目標に向かって学級をひとつにするには〈後編〉【伸びる教師 伸びない教師 第22回】
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今回は、「目標に向かって学級をひとつにするには」の後編です。学級目標をみんなで達成するには、担任が目標をいつも意識することが重要です。学級目標を達成することで、学級みんなの達成感と成長につながるという話です。豊富な経験で培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載です。
※本記事は、第22回の後編です。
執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)
栃木県上三川町立明治小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を歴任。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。
伸びる教師は目標に向かって学級をひとつにし、伸びない教師は目標を立てるだけで終わってしまう
目次
教師が目標にこだわる
子供たちが動き出すと言っても、はじめから学級全員が目標に向かって取り組むということは稀です。次の日になると目標があったことすら忘れてしまう子供も出てきます。
ここで教師からの働きかけが必要になってきます。
挨拶を例にすると、
- 大きな声で挨拶できた子供の人数を帰りの会で調べる
- 大きな声で挨拶できていた友達を発表させる
- 教師が大きな声で挨拶していた子供を紹介する
- 道徳で挨拶に関わる内容の授業をする
- 教師が挨拶の大切さや言葉の意味を話す
など方法は様々です。
大切なことは教師が目標にこだわる姿勢を見せることです。
私は、校内を回りながら教室にお邪魔し、子供たちの授業を参観させてもらうことがあります。授業を邪魔してはいけないと思い、そっと後ろのドアから入ります。ある学級の子供たちは、私の姿を見るとすぐに「こんにちは」と大きな声で挨拶してくれます。私としてはうれしいのですが、授業を中断させてしまうので担任の先生にお願いしました。
「授業中は私に挨拶しないで大丈夫だと子供たちに伝えてください」
すると、担任の先生から
「いえ、挨拶が子供たちの目標になっていますから、ぜひ挨拶をさせてください」
と逆にお願いをされたことがありました。
数か月後、その学級は学校で一番気持ちのよい挨拶をする学級になりました。
達成状況を「見える化」する
4年生の宿泊学習の事前指導で、3学級の子供たちを集め、宿泊学習の目標を決めさせました。子供たちからは「協力」「挨拶」「自分たちで行動」の3つのキーワードが出ました。
当日、子供たちに名刺サイズのカードを配りました。
「目標に向かって頑張っていた友達を見つけたら、誰がどんなことを頑張っていたかこのカードに書いて、ホテルの廊下にある模造紙に貼ってください」と子供たちに伝えました。
宿泊学習3日目、用意した模造紙では貼り切れないくらいのたくさんのカードが集まりました。宿泊学習の最後には、カードが貼られた模造紙をみんなで見ながら宿泊学習で頑張ったことを振り返りました。
ある学級では、学級目標や月の目標などが達成されるたびに、ガラス瓶にビー玉をひとつ入れるようにしていました。子供たちは、ガラス瓶にビー玉が増えることをとても楽しみにしていて「瓶が一杯になったら『おめでとうパーティー』をするんだ」とうれしそうに話していました。
このほかにも「見える化」の方法はたくさんあると思いますが大切なことは、見えない頑張りを見えるようにし、子供たちに達成感をもたせることだと思います。
学級全体がひとつの目標に向かって取り組んでいくことは、学級がまとまる大きなチャンスです。達成できた経験は、次の目標にチャレンジする原動力にもなります。たとえ達成できなくてもみんなで協力したことは子供の心に残ります。こうした繰り返しで学級全体が成長していきます。目標を立てるだけで終わった学級とは、1年後、大きな差が出ることは言うまでもありません。
構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ
※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。