劇的に変化!ギフテッドもしくは2Eの子どもの支援実例

ギフテッドもしくは2E(※)で、入学後に学校から「従来の支援方法ではサポートしきれない」と言われたAくん。その後「工夫次第で劇的に変化するんだ!」と周囲が実感したという配慮や支援の実例をご紹介します。
本記事は2022年7月17日(日)に、札幌で行われた「ギフテッドの生きづらさ ~子どもたちが望む世界とは~」のシンポジウム報告で、毎週火曜日、全5回にわたってご紹介しているシリーズの2回目です。学校と保護者が二人三脚で考えた本実例については、ギフテッドの全国規模の親の会である一般社団法人ギフテッド応援隊が聞き取り調査をし、応援隊代表理事の冨吉恵子さんが講演しました。


2E: twice-exceptional(二重に特別である意)の略で、高い能力と発達障害を併せもつ人。

耳をふさいで走り回るAくん。さて、どうする?

ギフテッドもしくは2EのAくんが学校から、「想定を超えた特性で、従来の支援方法ではサポートしきれない」と言われたのは、入学した10日後でした。学校は、就学前にわざわざ「支援体制は整っているし、対応も慣れているので心配しないでくださいね」と伝えてくれるなど、支援に前向きだったはずなのに…。

当初、Aくんは、数えきれないほど離席や脱走を繰り返していたそうです。離席や脱走をする際には、耳をふさいで走り回り、廊下に出る程度ではクールダウンができません。特別養護教諭は、Aくんの様子を見て、こんな見立てをしました。因みに、「見立て」とは、アセスメントとも言われ、状況を客観的に評価・分析して考え、適切な配慮や支援に繋ぐ見通しをもつことです。

頭がフルスピードで回転している子だから、個室が絶対に必要です!

耳をふさいで走りまわることについて、Aくんが話してくれたのは、こんな内容でした。

  1. ひらがなや単純計算の繰り返し → 先生が簡単だと言うものほど、頭がぐるぐる回って苦しくなり、教室は静かだけど、自分の頭の中はうるさくて仕方がない。
  2. 班活動などで賑やかな場面 → クラスメイトの声の大小や音程がバラバラで、それが突発的な不協和音のように聞こえて辛い。
  3. 先生が他の子を叱るとき → 自分が叱られてはいないが、口調や声が恐怖に感じてしまう。

ためしに、Aくんに更衣室に入ってもらってみたところ、一瞬で落ち着きました。その場にいた全員が、「工夫次第で、子どもの行動は劇的に変わるんだ!」と、驚きました。

この出来事をきっかけにして、学校はAくんのための個室を設置するとともに、保護者と二人三脚での配慮や支援の検討がスタートしました。

クールダウン用の個室のようす
クールダウン用の個室のようす      

Aくんの保護者は、こう話します。

息子は同年代の子どもに防衛反応が強く出るタイプです。クラスメイトに向けても、息子の特性について簡単な説明をさせてもらいました。息子は、今では「(クラスメイトが)敵ではない」と理解し、一緒に折り紙で遊んだりするようになりました。

Aくんは、現在(2022年7月)も毎日、保護者の付き添いで登校しています。校長、副校長、担任、支援学級の先生、スクールカウンセラー、療育機関、クリニック、そして保護者…。多くの人が協働で「A君が学校に参加するために、何が必要か?」を、考え続けています。

板書を写すことに課題がある子への支援実例

Aくんには、板書を写すことが苦手という特性もありました。ギフテッドの中には、WISC(ウィスク)というツールを使って、「認知の傾向や癖」に耳を傾けると、処理速度の指標が低い子が割合多くいます。

【WISC】国際的な知能検査の名称で、知能のほかに、子どもの認知の特性を知る一つの手がかりになります。

【認知】簡単に言えば、「物事を認識・理解する心の働き」です。一斉指導や一般的な教授法だけでは、必要な学びに到達しきれない子が一定数います。その子たちを理解するキーワードの一つが「認知」です。

