過度激動の事例から学校・家庭での支援を考えよう ~「日本ギフテッド・2E学会」キックオフ大会 in 高知へのお誘い~ ♯3
文部科学省の「ギフテッド」支援事業がスタートし、日本で初めてギフテッドの国際学会が開催された今年(2024年)は、日本の「ギフテッド」支援元年とも言えるのではないでしょうか?
そんな年の締めくくりにふさわしいイベント、日本ギフテッド・2E学会キックオフ大会が、2024年12月1日(日)10:00~から高知大学朝倉キャンパス(高知県高知市曙町2-5-1)で開催されます。全3回シリーズ大会に登壇される方々と発表内容をご紹介する記事の第3回です。心ある先生方、当事者の方々、そして保護者の方々、ぜひご参加ください。
目次
ギフティッドをめぐって―北海道大学特殊教育研究グループの萌芽的取組―
この3連続記事の掉尾を飾るのは、「みんなの教育技術」ギフテッド特集でもお馴染みの北大(北海道大学)研究チームです。北大チームを率いるのは、通称「ボス」こと、北海道大学の室橋春光名誉教授です。
室橋 私たちは、学びに困難がありつつも通常学級に在籍する子どもたちを主な対象として、「土曜教室活動」(※)を実践してきました。
※ 室橋春光教授が中心となり、隔週土曜日に行われていた発達特性のある子ども学習・余暇支援活動。
その中には知的機能に高い面を有する子どもたちも参加しており、彼らの認知特性を検討する中で、私たちはいわゆる「ギフティッド」に関心をもつことになりました。
WISC-Ⅳの諸指標等による分析だけではなく、overexcitability(過度激動)等の心理的特性についても分析を進めています。
「ギフテッド」概念は広く、諸々の特性を含んでおり、生物学的視点から文化・社会的視点まで、多面的な検討が必要だと思います。
本学会では、自然科学、人文科学、社会科学を包摂する俯瞰的な立ち位置から、今後のありかたを見据えてみたいと思っています。
「ギフ寺」での教育実践
室橋先生のもとに学び、「ギフ寺」という「ギフテッド」の子どもたちのための居場所を運営し続けてきた小泉雅彦先生も登壇します。
小泉 1998年、土曜教室で最初のギフテッドと想定されるケースに出会いました。対象児は高知能を持ちながらも学習面や生活面に困難を抱えおり、包括的な援助を試みたが画期的な成果は得られませんでした。
2013年には、支援級で常に不全感を抱えている知的ギフテッドの援助実践に関わり、小論としてまとめることができました。それ以降「高い知能を持ちながら生きにくさを抱える子ども(ギフテッド)」を対象とし、相談やアクティビティに取り組んできました。
その成果を踏まえ、2019年には援助実践のパイロット的取り組みとして「ギフテッドの寺子屋」を立ち上げました。
本講演では、四半世紀の臨床研究を振り返りながら、子どもたちが求めている援助について考えを巡らしたいと思っています。
過度激動の事例から学校・家庭での対応、支援を考える
多くの保護者から、「子どもの過度激動への対応が最もしんどい」という声を聞きます。
そうした声を受け、海外で開発されている過度激動の評価尺度であるOEQーIIの日本語版を原著者の許可を得て作成している佐賀大学教育学部の日高茂暢先生、単行本「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」「ギフテッド応援ブック」(いずれも小学館)執筆・刊行の中心人物である北海道教育大学旭川校の片桐正敏教授、そして「ギフテッド」当事者を集めての教育実践を行っている山梨学院大学の富永大悟准教授が、「過度激動」をテーマにしたラウンドテーブルを行います。
片桐 本ラウンドテーブルでは、ギフテッド・2Eの子どもにみられる過度激動について扱います。過度激動はギフテッドの子どもに限らず認められる特性ですが、特にギフテッドの子どもでよく見られる特性として知られています。
この過度激動のために、学校や子育ての場面でしばしば対応に苦慮する場面もあります。
3名の話題提供者から、過度激動の特性と典型的な事例(架空事例)を示した上で、対応や支援について参加者の皆様と考える機会としたいと考えています。
本ラウンドテーブルは少人数の対話形式で行ないます。聴講だけでも構いませんが、参加者同士の積極的な議論を通して、過度激動への対応や支援を共に考えましょう。
魅力溢れるプログラム
上記の発表の他にも、魅力あふれるプログラムがたくさん! ギフテッド・2E研究をしている研究者、興味がある研究者、医師、支援実践者、当事者、保護者たちが集まり、つながっていくこの「居場所」にリアルタイムで参加することで、「もう1人じゃない!」を実感してみませんか?
「日本ギフテッド・2E学会」キックオフ大会 参加のご案内
大会参加の申し込みを受付中です。こちらのキックオフ大会(高知)開催要項詳細をご覧の上、お申込み下さい。
参加費
- 研究者 5000円
- 一般・教員・保護者 3000円
- 学生 2000円
「日本ギフテッド・2E学会」公式HPについて
学会のHPは、コチラです。また、ギフテッド学会設立準備会 のフェイスブックでは、随時、関連情報を更新しています
「これからのギフテッド・2E教育に関する研究のあり方を模索しつつ、身近にある実際的なギフテッド・2E 教育の課題を一つずつ解決する」という姿勢を踏襲しつつ、さらに発展をめざしていきます。
日本ギフテッド・2E学会は、2023 年 12 月に有志により始まった準備会を発展させ、全国の心理学、教育学、医学、社会学などの研究者のうちギフテッド・2E研究を行っている研究者、ギフテッド・2E研究に興味のある研究者、そして日々、ギフテッド・2Eの支援を行っている実践者に広く呼びかけ、2024 年 12 月以降に結成をめざす学会です。
日本ギフテッド・2E学会「学会について」より
翌日には「こたえのない学校」の藤原さと氏による特別講義も
12月2日(月)には、大会の連動イベントとして、こたえのない学校の藤原さとさんが特別講義をされます。
12月1日(日)のキックオフ大会@高知大学参加後、12月2日(月)8時50分から10時20分
藤原さとさんの講義受講を希望される方はgifted2egakkai@gmail.comにご連絡ください。
楢戸ひかる(ならと・ひかる)
ライター。「ギフテッド」や「学校に行かない選択をした子供たちのためのフリースクール」取材を通じて、新しい学びの選択肢を探究している。自身のサイト主婦er内に「ギフテッド関連記事のリンク集」がある。