発達障害の特性と支援とは~特別支援教育を知る②~

教育現場では、発達障害がある児童生徒の対応に苦慮している現実があります。今回、小社の『通常学級の発達障害児の「学び」を、どう保障するか』の発刊を記念して、専門家3人によるオンラインセミナーを開催しました。そのなかから、我が国の発達障害研究の第一人者である竹田契一氏による講座を2回に分けてお届けします。2回目は、発達障害の特性と支援についてのお話です。

講師/大阪医科薬科大学LDセンター顧問、大阪教育大学名誉教授・竹田契一

子ども支援のイラスト

障害と特性を分ける

教育現場では、障害と特性をしっかり分けていくことが大切です。例えば、自閉症スペクトラム障害を取り上げると、子どもの一つの特性と思い、初めから障害と決め付けないようにします。一般に障害というのは、その子どもが関わる環境のなかで、成立したり、関係の中でさまざまな問題を起こしてきたりします。その作用で、障害が起こってきます。

医学では初めから障害名の診断が付きますが、特に教育で子どもの発達のことを考えるときは、障害と特性を分けたほうがよいでしょう。

もう一つよく聞かれる問題は、「私の育て方が悪かったかしら」とお母さんから言われることです。基本的に発達障害は、育て方やしつけなどその子の環境というものが原因で起こるものではなく、脳の中枢神経系の機能障害ですので、親の育て方ではないということが言えます。世界で様々な研究がされていますので、発達障害の原因についても、今後、考え方が変わっていくことと思います。

どこでつまずいているのかを見つける

特別支援教育を考えるときに、大切な考え方があります。それは、今何ができないという状況ばかりに目がいくのではなく、「この子はいったいどこでつまずいているのだろう」という、元になっている原因を見つけることです。

最近、どこでつまずいているのかということを抜かし、書けない、読めないという問題があるということばかりを指摘することが起こっています。そうではなく、その子の一番元になっている、どこでつまずいているのか、なぜそれができないのか、ここをしっかりと捉えていくことが大切です。

発達障害の子どもの支援には連携が欠かせない

発達障害の診断はとても難しい場合があります。ある例を出してみましょう。例えば、朝起きて、喉が痛い。せきもあり、熱が38度5分、節々も痛い。今なら、新型コロナを疑いますが、3〜4年前だとまずはインフルエンザを疑って、病院に行きます。すると、「これは香港A型のインフルエンザで、これにはこういうお薬があります」と言って、薬を医師から出してもらいます。「その薬を1日1回、何日間飲みなさい。水分も十分摂りなさい。そうしたら、1週間後にはどういう経過をたどって、治っていきますよ」と言った予後の推定があります。

普通、病院に行ったときには、予後の推定、見通しというのがあるわけです。ところが、発達障害は、予後の推定が難しいのです。診断名はつくけれども、操作的診断であって、原因不明のために検査法がありません。後の指導はすべて対処療法になります。ここの理解が保護者の方に十分必要だと思います。

発達障害は、医療の様々な検査の結果で診断することが今の段階ではできません。しかし、発達障害は医療との連携が大切になります。障害の早期発見、睡眠障害、摂食障害、自律神経失調、生きづらさをずっと感じている抑うつ状態、虐待、ADHDなどの薬物の問題など、これらの部分は、医療との連携が大切です。ここは忘れないで、しっかりとした関わりをもっていきましょう。学校では医療との連携の橋渡しをする役目が養護教諭です。切れ目がない連携が大切です。

教育の現場では例えば40人なら40人の学級全体を見なければいけません。しかし、AさんBさんの一人一人を見ることも教育のなかでは必要です。全体の子どもたちを見ると同時に、そのなかから、困っている子を見る、「どこでつまずいているのか」「どうしてできないんだろうか」という意識をしっかりもつことが大切です。

通常学級と、Aさんが通っている通級との連携も必要です。通級で行っていることを担任がしっかり分かっているかどうか。中身についての連携も大事になってきます。

また、子どもに必要な支援は、役割分担をしていかないといけません。放課後等デイサービスでは何をしているか、学校では知らない、家庭も任せっぱなしというのではなく、それぞれがその子が今どういう指導を受けているのか、何をするためにそれが必要なのかと言うことの理解が必要です。

保護者との信頼関係を築くには

学校は、保護者との信頼関係をどういうふうに築けばよいのでしょうか。それには、次のようなことが大切です。

・立ち話ではなくしっかり誠実に傾聴する
・要望が多い保護者の「気持ち」の受容
・常に保護者へのフィードバック

不安を抱える親、学校への不信感が強い親は多く、「子どもの苦しみを分かってくれない」「発達障害の理解がない」という不満を抱えています。学校から「他にもこんな子いますよ。心配ないです」という返答では、信頼関係の築きが難しくなります。学校は、親の思いをしっかりと受け止める姿勢が大切です。

