学校に行けない子の居場所。社会性を育むとは?

「不登校」ではなく、「学校に行けない」。札幌で、通称「ギフ寺」ことギフテッド・LD発達援助センターを主宰する小泉雅彦先生は、「学校に行けない子どもたちの心が、少しでも楽になれば嬉しい」と、言います。

講演をするギフ寺住職こと小泉雅彦先生
講演をされる「ギフ寺」の住職こと小泉雅彦先生

本記事は2022年7月17日(日)に、札幌で行われた「ギフテッドの生きづらさ ~子どもたちが望む世界とは~」のシンポジウム報告です。毎週火曜日、全5回に渡ってご紹介しているシリーズの3回目です。

小泉先生は、「居場所から自己理解 そして社会へ」と題し、学校に行けないギフテッドの現状について講演をされました。

子どものニーズに合わせて進化するギフ寺

小泉先生が主宰するギフ寺では、これまでも次の3つの役割を担って、不登校や五月雨登校の「子ども」と「保護者」をサポートしてきました。

  • 寺子屋: 子どもたちの居場所
  • 茶屋寺: 保護者の居場所と情報交換の場
  • 駆込寺: 困ったときに相談できる場所
ギフ寺3つの役割

そんなギフ寺は、以下のような新たな展開をしています。

フリースクール  ※2021年10月スタート

学校に行けない子どもたちは、学校に行けないことで罪悪感を抱えています。そんな罪悪感からか、不登校になると、家の外に出ることすら難しくなる子が少なくありません。
「ギフ寺にフリースクールの機能を作ることで『出席』扱いになり、子どもたちの気持ちが少しでも楽になればよいな」と思い、スタートしました。

フリースペース(青年期のギフテッドの居場所づくり) ※2022年4月スタート

小学校時代に不登校を経験した子の中には、中学・高校でも不登校になって引きこもっている子もいます。札幌紀伊國屋書店のトークショー(※)では、会場からたくさんの質問が寄せられました。その中には、「ギフテッドの青年期の居場所づくり」の必要性を考えさせられるものが多く、その機能をギフ寺で担うことにしました。

札幌紀伊國屋書店のトークショー:書籍『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』(小学館)の発売を記念して行われた。定員を倍以上超える人が集まり、ギフテッドへの関心の高さが浮き彫りとなった。

ギフ寺の1週間

2022年7月現在、ギフ寺は、こんな感じで運営されています。

  • 火曜日午後 フリースペース  中高生が雑談する場。後半から小学生も参加
  • 木曜日午後 フリースクール  小学生がメイン。高校生はボランティアとして参加
  • 土曜日(月に2回) ギフ寺メンバー全員が対象

小学生にとってのBBS(Big Brothers and Sisters Movement)

ギフ寺には、現在、3名の中高生が在籍しています。高校生は火曜日の午後2時頃にやってきて、小泉先生と「まったりタイム」をもちます。その後、小泉先生と一緒に小学生の学習支援や遊び相手をするなど、高校生はギフ寺の運営にボランティアとして関わっています。

ギフ寺の小学生にとって、BBSは、とても大きい存在なんです。
親や私に対しては、ため口の多い子どもたちですが、BBS(Big Brothers and Sisters Movement)には、丁寧に話しかけていました。子どもたちにとっては、BBSはリスペクトする対象として捉えられていることが見受けられました。

BBSは、こんなことをしています。

  • 火曜日の小学生が来る時間帯(夕方)の子どもたちの相手
  • 木曜日のフリースクールの学習支援や遊び相手
  • 土曜日のギフ寺のアクティビティの小泉先生のサポート
  • GIFト Café(※)のために、「食品衛生管理責任者」の資格を取得

GIFト Café:ギフ寺の協働学習として行われているカフェ運営。子どもたちが『GIFト Café』と名付けました。詳しい内容については、以下の記事の後半をご覧下さい。「ギフテッドのためのフリースペース「ギフ寺」とは【ギフテッドシンポジウム in 鹿児島 #4】