処理速度】制限時間内になるべく早く正確に作業を遂行できるか、主に手先を使って作業をする能力を指します。

WISC・認知・処理速度などの指標ついてのさらに詳しい説明は、こちらをご覧ください。→「IQが高い子が、なぜ困る?(ギフ寺始動の秘密①)

処理速度の指標が低いAくんは、こんなことに困っていました。

連絡帳が時間内に書き終わらない。ノートテイクが追いつかない。

Aくんには、このような配慮が行われています。

  • 休み時間などに教室の電子黒板に内容を提示する
  • 担任がタブレットで黒板を撮影し、Aくんのタブレットに送信する
板書が苦手な子への支援例
ノートテイクが苦手な子への支援例


Aくんが受けている配慮や支援は、以下のようなことです。

  1. クールダウン用に、オープンルームの一角に個室空間を設置
  2. 学習内容を理解している様子なら、課題の免除や持ち帰りを認める
  3. 書字はハネなどが完全にできていなくても許容
  4. つらいとき、読書やプリント学習を認める
  5. 授業を抜けたときは、先生が板書を撮影してAくんの端末に送信
  6. お互いに刺激し合わないタイプの友達を周囲の席にするなど、座席への配慮
  7. 聴覚過敏対策としてイヤーマフの装着を認める
  8. マグネットで時間割を示すなど、見通しを立てやすくする視覚支援

副校長、Aくん本人の声

Aくんへの配慮や支援に対して、副校長は、こんなふうに語ります。

少しの配慮で、劇的に変わる子どもがいます。配慮によって、ようやく真の実力を発揮できる子どももいます。子どもの課題が解決することで、学校としても学級経営や授業が円滑になり、win-winの関係になるとの確信を得ました。
こうした経験を、もっと他の学校に広めたいです。

Aくん本人は、配慮や支援について、どんなふうに感じているのでしょうか? 保護者に、Aくんの気持ちを質問していただきました。

保護者: 以前はとてもつらそうだったけど、今はだいぶ落ち着いたのはどうして?
Aくん: 安全に落ち着ける個室ができたから。個室がない人は、かわいそう。つらくても、学校に個室があったら大丈夫になる人がいると思う。
保護者: 先生が工夫しながら環境づくりをしてくださっているけれど、どう感じている?
Aくん: 結構あっているので、環境づくりを進めてほしい。
保護者: 授業がわかっている内容のときはしんどそうだったけれど、今もそう感じている?
Aくん: だいぶよくなってきた。でも、しんどいときは難しい問題をつくっておいて、静かな環境で解けるようにすればもっとよいと思う。

Aくんは、こんなことも言っていたそうです。

これで(自分の事例を発表することで)、救われる子がいるといいな!

頭ごなしに「無理」と言われない安心感

Aくんの保護者は、学校に対してどう感じているのでしょう?

できること・できないことを学校が理由つきで説明してくれるので、こちらも納得できますし、代替案を提案するなど、すりあわせの糸口を探ることができるのでありがたいです。

子どもはもちろん、保護者も安心できる学校づくり、大切ですね。

最後は、応援隊理事の冨吉さんの言葉で締めくくります。

  • 配慮や支援は「できる」「できない」の二択ではない。意見をすり合わせ、「これならできる」を考える
  • 「配慮や支援を訴える保護者 VS 学校」という対立関係ではなく、「親子×学校」でアイデアを出し合える信頼関係の構築が大切。
  • 結果を出そうと焦らない。トライ&エラーで、とりあえずやってみる

一般社団法人ギフテッド応援隊
ギフテッド・2Eの子を育てる保護者の会。2017年発足。2021年に法人化。子どもたちの成長を支える多彩な活動を、全国で展開中。

取材・文/楢戸ひかる(『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』構成担当)

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