子供の得意分野を伸ばし、やる気を引き出すコツ|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
「ダンシング掃除」や「プロジェクト制」など、子供たちの自主性を引き出す斬新でユニークな実践が話題の「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生 。今回は、「子供たちの個性や得意分野をどう引き出せばよいか分からず悩んでいる」という先生の悩みに答えていただきました。
目次
みんなが得意なことをもっているわけではない
一人ひとりのやる気や能力を引き出すために、「教師が子供の得意なことを見つけて伸ばしてあげよう」とよく言われるけれど、クラス全員の得意なことを見つけ、それを伸ばしてあげられるかというとなかなか難しいよね。
そもそも全員が「これだけは誰にも負けない」と言えるような得意技をもっているわけではない。 何をやってもすぐに人並み以上にできるようになる子もいれば、 何をやってもなかなか「これが得意」と自慢できるほどできるようにならない子もいる。
好きなことを見つけたら、集中してチャレンジさせる
その子が得意なことを見つけることが難しい場合でも、「その子が好きなこと」を見つけてあげることは比較的簡単だ。
まだ好きなことが見つからないという場合には、好きなことをつくってあげればいい。
例えば、ボクのクラスの子供たちは、計算トレーニング「U-2」がみんな大好きになってしまった。それは恐らく、単純にみんなで競う楽しさもあるだろうし、夢中で取り組みながら、自分が上達していることを実感できるからだと思う。
まずは何か一つの分野でも、その子が「もっと頑張りたい」と思えるものを見つけてあげることが大事だと思う。そしてその子が好きなことを見つけたら、集中してチャレンジさせ、さらにスキルを磨かせてみよう。
優劣ではなく個性を活かして、活躍の場を与える
個性を活かして、得意分野にしてしまうという方法もある。
以前受け持ったクラスに、背が高くてぽっちゃりした子がいた。その子は時々子供たちから「ぽっちゃり」と言われてからかわれることもあった。
ボクは その子に 「給食エース」と名付けたんだ。その子は体が大きい分、ほかの子よりもたくさん食べることができて、給食では「おかわり」の常連だったから。
当時ボクのクラスでは給食を残さずに食べることを一つの目標に掲げていたので、給食が余りそうなときには「おーい、エース、今日はもう少しいけそうか?」と声をかけるようになった。すると、彼はボクの期待に応えて何度もおかわりをして、完食を達成してくれる。そんな「給食エース」の活躍に、クラスのみんなは次第に拍手を送るようになり、なんとクラスのヒーロー的存在になったんだ。
得意不得意というと、優劣をつけて考えがちだけど、優劣ではなく、それぞれの個性を活かせる場ってどこだろうと考えてみるとよいと思う。給食をたくさん食べる子、指示を出すのが好きな子、細かい作業が好きな子、声の大きい子……、そういう個性や適性を活かせる場を学級の中につくり、そこで自分の力をどんどん発揮してもらえばいい。
いろいろな種をまき、芽を出したタイミングでほめる
「給食エース」と名付けたのも、その子の個性を活かして、その子がクラスで活躍できる場をつくってあげたいという思いからだった。
でも当然それがはまることもあれば、はまらないこともあるだろう。
もしはまらなければ、別のことをやらせればいい。
そう柔軟に考えて、いろいろな種をまき、その子が「もっと頑張りたい」とやる気になったり、その子の個性が活かされたりしたタイミングを見逃さず、しっかりほめてあげよう。
そして、その子の頑張りたいことや個性を活かせるポジションをクラスの中で割り振ってあげよう。自分がみんなの役に立ったり、活躍できる場ができたりすると、自主的に努力するようになるし、結果的に練習量が増えて他の人よりも上達する。その繰り返しで一つのスキルが磨かれ自信となり、いろいろなことにもチャレンジしてみようという意欲につながっていくと思うよ。
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沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『板書で分かる世界一のクラスの作り方 ぬまっちの1年生奮闘記 』(中央公論新社)他。 沼田先生のオンラインサロンはこちら>> https://lounge.dmm.com/detail/2955/
取材・構成・文/出浦文絵