小泉先生は、言います。

相手が高校生だと、小学生が、きちんと「引ける」のです。

「引ける」…。親や小泉先生に対しては、ガンガンと(言葉を選ばず)自己主張をする小学生が、こと高校生が相手だと、場の雰囲気や相手に配慮する、といったニュアンスでしょうか…。人間関係を築く上で、自分の意見が言えることも大切ですが、「引ける」ことも同じくらい重要だと思います。 

ギフ寺をスタートした当初は、一人ひとりがバラバラだったのが、いつの間にか共同作業にも取り組めるようになってきました。居場所は、社会性を育むもの。社会性というのは、周囲が押し付けるのではなく、子どもたちが安心できる仲間がいる場で、自分で身につけていくというのを実感しています。

対話できる場としてのフリースペース

小泉先生は、学校生活、ギフ寺の役割、そしてこれからのこと、子どもたちといろいろな話をします。しばしば、「議論」になることもあります。
また、話の節々で、子どもたちは、自分の「得意なところ」と「苦手なところ」を語り始めます。

ギフ寺が、対話の場としても動き出しています。さまざまな対話を通じて、子どもたち自身が、「自分とは何者か、何ができるのか」といった自己理解を深めているように感じます。

子どもたちの自己理解

BBSの存在に触発され、小学校高学年の子どもたちも、自ら「役割」を担い始めたそうです。

  • 低学年の子の学習や遊びのサポート
  • GIFト Caféのお菓子づくりを低学年と一緒に行う
  • ゲームなどを教える

そんな子どもたちの姿を、小泉先生は、こう評します。

子どもたちは協働する中で、学び合い、育ちあっています。子どもたちの力を借りることで、ギフ寺で受け入れることができる子どもの人数を増やすことができました。

(自分より)小さい子との関わりを通じて、「自分がその時代だった頃」を思い出し、その時代の自分を振り返りながら、子ども自身で考えを巡らせています。

ギフテッドシンポジウムin鹿児島では、小泉先生の指導教員である北海道大学の室橋春光名誉教授が、「日本社会がギフテッドを受容するための課題」として、次の両輪が必要だと指摘されました。

社会の受容ギフテッドの生きづらさを、社会としてどう解消していくかを考えることが大切で、社会の理解が進んでいくことが必要です。

本人の自己理解…ギフテッド自身が、自分の特性をよく知るための自己理解をどう進めるのかという課題。自分の「ギフト」を社会との関わりの中で、どう生かしていくのかをギフテッド自身もしっかりと考えていくことが大切です。

ギフシンポ in鹿児島♯1

自己理解の先にあるもの

さらに室橋教授は、こう話を進めました。

「ギフテッドの人たちは、自分の『ギフト』を、どう生かしていくのかを考える力を十分もっている。当事者同士で議論をすることによって、自己理解、社会との関わりを深めていくことも、今後はとても大切です」(室橋2022)

自己理解の先にあるもの。それは、自分の特性(才※)を知り、その才を社会の中で生かすことです。ただし、小泉先生は、「才能」については懐疑的です。(※才は、生まれつき備わっている能力。才能は、ある個人の素質や訓練によって発揮される、物事をなしとげる力です)

  • 才能はいつか枯渇するかもしれない。「才能」にフォーカスを当てることに危うさを感じる。
  • 子どもの周りの大人が才能に拘泥することで子どもは苦しんでいないだろうか。
  • やりたいことがあれば、特異な才能なんてなくてもいい。
  • 才能を伸ばすより、人生を楽しめる人間になってほしい

こんな思いをもつ小泉先生は、講演の最後を、こんなふうに締めくくりました。

ギフ寺は、トランジェションエリア(中継地)です。社会性を育み、社会への橋渡しをする場所です。子どもたちは、自分は何者かを理解し、社会と折り合いをつけて飛び立ってほしい。

小泉雅彦(こいずみまさひこ)
ギフテッド・L発達援助センター主宰。ギフ寺住職。北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程単位修得退学。専門は特別支援教育、認知心理学。

取材・文/楢戸ひかる(『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』構成担当)

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