学級目標を意味のあるものにするには?|アヤ&メグの新任教師お悩み相談①
新任教師の悩みや疑問に二人の先輩が回答!
Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載です。
今回から始まる新シリーズのテーマは、「子どもの力を引き出す担任の在り方」。初任の先生の悩みや疑問をもとに、先輩教員2人が考え方や手法を提案します。答えるのは、15年目の樋口綾香先生と、11年目の竹澤萌(たけざわめぐみ)先生。具体的な問題場面に対して、担任として意識したいポイントを提示し、二人の考えを共有します。
きっと、正解は一つではありません。状況によって、考えや行動は柔軟に変化させなければならないでしょう。目の前の子どもたちの力を最大限生かすための方法を、いっしょに考えていきましょう。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
今回の相談「学級目標が飾りのようになってしまいました」
第1回の相談は、学級目標についてのお悩みです。
1学期に決めた学級目標が、飾りのようになってしまいました。2学期が始まりましたが、学級目標をつくるかどうか、悩んでいます。どうしたらいいですか? 学級目標が飾りにならない方法など、アドバイスをください!
2学期が始まって3週間ほど経ちましたね。1学期の状況を考えると、このまま目標をつくっても同じ結果になってしまいそうです。
子どもたち一人ひとりや、学級の力が高まるような目標をつくるためには、どうしたらいいのでしょうか。まずは、竹澤先生に聞いてみましょう。
竹澤萌先生の回答
1学期に学級目標を立ててみた先生方は、その目標を子どもたちと振り返る場がありましたか? せっかく子どもたちと一緒に時間をかけて作成したはずなのに、日々の学校生活の中で振り返る意識がないと、掲示して満足……という結果も考えられそうですね。そこで、私が実践してきた「振り返り方法」を提案します。
みんなの願いを掲示しよう
私が今までに受け持った学級では、ほとんどが学級目標や学級スローガンを作成していました。これらは、必ずしもつくる必要はありませんので、掲げる意義を考え、必要の有無を子どもたちに尋ねてから作成するようにしています。
「こんなクラスにしたい」「こんな毎日を過ごしたい」等、子どもたちと教師の願いを込めることができるのが、学級目標です。言葉の数や形式、デザイン等に決まりはなく、在り方は様々だと思います。その時のそのメンバーで紡ぐ言葉を大切にしながら、デザインで自分たちらしさを表現してきました。
作成したものは教室背面に掲示し、子どもたちの目に触れるようにしています。以前、何も見ずにすらすらと学級目標が言える1年生の子どもたちの姿を見て以来、掲示の効果を感じています。
学級目標 × 個人目標を意識しよう
みなさんの学級では、個人目標をどのように立てていますか。今まで何となく子どもたち任せにしていたならば、今度は学級目標に沿った具体的な個人目標を設定するのはいかがでしょうか。
まずは、学級の一員として自分にできることは何かを一人ひとりに考えてもらいます。次に、その目標に対して振り返りの場を設定します。私の場合は2週間に一度や毎月末に一度と決めて行っていました。無理のないペースで定期的に振り返り、その際に学級目標にも意識を向けさせることがポイントです。そして、達成できた個人目標は、どんどん更新していきましょう。
個々の力を引き出すことができれば、集団の力も高まります。振り返りの時間をしっかりとって、アップデートしていくことがねらいです。
クラス会議や道徳の時間で振り返ろう
個性の違う子どもたちが毎日一緒に過ごしていたら、トラブルが起こるのは自然なことです。ただ、トラブルが起こる度に担任が仲裁に入っていたら、その数はなかなか減りません。
そこで、クラス会議を開き、「最近の〇年〇組」について気になることを子どもたちの言葉で語らせます。問題があるときには、その解決策を中心に話し合い、特に問題がなければ、「学級目標の振り返り」として、お互い意識できるかを確認する場にしてもいよいでしょう。全員で決めた学級目標なので、全員で振り返ることも大切にしていきたいと考えています。
また、道徳の時間に学級目標を関連させた振り返りを入れることも可能です。道徳の授業では、毎時間、指導の中心におく内容項目があります。教材の中でも学級目標と関連したテーマもあるのではないでしょうか。このように日々の授業の中でも学級目標を意識していくことで、飾りで終わらず、大きな意味をもつものになるのではないかと考えています。
樋口綾香先生の回答
私は、学級目標はつくっていません。1年間全くつくらないわけではなく、宿泊行事や学校行事があるときに、必要だと考えれば設定します。学級目標という形ではないのですが、日々子どもたちの「今」を見つめて、どうなってほしいかを掲示物で伝えています。
掲示物で担任の願いを見える化
つい最近も、掲示物を変更しました。
4月、私やクラスメイトの話にほとんど反応を示せなかった子どもたちに、「反応力をつけよう」と話しました。日々の授業や朝の会や帰りの会で、振り返る時間をつくって目標を大切に過ごしたことで、2学期にはクラスメイトの話に反応するだけでなく、子どもたちだけで活発な話合いができるようになりました。
この力をさらに伸ばすために、『話し合う力』を掲示したのです。
子どもたちは、クラスの成長を感じて、とても嬉しそうでした。
学級目標は、必ずしも子どもたちだけでつくる必要はありませんし、途中で変更してはいけないなんてルールもありません。
子どもたちの様子を見ながら担任が提案することも、子どもの力を伸ばす方法の一つであると私は考えています。
個人目標
これ以外に、私が担任する学級では、個人目標を立てるようにしています。子どもたちには、「今の自分」を知り、得意で自信のある部分や、苦手で自信のない部分とどう向き合っていくかを考えるよう声掛けをしています。
高学年になると、他者の評価が気になったり、自分と他人を比較して悲観的になったりする子も少なくありません。コンプレックスは誰でももっていて当たり前で、その部分とどう向き合うかが大切だと伝えています。
「今の自分」を知るための活動として「持ち味トーク」を実践中です!
毎朝2分間、ペアで自分の持ち味について話します。良い面も悪い面も、どちらも自分の一部であり、それらはすべて持ち味となります。
毎日ペアで自分自身のことを話すうちに、思わぬ持ち味に気づいたり、自分の評価と他者の評価が違っていることに気づいたりします。
たとえば、「ダンスが苦手」と言った子に対して、「でも○○さんは、コツコツ努力をして踊れるようになっているからすごいね。努力家なところが持ち味だね」というように、クラスメイトがネガティブからポジティブに変換してくれることもあります。
「これまで受け持ったほとんどの学級で学級目標をつくって掲示してきた」
「基本的には学級目標をつくることはせず、必要に応じて掲示物をつくっている」
二人教師がいれば、このような違いはありつつも、学級目標を意味のあるものにするために、それぞれ工夫しているのですね。
学級目標でも、個人目標でも、考えたことが子どもたちの力を引き出す一つの手段となるように、目標を立てて終わりにするのではなく、
- 目標を立てるまでの過程
- 目標を達成するために何ができるかを考えること
- 目標に対してどう努力したかを振り返ること
を大切にしていきましょう。
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。
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