夏休み・教材研究レベルアップ大作戦! ~公立図書館大活用法&マイデータベースをつくろう~
何にしてもお金がかかる昨今。公共図書館はすべて無料。これってすごいことですね。
最近は、本を読むという基本的なことだけでなく、レファレンス、音楽を聴く、映画(DVD)を視る、そして音楽や演劇イベントなどが目白押しで、図書館は一大「知と教養のエンターテインメントランド」になっています。この図書館を活用しない手はありません。ぜひ図書館を活用して2学期からの授業準備、教材研究を進めてみてはどうでしょうか。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
図書館はどこにあるか まずはリストアップ
図書館にはいろいろな種類のものがあります。漫画や絵本、作家に特化重点化したりしたもの、カフェが併設されているもの、芸術発表、公演の場と併存しているもの、民間企業が運営しTSUTAYAやスタバが入っているもの(佐賀県武雄市)、国立国会図書館のようなあらゆる刊行図書を所蔵する特別な場所などなどです。そういった特色ある図書館はわくわくしてきますね。いつかは行ってみたいですが、気軽に行けない遠い場所にあることが多いです。
そこで、まずは身近な図書館を探してみましょう。徒歩や車、交通機関を利用してだいたい1時間圏内が、自分のライブラリーエリアと考えていいでしょう。わたしの場合、図書カードを作っていたり、利用したりしたことのある図書館をリストアップしてみると、
徒歩10分 …市立図書館
車で5分 …国立大学学部図書館
車で10分 …公立大学図書館
車で15分 …隣接の町立図書館
車で15分 …隣接の町立図書館
車で30分 …隣接の市立図書館
車で55分 …4年制市立美術系大学
車で60分 …県立図書館
車で60分 …隣県の県立図書館
車で60分 …総合大学本部図書館
ざっとこれくらい。わたしの居住地は田舎ですが10もあります。厳密に言うと小さな自治体の公立図書館や単科大学の図書館を含めるとあとほかに数カ所あります。大学図書館の場合、閲覧のみということが多いですが、これらが無料で利用できるのです。こんなすばらしいことはなかなかないです。気軽に利用している居住地の市立図書館は、10冊ほど一度に借りることができます。開館時間外でも、学校への行き帰りの途中、ブックポストに返却できるのが便利です。
2 デジアナ併用でリサーチしてみる
高校の語学(英語や国語)の先生は、生徒たちに「電子辞書と紙の辞書を併用して使いなさい」と奨めています。電子辞書の検索能力はすばらしく、一瞬のうちに目的の単語に到達しますので、効率的です。でも、その前後の単語に目を配ることは少ないです。紙の辞書の場合、検索に時間がかかるし、重量もあり持ち運びには困りますが、目的の単語の周辺まで見渡すことができます。両方のよさを活用しながら、語学の学習を進めるように、ということのようです。
図書館の利用も同じかと思います。ふらっと出かけ、興味の赴くまま書架をわたり歩くと、いつの間にか数時間が過ぎてしまいます。
ただ、わたしたち教員は、そんなに時間をとることができないことが多いです。最近は、ネット検索が充実していて、多くの図書館で所蔵図書の検索システムを構築しています。わたしは、各図書館の検索システムのURLをパソコン内に保管して、随時必要な情報をキーワード検索します。ヒットします。「あっ、この図書館にこんな本があるんだ!」とわかります。そこで図書館に出かけてみます。実際に手にとってみますが、その本の周辺部に関連する本がおいてあります。そして、手に取ってみます。それからどんどん広がっていきます。
これは時間をかけて読むべきだなという図書は借りることにします。遠くにある図書館で借りて、なかなか返しに行くことができない場合、許可を得てレターパック等で返却したこともあります。また、これはもう何回も使うし愛読書にしたいというものは、買った方がいいやということで、ネット書店などで購入します。こうなればビシバシ書き込みもできます。どう利用するかで本との付き合い方が変わってきます。
さて、わたしは気合いを入れて社会科の授業づくりをしようという際、ひとまずネタ探しに図書館に行くことにしています。
「ごみの学習」「地元の畜産業の学習」「地元の果樹栽培の学習」「郷土の歴史学習」などなどです。
まずリサーチにあたって、図書館のレファレンスサービスを利用します。聞きなれない言葉ですが、司書さんを頼ろう、ということです。
「こういったテーマで調べているのですが、関連の書籍や資料はありますか?」と司書さんに伺うのです。さすがプロなので、自分の図書館にどんな書籍や資料があるかを把握しており、親切丁寧に相談にのってもらえます。その方がわからない時は、ほかの担当者にお出ましいただき、その方が詳しく教えてくれることもあります。究極の人と人とのアナログリサーチですね。無料ですし、プロの技にも触れられますから、使わない手はありません。
こうして「ごみの学習」の教材開発をしていたとき、関連の図書を見ながら、「江戸時代は究極のリサイクル社会だった」「ゴミ回収の清掃員の方がいちばん困るのは夏」というキーフレーズに出合い、そこからいろいろ調べて授業を作っていったことがあります。図書館には授業に役立つヒントがたくさん落ちています。
こういったデジタルとアナログの併用が図書館を利用する際のおもしろさにつながっていきますし、利用の大きなポイントなのです。
3 この手があったか! 借りた本の超便利活用法
ある教育学系の教授からおもしろい方法をお伺いしました。
「何冊も本を読んで、比較しながらどこをどんなふうに引用するかがわたしの専門分野の論文スタイルです。どこにどんな文言があるか整理に苦労することが多いんです。
そこでわたしは文献を読む前に、その大きさに関わらず、目次をA4版でコピーします。
