授業参観日、最良の保護者対応とは? 感情のこもった暖かいメッセージを!

「授業参観日」は年間に何回か実施され、保護者の皆さんにわが子の学習風景をお見せする機会を提供します。保護者の皆さんは『わが子がきちんと学習しているか』、この一点に集中して参観します。そして、わが子をしっかり教えてくれているかと、担任の一挙手一投足を気にします。
では、担任としてどんな対応をしていけばいいのでしょうか。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

目次
1 叱咤激励はいいんだけど・・・
わたしは初任の頃、授業参観日のあとの学級懇談会で、とあるお母さんに叱られたことがあります。家庭の事情で、3人の子を育てながら強く明るく生きている、シングルマザーの肝っ玉母ちゃんでした。
「先生、なんか叱咤激励はいいんだけど、ちょっと厳しいのではない? 怒っていることが多いような…。もっと簡単なことでいいから言葉をかけてくれればそれでいいんだよ。『○○(子の名前)、けさ何食べてきた?』とかね」
カウンターパンチをくらった感じでした。今でもこの時の状況やお母さんの言葉は鮮明に覚えています。(ああ、何とかできるようにしたい、わからせたい)という願いが強すぎて、子どものマイナス面ばかりを見て、それを指摘していたのだなあと振り返りました。
ある畜産のお仕事をしているお父さんからは、
「先生ね。『ダメ』っていう言葉が多いよ。そんなんじゃ子どもたちは育たないよ。」
と、ノックアウトパンチをくらいました。恐らくこのお父さんは、ゆったりと牛をなでながら優しい言葉をかけて温かく育てているんだなあと思いました。
わたしは最近、町内会長を4年ほど続けました。学校での業務と合わせての仕事ですから、ちょっとたいへんでした。でも、さまざまな職種の町内会員さんとお付き合いするのがとても楽しみでした。ある会合で、先輩格の方からこんなことを言われました。
「ヨーダさんは、なんでそんなに人のことを褒めるの?」
わたしは驚きました。普通に話していたのに、そんなことを言われたのです。ああ、これってもしかして『職業病』?? 数十年のうちにマイナスからプラスで人をみる視点に変わってきたのかなあと思います。うれしいことです。
2 何が足りないのか
退職前の時期、わたしは授業参観日に勤務校の先生方がちゃんと授業をやっているかな、保護者さんたちとうまく懇談会の運営がなされているかな、という応援団の視点で教室を巡回参観していました。
人にもよりますが、年数を経ているベテランの先生ほど余裕があり、授業をきちんと進めるというより児童生徒をよくみることに重きをおいているなあと感じることが多かったです。観客の保護者さんをも意識しながら上手に児童を活躍させていました。そして、一人一人の発表に対しての評価言が多いと感じました。懇談会でも児童のことを具体的に語っていました。
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さて、わたしの知人が初めての授業参観に行った後のことです。「うちの子、ちゃんとやっているかどうか、見て意見を聞かせて」と教室風景を動画で送ってきました。
1年生の子の自己紹介の発表でした。
「ぼくは○○○です。すいかが好きです。みなさんよろしくお願いします。」
その子ははきはきと発表し、しっかりと両足で立っていて話し方も上手でした。知人(その子の母親)もその姿をみて安心したそうですが、それを聞いた先生(若手の先生です)は、『練習の時と全然違うね』とぼそりと言ったそうです。
わたしの知人は、その言葉に違和感を感じたようです
初めての授業参観で、不安だったからでしょう。知人は先生の発言を、マイナスイメージでとらえてしまいました。
「練習の時、きちんとできなかったのだろうか。先生の手を煩わせてしまったのだろうか。大きな声でできなかったのだろうか…」と。
さあ、ここからです。わたしは、『待てよ』と職業的視点が出てきました。担任の先生の評価のことです。
何も言わないで、「はい、次」というよりは何倍もいいですが、『練習の時と全然違う』ということだけで、終わっていいのかと思うのです。ニュアンスとしてはわかりますが、もう少し話を続けるべきです。
『練習の時と全然違って、とてもはきはきしていて上手でした』
『練習の時と全然違って、恥ずかしそうでなくて背筋がのびて姿勢がよかったです』
『練習の時と全然違って、堂々としていていました』
どんな視点でもいいです。前よりほんの少しでも伸びたことを評価していくべきですね。
瞬発力を最大限に、つまり「とっさ」に言えることが大切です。
さあて、もう一度『待てよ』です。これだけでいいの? 事実だけを言っているだけじゃないの? そうなんです。ここで年数を経たベテランの先生は、「わたしはこう感じる」というメッセージを発信します。
『練習の時と全然違って、とてもはきはきしていて上手だったよ。びっくりしちゃった。』
『練習の時と全然違って、恥ずかしそうでなくて背筋がのびて姿勢がよかったです。まるで6年生みたいだよ。』
『練習の時と全然違って、堂々としていていました。違う人みたいでした。先生はとてもうれしいです。』
ああ、これなんだよな。これで子どもは自信をつけるし、保護者はもっと安心するんだよな。同じ事実や行動の評価でもこのような伝え方や言葉だと保護者は担任を信頼していきます。