子供を活発に動かすには〈前編〉【伸びる教師 伸びない教師 第18回】
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今回は、「システムの中で人を動かすにはどうするか」を前後編に分けて紹介します。前編は、システム作りを成功した話です。豊富な経験で培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする平塚先生の人気連載。
※本記事は、第18回の前編です。
プロフィール
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)
栃木県上三川町立明治小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を歴任。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。
伸びる教師はシステムを与えるだけでなく、そのシステムの中で人を動かすにはどうしたらよいかを考えます。伸びない教師はシステムだけを与えます。
目次
人が動きたく働きかけ
「人を動かす秘訣は、この世に、ただひとつしかない。自ら動きたくなる気持ちを起こさせること、これが、秘訣だ」。
デール・カーネギーは自身の著書『人を動かす』の中でこのように述べています。
学校教育の中でこの言葉が当てはまる部分が実に多いということに気付かされます。
例えば、多くの学級で係活動のシステムを取り入れていると思いますが、子供が活発に動いている学級とそうでない学級のふたつに分かれます。
このふたつは係活動というシステムは同じです。しかし、システムを与えるだけでは子供たちは動きません。活性化するためには、子供たちが自ら動きたくなるような教師の働きかけが必要となってきます。
係活動の大切さを話す、掲示係に教室の掲示物のレイアウトを任せ自分たちのアイデアが生かせるようにする、黒板の掃除などの当番的な活動だけでなく学級ランキング係など創造的な活動を促すなど、教師の働きかけは様々です。
そうした上で、係活動に必要な時間や場所、物を確保し、よくやっていることを認めたり励ましたりすることで子供たちは自ら動き始めるのだと考えます。
授業でよい対話を生むには
授業でも同じです。
研究授業では、話合いの工夫として「となりの席の人とふたりで話し合ってみましょう」と少人数で話し合わせる支援が書かれている指導案を目にすることがあります。しかし、実際の授業では、お互いの意見を少しだけ話し、後は話すことがなくただ黙って時間が過ぎていくといった場面をよく見かけます。
支援は間違っていないのですが、話合いの場というシステムを設定するだけでなく、子供たちが話したくなる、聞きたくなる、そんな教師の工夫がなければよい対話は生まれません。
例えば、5年生の社会科では「自分が考えた未来の自動車」を相手に伝えさせたり、「環境と性能はどちらを重視したらよいか」を話し合わせたりするなど、発問や課題の工夫をします。
また、授業の中で子供たちの意見をAかBか対立するふたつに絞り、自分はどちらの立場かをはっきりさせた上でディベートのように話し合わせることで、子供たちは自分の意見を積極的に発言します。そうした話合いの中で自然と自分の意見を言いたくなったり、友達の意見を聞きたくなったりするのだと考えます。
通知表、要録、出席簿のソフトを作成
カーネギーの言葉は、子供との関わりの中だけでなく人間関係全般にも当てはまります。
15年ほど前のことです。
当時私が勤めていた小学校では、教師用パソコンの支給はなく、先生方は個人のパソコンを持ち込んで仕事をしていました。もちろん現在使われているような校務支援ソフトはなく、通知表や出席簿等は手書きで提出していました。回覧から戻ってきた通知表に付箋が貼られていると憂鬱な気持ちになったのを覚えています。訂正箇所を砂消しゴムで消して修正すると穴が空いて、はじめから作り直すこともありました。
それから数年後、情報主任を任された私は、先生方の仕事量を少しでも減らそうと、通知表、要録、出席簿についてエクセルでソフトらしきものを作りました。私はそれまでエクセルが得意でなかったのですが、人に聞いたりネットで調べたりしながらチャレンジし何とか作りました。完璧なものではなかったのですが先生方がとても喜んでくれたのを覚えています。しかし、これが思い込みにつながることに……。
構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ
※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。