教育、家庭と福祉の連携で切れ目のない支援をしていく

これまでは、学校側から放課後等デイサービスへ何か提案することは、ほとんどありませんでした。また、放課後等デイサービスと学校との連携もほとんどありませんでした。しかし、これからは、学校と放課後等デイサービスとの連携が大切です。学校と放課後等デイサービスとがそれぞれできる役割がありますので、そこをしっかり分かったうえで、どういう連携をしていくとよいのかを考えていくことが重要です。

教育、家庭、福祉の連携は切れ目ないようにし、子どもがどこでつまずいているか、どう支援するか、それぞれがしっかり理解していきましょう。

「この子は今、どういうことができるのか」を見ることが大事です。共生社会のなかで、生きていくために、トライアングルプロジェクトの中でしっかりと練習することも必要です。

共生社会に生きるための練習

共生社会に生きるために次のような練習をしていきましょう。

・人の話をしっかり聞く(傾聴する)
・自分の意見を述べる(人に気持ちを伝える)
・「何でも一番」から「二番三番になる」こともある
・がまんすること、自己コントロールを付ける練習
・社会の中の一員としての自分理解
・人間関係で大切なものは「コミュニケーション」

コミュニケーションするときに大事なことは、相手に合わせるという力です。また、自分を客観的に見るというメタ認知です。ここが得意、ここが不得意という自分自身の理解が大切です。年齢が上がっていくにつれて理解できるようにします。

学校では教師が、家庭では保護者がしっかりと向き合い、子どもがどこで困っているのか、何ができないのかといった認知をしていくことが重要です。

ソーシャルスキルにつながるポイント

ソーシャルスキルを向上するには、次のようなポイントが大切です。

・自分の能力や適正を知る。
・客観的に自分を見る練習をする。
・いくつかの選択肢から選択する練習をする。
・自分と周りの関係を知る。
・常に自己決定の経験をする。
・相手の立場を考えることができる。
・相手の気持ちを読む。

一人一人の学び方を見つけよう

学習は一人一人異なる多様性のあるものです。そのため、自分に合った学び方を探すことが大切です。平等と公平性は異なり、公平であることが合理的配慮の基本です。一人一人の特性、特徴、個性を理解したうえで、それに合わせた学びをしていくことが、合理的配慮の基本です。

合理的配慮を理解しないで、「やればできる」は子どもを追い詰めます。子どもの処理速度、子どもに合ったスモールステップ、その子に合った学習方法があります。それをしっかり探しましょう。子どもの間違い分析から子どもが分かる方法もあります。宿題やテストをどこまで配慮するかを考えるようにします。徐々にやっていく方法や、選択肢を本人に選ばせることも視野に入れておきます。

また、周りから「えこひいき、どうしてあの子だけ」とならないために、子どもの特性についてクラスのみんなが理解しておくことが必要です。

ICTの技術を活用しよう

今、ICTの技術を活用して困難さに寄り添うことができます。次のような場合、ICTの技術を活用することを考えてみましょう。

・ワーキングメモリが弱いのですぐ忘れる。
・他人が読める文字が書けない。
・枠から文字がはみ出る、文字の形が安定しない。
・漢字が書けない。
・特殊音節の読み書きが苦手。
・音韻認識が弱い。
・早く書けない、読めない。

みんなが協力して、子どもの困難さにしっかり寄り添っていくことが大切です。

竹田先生写真

プロフィール
竹田契一(たけだ けいいち)
大阪医科薬科大学LDセンター顧問、大阪教育大学名誉教授
1961年米国アズベリー大学卒業。1962年米国ピッツバーグ大学大学院語病理学科修了。1965年米国ミシガン大学大学院言語病理学科中途帰国。1975年慶應義塾大学医学部大学院医学研究科修了、医学博士。1975年大阪教育大学聴覚言語障害児教育教員養成課程助教授。1983年大阪教育大学障害児教育講座教授。2002年同大学定年退官。大阪教育大学名誉教授、大阪医科大学客員教授。2007年より大阪医科大学LDセンター顧問。一般社団法人日本LD学会副理事長、一般財団法人特別支援教育士資格認定協会理事長。主な著書に、『図説LD児の言語・コミュニケーション障害の理解と指導』(共著、文化科学社、2007年)、『高機能広汎性発達障害の教育的支援』(明治図書、2008年)など多数。

第1回目の記事はこちらから

取材・文・構成/浅原孝子 イラスト/有田リリコ

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発達障害児の「学び」を、どう保障するか
〜学校・家庭・福祉のトライアングル・プロジェクト〜

障害を支える考え方や子どもの学びを支える事例、子どもと一緒に学びを作る事例など、学校、家庭、福祉の連携で子どもをどのように支え、どうすれば「学び」の保障ができるかが紹介されています。発達障害児を持つ保護者、教育関係者、教師が知っておきたい内容が満載です。

四六判 208ページ
ISBN978-4-09-840213-7

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