そして文献を読みながら、必要なメモをコピーに書き込んでいきます。引用に使えるセンテンスのページはもちろん、キーワード、キーセンテンスなどです。
この方法は便利だよ。自分のデータベースができるんだ」
なるほどなるほど! そのお話を伺ってから、文献を読む際は以下の手順を踏むようにしました。
①書籍を借りる
②目次をコピーする
③教授のようにコピーに書き込む
④コピー目次を紙ファイルに綴じる
こうすれば、一冊のデータベースファイルができあがります。メモしたものを見返しながら、いろいろなアイディアが生まれてきます。
図書館でコピーをする場合、手続きが必要でちょっと手間がかかる場合がありますが、借りた本であれば、コンビニのコピーサービスや勤務校のコピー機を拝借してコピーをするのもいいですね。ただし、著作権法により、調査研究の範囲でコピーできるのはあくまで図書の一部と規定されていますので、注意が必要です。
書籍は手に入らないけれども、知識のみ自分のものにできる優れた必殺技です。ぜひ取り入れてください。
4 続・この手があったか! 透明付箋紙活用法
最近の付箋紙は、実に多くの種類があります。カタチ、紙質、色、用途、吸着のレベル…。
効率的な事務処理には、この付箋紙はなくてはならないグッズになっています。
わたしは、特に教育系の書籍などを研究したいテーマに沿って、調べながら読む時は、気になったところや再度読み返してみたいところに付箋紙を貼りながら読みます。
読み終わってから、付箋紙が貼られた本をみると、「ああ読んだなあ」と満足します。貼るだけで知識が吸収できたと思います。その心理的効果ひとつとっても、付箋紙はとても有益です。
『ひょっこりひょうたん島』などの作品やさまざまな活動で有名な井上ひさし氏の所蔵する図書を収納する『遅筆堂文庫』(山形県東置賜郡川西町)には、氏が作品を書くために集め、読み込んだ書籍が寄贈されています。氏の直筆の付箋がたくさん貼ってある文献も散見されます。氏の活躍した時代には、現在のような貼りはがしの簡単な付箋が少なかったのでしょうか。紙にさっと糊をつけて貼ったようなあとがあります。頑丈にくっついています。昔は手間がかかってたいへんだったんだなあと思います。やはりいつの時代も付箋が読み返す時の手がかりになっていたのですね。
付箋と言えば、100円ショップの定番アイテムですので、最近では入手が容易になってきました。
現在の付箋ラインナップの中で、「フィルム型」と呼ばれる商品があります。要するに「書き込むことのできる透明の付箋」です。さて、ここでお気づきになったかと思いますが…!
そうなんです。図書館所蔵の書籍には書き込みはできませんので、
①気に入ったページにフィルム付箋を貼る
②フィルムにメモを書き込む
③そのページをコピーする
④図書返却のときフィルムを剥がす
この一連の流れで、自分の書き込みを入れた本のページのコピーが完成します。そして、このコピーも自分のデータベースファイルに綴じ込んでおきます。なかなかいい資料ができます。
単に付箋を備忘録としてマーキングするだけでなく、自分なりに知識を再構築・構造化して、理解を深めていく作業とも言えます。ぜひチャレンジしてみてください。
5 朝読書は担任も
最近の国語の教科書では、だいぶ読書活動を重視するようになり、それに関連する単元も充実してきています。
そして、読書へのアニマシオン、ブックトーク、ビブリオバトルなど、読書意欲を高める活動がクローズアップされてきています。同時に旧来の「朝読書の時間」を取り入れている学校も多いです。
公立図書館からの学校への貸し出しなどの事業もあります。いたるところで読書意欲喚起の指導がなされ、「朝読書の時間」でも活用されています。
さて、この「朝読書の時間」ですが、児童に読書をさせる時間として取り入れられているものの、その時担任は何をしているでしょうか…?
けっこう、連絡帳の処理、提出物の点検、プリントの○つけなどに使っている場合が多いのではないでしょうか。もちろん朝のうちに処理すべきことはたくさんあるので、仕方がない部分もありますが、できれば短時間でも児童とともに本を開くということも大切にしたいです。
「先生も読んでる!」という姿勢を見せるだけで、児童も読書意欲がわいてくると思われます。
図書館で借りたお気に入りの作者の本を読むぞ、出たばかりの新刊を借りられたぞ、授業に生かせそうな知恵がつまった本だぞ。…などなど、その時々に応じて本を楽しんでいきましょう。
まずは、夏休みのうちに、2学期の「朝読書の時間」に読む本(借りたい本)のリストを近くの図書館を活用して作ってみてはどうでしょうか。
◆
夏休みも間近に迫ってきました。夏休み、一人で、あるいは親子で、家族でエアコンの効いたこの知的空間に、しっとりつかってみるのもいいのではないでしょうか。今日発行の新聞数紙、最新の雑誌なども閲覧できます。繰り返しますが、すべて無料なのです。
『知的生活の方法』(講談社現代新書、1976年)の出版以来、わが国の「知」世界を開いていった英語学者でさまざまな分野で活躍した故渡部昇一氏(上智大学名誉教授)は蔵書が15万冊、英語関係の収集本1万冊があったと言われています。ちょっとした図書館とは比べものにならない蔵書数です。一日数冊の書をどうやって読み、どうやって管理していたか、どうやって活用したのでしょうか。そんなことを考えながら、今日もわたしは図書館通いをしています。
こんな問題を抱えているよ、こんな悩みがあるよ、と言う方のメッセージをお待ちしています!
その他にも、マスターヨーダに是非聞いてみたい質問やアドバイス、応援メッセージも大募集しています! マスターはすべての書き込みに目を通してますよ!
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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。