安全指導②

安全面に配慮し、重い鉄製スタンドなどを使用するようにしましょう。軽いスタンドの場合は、十分に固定してから使うことを指導しましょう。

 振り子の1往復する時間は、振り子の長さで変わるか条件を整えて調べる。

⑤結果の処理


【タブレット端末の活用】
学級でexcelシートを共有できる場合(teams等)、事前に表を作成しておき、結果を班でタブレットに打ち込んで記録できるようにし、平均を出しやすくしておきましょう。
学級の実態に合わせて、ワークシートがよいかICT端末がよいかは、判断しましょう。

「振り子の長さ」の実験結果を記録し、振り子の1往復する時間の平均を求めます。

ワークシート例①
タブレット端末活用例(ワークシート例②)

以下の(実験2)と(実験3)においても、同じように実験結果の記録をし、振り子の1往復する時間を求める。

 振り子の1往復する時間は、おもりの重さで変わるか条件を整えて調べる。(実験2)

 振り子の1往復する時間は、振れ幅で変わるか条件を整えて調べる。(実験3)

 振り子の長さ、おもりの重さ、振れ幅をそれぞれ変えたときの結果を比べて、考察し、結論を出す。

⑥結果を基に考察する


【結果の一覧掲示のよさについて】
各グループの結果をグラフ等で一覧掲示することは、以下のようなよさがあります。
全てのグループの実験結果から考察することは、科学の再現性を満たす上で大変重要なことです。
操作ミス等で出た大きな誤差を発見しやすくなります。
デジタル表示で陥りやすい数字上の誤差へのこだわりを解消できます。
「振り子の長さ」「おもりの重さ」「ふれはば」の3つの結果を比べやすいです。

振り子の長さ、おもりの重さ、振れ幅をそれぞれ変えたときの結果をグラフ等に表し一覧掲示しましょう。

結果から、振り子の1往復する時間は何に関係しているといえますか。

振り子の長さが長くなると、1往復する時間が長くなった。このことから、予想と同じで振り子の1往復する時間は、振り子の長さによって変わるといえます。

重りの重さが変わっても1往復する時間はほとんど変わらなかった。このことから、予想と違って振り子の1往復する時間は、おもりの重さには関係ないといえます。

振れ幅を変えても1往復する時間はほとんど変わらなかった。このことから、予想と違って振り子の1往復する時間は、振れ幅には関係ないといえます。

⑦結論を出す


ふりこの1往復する時間は、ふりこの長さによって変わる。ふりこの長さが長いときほど、1往復する時間が長くなる。
ふりこの1往復する時間は、おもりの重さやふれはばによっては変わらない。

⑧振り返る

おもりが重いと1往復する時間は、長くなると思ったけど予想とは違って驚いた。

もっと振り子の長さを長くすると、1往復する時間はどうなるか気になる。

イラスト/難波孝

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